はじめに
採用活動におけるオウンドメディアの活用は、企業の魅力を伝えるだけでなく、求職者の興味を引き、応募を促すための重要な施策です。特にターゲット層に向けた戦略的な情報発信ができる「採用HP」や「ランディングページ(LP)」、広範囲にリーチできる「SNS」や「WEB広告」は、企業の採用力を飛躍的に向上させます。本記事では、オウンドメディアリクルーティングの中でも「採用HPのコンテンツ充実」「ソーシャルリクルーティング」「ランディングページと広告配信」を中心に、実践的な戦略と成功事例をご紹介します。
採用HPのコンテンツ充実化
採用HPの役割と求職者に与える影響
採用HPは、求職者にとって企業への関心を深める「第一の窓口」です。採用HPが充実していると、企業のビジョンや社風が明確に伝わり、応募者が安心して応募できます。一方で情報が乏しいと、求職者が別の情報を探しに行ってしまい、結果的に応募機会を失う可能性もあるため、採用HPの質の向上が欠かせません。
採用HPに必要なコンテンツと充実化のポイント
1. 企業のビジョンとミッション
企業の将来ビジョンや事業の目的を明確に示し、求職者が共感しやすい情報を提供します。たとえば、「持続可能な社会に貢献」「革新的技術で生活を豊かにする」などのメッセージは、企業の価値観を伝える重要な要素です。
2. 社員インタビューとストーリー
社員インタビューを通じて、働きがいやキャリアの広がりを具体的に伝えます。役職や経験レベルごとに分けたインタビューコンテンツを揃えると、幅広い層の求職者にリーチでき、入社後のイメージを持ってもらいやすくなります。
3. キャリアパスと成長支援
求職者が将来の成長を具体的に描けるよう、新人研修やスキルアップ制度、キャリア支援などの情報を充実させます。成長支援の事例を具体的に挙げることで、求職者にとって安心感のあるアピールになります。
4. 福利厚生と働きやすい環境
福利厚生やフレキシブルな勤務制度、リモートワークなど、安心して長期的に働ける環境をアピールすることで、求職者の応募意欲を高めます。
成功事例:株式会社AのHPリニューアル
コーポレート要素も盛り込んだ採用サイトの展開で、エンドユーザーをお客様から採用ターゲットへと変換し、自社採用まで繋げた事例です。採用サイト制作では、特にスタッフインタビューと各店舗の特徴に特化したページ構成に力を入れ、その地域に根差したコンテンツを地域ごとに盛り込むことに注力しました。
その結果、これまで世の中に露出できていなかった企業としての魅力や各店舗の”人”の魅力を露出することができ、普段お店の利用者であるエンドユーザーからの応募を獲得できました。さらにHPリニューアルをきっかけに行った初の正社員募集においても、HP立ち上げから3日で2名の応募獲得に成功しました。これによって、新たな採用ターゲットの創出と採用基盤としての資産を構築することができました。
ソーシャルリクルーティングの活用
ソーシャルリクルーティングの概要と活用の意義
ソーシャルリクルーティングとは、SNSを通じて求職者とコミュニケーションを取り、企業の魅力を伝える手法です。SNSは手軽にフォローできるため、定期的な情報発信を通じて求職者と長期的にエンゲージメントを築けるメリットがあります。特に若年層の求職者には、FacebookやInstagram、Twitter、LinkedInなど、普段から利用するSNSでの情報発信が効果的です。
主なSNSプラットフォームと特徴
ビジュアルに強く、社内風景やイベントの様子を発信しやすい媒体。若年層やクリエイティブ職への訴求に適しており、視覚的なアプローチが求職者の関心を引きます。
X(旧Twitter)
リアルタイムの情報発信に向いており、企業ニュースやイベント告知、採用情報をスピーディに届けることができます。求職者からのリアクションが即座に得られるため、双方のインタラクションを深められます。
ビジネスに特化したSNSで、特に専門職や国際人材の採用に効果的です。職務経歴やスキルに基づいたリーチが可能で、求職者に直接アプローチするツールとしても機能します。
