「新人が“辞めない・育つ”組織づくり5ステップ」シリーズでは、内定から1年目までの各フェーズにおける定着につながる育成の仕組みをご紹介しています。
第4回のテーマは、「新人と先輩のコミュニケーション」です。
「困っていたなら、言ってくれたら良かったのに」「わからないことがあれば、遠慮なく聞いてほしいんだけど…」――これは、職場でよく聞かれる先輩や上司の何気ない一言です。
けれど、新人の立場からすると、「言いたいけど言えない」「聞きたいけど怖い」と感じていることが少なくありません。こうした言いづらさは、個人の性格や能力だけでなく、環境や関係性の中で生まれる心理的なハードルです。
この「言いづらさ」をそのままにしておくと、
- 報告や相談が遅れ、学びの機会を逃してしまう
- 不安や疑問を一人で抱え込み、前向きな姿勢が失われていく
- 小さなつまずきが“自信のなさ”や“孤立感”につながり、成長が停滞する
結果として、「何を考えているか分からない」「指導しても反応が薄い」といった、関わる側の戸惑いにもつながり、新人・育成担当者の双方が疲弊してしまいます。
「言いやすさ」が育つと新人は伸びる
一方で、「言いやすさ」が育つと、
- 小さなつまずきをすぐに共有でき、適切なフィードバックが届く
- “報連相の型”が身につき、自走へのステップが踏みやすくなる
- 安心して試行錯誤できるため、自信と成長意欲が自然と育つ
このように、「言える・聞ける」という土壌があるだけで、新人は受け身から主体へと変化していきます。つまり、コミュニケーションの質を高めることは、単なる“話し方のテクニック”ではなく、新人が成長実感を得ながら職場に根づいていくための重要な土台なのです。
本記事では、新人と先輩の「伝える・受け止める力」を育むための研修設計や、日常に活かせるコミュニケーションのヒントをご紹介していきます。
「言えない」「聞けない」が新人育成を止めてしまう
第1回から第3回でお伝えしてきたように、「受け入れの準備を整える」「マインドを育てる」「教える人を支援する」といった取り組みは、新人育成の基盤をつくる上で欠かせません。
しかし、どんなに制度や仕組みが整っていても、現場でのコミュニケーションに“ズレ”や“遠慮”が残っていると、育成は想定通りに機能しません。
- 「こんなこと、今さら聞いていいのかな…」と悩みながら黙り込む新人
- 「怒られるかも」「迷惑かけたくない」と報告を先延ばしにする新人
- 「どう声をかければいいか分からなくて…」と距離を取ってしまう先輩
こうした小さなすれ違いが日常に積み重なると、やがて「話しかけづらい」「質問しづらい」という空気が職場に定着してしまいます。その結果、新人は“失敗できない場所”で委縮し、先輩も“何を考えているか分からない相手”への接し方に迷い、関係性が深まらないまま時間だけが過ぎていきます。
せっかく準備してきたOJTのステップや研修も、新人が「分からない」を言い出せなければ、育成の土台そのものが揺らいでしまうのです。「言えない」「聞けない」は、ただの“性格の問題”ではありません。育つはずだった新人を立ち止まらせてしまう“職場の環境課題”なのです。
“すれ違いパターン”をケースで学ぶ
職場で起こるコミュニケーションのすれ違いは、決して珍しいものではありません。むしろ、新人・先輩・上司という立場や経験の違う人同士が関わる以上、すれ違いは「起こって当然のこと」とも言えます。
にもかかわらず、現場ではそのすれ違いを“相手の理解不足”や“配慮のなさ”として受け取り、小さなズレが誤解や不信感に発展してしまうことが少なくありません。
では、なぜすれ違いは生まれるのでしょうか?
- 【新人】
「こんなこと、今さら聞いたら怒られるかもしれない…」 と不安になり、報告や相談のタイミングを逃してしまう。
- 【先輩】
新人の様子が気になっていても、「急かすのも悪いかな」と遠慮してしまい、結果として必要な声かけができず、放置されているように感じさせてしまう。
- 【上司】
「もう少し自分で考えて動いてほしい」と思っていても、その期待をうまく言語化できず、思いだけがすれ違っていく。
どの立場も、相手に対して悪気があるわけではなく、むしろ「ちゃんと関わらなきゃ」「できればうまくやりたい」と思っている。だからこそ、それぞれが“気を遣った結果、何も伝わらない”というすれ違いが生まれるのです。
これは、言葉にしなければ伝わらないことが多い新人育成の現場において、非常に大きな課題です。言わないこと=配慮、と捉えられがちですが、それが結果的に「伝わらない」「伝えてもらえない」関係性を生み、信頼の芽が育ちにくくなってしまいます。
すれ違いをなくす第一歩は、それが「誰かのせい」ではなく、立場の違いからくる“見え方・感じ方の違い”として起きていると理解すること。この構造に気づくことで、育成の場は「どう伝えるか」「どう声をかけるか」を見直す余地に満ちた、建設的な場所へと変わっていきます。


アサーティブに伝える3ステップ
すれ違いの背景にある「言いたいけど言えない」「伝えたくても伝わらない」という課題を解決するには、「どう伝えるか」の質を見直すことが欠かせません。そこで役立つのが、アサーティブ・コミュニケーションという考え方です。
アサーティブとは、「攻撃的