幅広い年齢層にリーチでき、イベント情報や事業紹介など、詳細な情報発信が可能です。また、ユーザー層が幅広いため、地域や年齢などに応じたターゲティングがしやすい点が特徴です。
ソーシャルリクルーティング成功のポイント
1. コンスタントな情報発信と一貫性
企業のビジョンや文化を伝えるために、一貫したトーンで定期的に情報発信を行います。たとえば、毎週のプロジェクト進捗やイベントの様子をシェアすることで、企業の活気や風土を求職者に感じてもらいやすくなります。
2. ハッシュタグ活用
「#採用情報」「#エンジニア募集」など、ターゲット層が興味を持つキーワードをハッシュタグとして使用し、検索からリーチする仕組みを整えます。こうした工夫で、フォロワー外からの流入を増やし、投稿の拡散効果を高めます。
3. エンゲージメントの高い社員コンテンツ
実際に働く社員が投稿を行うと、企業文化のリアルな面が求職者に伝わりやすくなります。社員インタビュー動画や「1日のスケジュール紹介」など、視覚的に伝わるコンテンツがエンゲージメント向上に寄与します。
成功事例:株式会社BのInstagram活用
企業の全体ブランディングと採用力強化を狙い、SNSの有効活用により実現した事例です。SNS運用を実施する前段階として、企業としての在り方を見直し、地域に根差した地域密着企業として再定義を行いました。それを採用アカウントのコンセプトとして反映することで、再定義した企業ブランディングを踏襲したアカウント設計を構築しました。
ベースとして準備が整ったのちに、企業として地域に与える影響、そこから人々に与える影響を軸に投稿を展開し、さらに自社で働く”人”にも焦点を当て、個々が輝く姿を表現したクリエイティブを構成していきました。
結果として、再定義した新たな企業イメージをSNSを通して発信し、ユーザーへの企業イメージ醸成と採用歩留まりの改善に繋がりました。
ランディングページ(LP)の活用と広告配信
ランディングページの役割と特徴
ランディングページ(LP)は、特定の職種や採用キャンペーンに特化して情報を集約し、求職者が応募に直結しやすいよう設計された1ページ完結型の特設サイトです。エンジニア採用や新卒採用などターゲット層に合わせたLPを作成することで、求職者が求める情報に迅速にアクセスでき、応募率を向上させる効果があります。
ランディングページ作成のポイント
1. ターゲットに適した情報の設計
LPは特定の職種やターゲット層に合わせて情報を厳選し、無駄のない構成にします。たとえば、エンジニア採用であれば、技術スタック、チーム構成、プロジェクト事例を中心に構成し、求職者が働き方を具体的にイメージできる内容を揃えます。
2. 視覚的に訴求するデザイン
画像やインフォグラフィックを多用し、わかりやすく情報を視覚化することで、求職者の関心を引きやすくします。また、目立つ位置に「応募はこちら」などのCTAボタンを設置し、求職者がスムーズにアクションを起こせるようにします。
3. 実際の社員やプロジェクト事例の紹介
ターゲット層に沿った社員のインタビューや、プロジェクトでの成功事例を紹介することで、入社後のキャリアイメージを明確にできます。特に、キャリアアップや成長環境についての具体的な事例があると、求職者にとって応募のハードルが下がります。
ランディングページの広告配信と運用
LPを作成するだけでなく、ターゲットにリーチするためには、WEB広告やSNS広告を活用した配信が不可欠です。広告配信により、求職者がLPに直接アクセスしやすくなり、応募へと誘導しやすくなります。
WEB広告(Google広告、リターゲティング広告)
Google広告を活用して、検索キーワードに応じたLPを表示させることで、求職者が探している情報に合わせたアプローチが可能です。また、一度LPを訪れたユーザーに再度アプローチできるリターゲティング広告を利用することで、応募を迷っている求職者に対してリマインド効果を発揮します。
SNS広告(Instagram、Facebook、Twitter)
SNS広告は、特定の年齢層や職種ごとのターゲティングが細かく設定可能で、リーチ効率が高いのが特徴です。特にInstagramやFacebookの広告を通じてLPを配信することで、視覚的な訴求とLPの直結した動線で、求職者が興味を持ちやすくなります。
成功事例:新卒インターンにおける母集団形成
26卒の1Day仕事体験への集客としてリスティング広告×採用LPを用いた成功事例です。ITエンジニアの新卒採用で、企業Cは1Day仕事体験の集客を目指してリスティング広告を実施しました。ターゲットとなるエンジニア志望の学生に向け、検索広告を使って集客を行い、インターンへのエントリー数を増加させました。
■広告費と結果
■広告費用: 約60万円
■広告クリック数: 約4,500回
■クリック単価: 139円
■エントリー数: 39件
■エントリー単価: 15,330円
ターゲットとなる学生の思考やエントリーへの動機を逆算することで、ターゲットの明確化とそれに基づくコンセプト設計を実現しました。その結果、応募単価を抑えつつ、質の高い応募者を確保でき、効率的に母集団形成に成功した例となっています。
ATS(採用管理システム)とWEB広告運用の連携
ATSの役割とその重要性
ATS(Applicant Tracking System)は、採用活動の全体を一元管理するためのシステムです。企業に届く多くの応募データを効率的に管理することで、選考プロセスがスムーズに進みます。また、応募者の管理やスクリーニング、選考スケジュールの調整ができるだけでなく、広告運用の効果分析にも役立ちます。
ATSを効果的に活用することで、各プロセスの時間を短縮し、採用コストの削減や応募者体験(Candidate Experience)の向上が期待できます。さらに、データに基づく採用活動の改善を図ることで、精度の高い人材確保が可能になります。
ATSとWEB広告運用を連携させるメリット
1. ターゲティング精度の向上
ATSから得られる応募者データを活用することで、広告のターゲット設定やクリエイティブの最適化ができます。例えば、どのキーワードで集まった応募者の質が高いかを分析し、そのキーワードを含む広告の比率を高めるなど、効果的な運用が可能です。
2. リターゲティング広告との連携
ATSで得た応募データをもとに、一度サイトやLPを訪問したが応募に至らなかった求職者にリターゲティング広告を配信し、応募を促すことができます。これにより、離脱した求職者に再度アプローチでき、応募者数を増やす効果が期待できます。
3. データドリブンな広告運用の実現
ATSのデータを広告運用に活かすことで、応募者の反応が良い広告パターンやターゲット設定を見つけ出し、運用を柔軟に調整できるようになります。たとえば、特定の職種や地域において応募率が高い広告パターンを見つけ、それを増やすことで、より効率的な採用活動が実現します。
成功事例:ATSを活用したWEB広告手法
大手雑貨チェーン店の企業Dにおいて店舗アルバイト・パート募集での成功事例です。 既存手法で応募獲得が困難な店舗に対して、リスティング広告×採用ATS(ジョブオプ)での連携を行うことで、ユーザーが多いGoogleでの露出を強化し、新たな求職者層にリーチを拡大することで応募単価を抑えつつ、応募獲得を実現できた事例となります。
■広告費と結果
■広告費用: 約4万3,000円
■広告クリック数: 441回
■クリック単価: 99円
■応募数: 13件
■応募単価: 3,350円
従来の媒体ではリーチできなかった求職者層に対して効果的にアプローチし、質の高い応募を得ることができました。
採用動画の活用
採用動画の役割と重要性
採用動画は、企業文化や職場の雰囲気を視覚的に求職者へ伝えるための効果的な手段です。特にミレニアル世代やZ世代はテキストよりも動画で情報を得ることを好む傾向があり、採用動画は応募者の関心を引くツールとして非常に有効です。動画ならではの「感情の伝達」や「リアルな働き方のイメージ」は、求職者の共感を得やすく、応募への意欲を高めます。
採用動画の制作ポイント
1. メッセージ性のあるストーリーテリング
企業のビジョンやミッションを伝えるために、動画には明確なメッセージを込めることが大切です。企業の価値観や求める人材像を反映し、求職者に共感してもらえるようなストーリーテリングを心がけます。入社後に経験できる成長の機会やチャレンジについて、具体的なエピソードを盛り込むのも効果的です。
2. 社員のリアルな声と働く風景を取り入れる
実際に働いている社員のインタビューや職場の風景を動画に取り入れることで、職場のリアルな雰囲気を伝えることができます。特に、社員が仕事に対する情熱ややりがいを語るシーンを加えると、求職者に企業の魅力がより鮮明に伝わります。
3. 視聴しやすい長さとSNSでの配信を考慮
採用動画は長さに気を配ることも重要です。1〜3分程度の短い動画にすることで、求職者の集中力が途切れず、最後まで視聴してもらいやすくなります。また、InstagramやYouTube、LinkedInなど、各SNSでの配信を視野に入れて形式を調整し、広範囲にリーチできるように工夫します。
成功事例:株式会社Eの採用動画
株式会社Eは、1分程度のショート動画をInstagramやYouTubeに配信し、主に新卒採用向けのコンテンツとして活用しました。動画内では若手社員が働く様子や日常の業務風景を映し、リアルな職場の雰囲気を伝えることに重点を置きました。
また、インタビューを通じて仕事の楽しさややりがいについて語り、応募者から「社内の雰囲気が伝わってきた」「自分も働いている姿をイメージできた」と好意的なフィードバックを多数得られました。これにより応募者の質が向上し、採用に至った人材のミスマッチも減少しました。
口コミ対策
口コミサイトが採用活動に与える影響
口コミサイト(例えば、GlassdoorやOpenWorkなど)やSNSでの評判は、求職者にとって企業選びの際の重要な判断材料となります。特に、若年層の求職者は口コミサイトを参考にし、企業の評判や社内の雰囲気について調べる傾向が強いです。こうした口コミ情報は、企業が公式に発信する情報と異なり「リアルな声」として見られるため、求職者の応募意思決定に大きな影響を与える可能性があります。
口コミ対策の重要ポイント
1. 社内環境の改善と透明性の確保
口コミ対策の基本は、口コミに表れる評価の根本的な改善です。評価を高めるためには、まず社内環境や福利厚生、ワークライフバランスを整えることが重要です。社員の働きやすさやキャリアサポートに注力することで、自然とポジティブな口コミが増えていきます。
2. 社員への満足度向上施策
社員の満足度を向上させるための施策を積極的に行い、口コミサイトの評価にもその効果が反映されるようにします。例えば、定期的な社内アンケートを実施し、社員の声を聞き、それをもとに改善策を実行することで、社員満足度を高め、口コミの向上が期待できます。
3. ポジティブな情報発信
SNSや採用HPを通じて、企業の強みや働く楽しさを発信することも効果的です。社員が仕事のやりがいや達成感について語る内容を広め、良い職場環境を対外的にアピールすることで、求職者にとって信頼感のある企業像を構築できます。また、社内イベントや新しい制度の導入など、社員が誇りに思うようなニュースを発信することで、応募意欲の向上にもつながります。
成功事例:株式会社Fの口コミ対策
株式会社Fは、社員満足度を高めるために、定期的に社内アンケートを実施し、そこから得たフィードバックをもとに職場環境を改善しました。さらに、社員の働きやすさや福利厚生を拡充するための施策を展開し、こうした取り組みをSNSや採用HPで積極的に発信しました。
その結果、口コミサイトでの評価が向上し、求職者から「実際に働く社員の満足度が高いことを知って安心できた」といった声が多く聞かれるようになり、応募者数の増加と質の向上が実現しました。
まとめ
ここまで採用オウンドメディアを通じた各施策について解説しました。採用HPの充実化、SNSやランディングページの活用、ATSの導入によるデータ運用、そして口コミ対策までを組み合わせることで、企業にフィットする優秀な人材の獲得を目指せます。
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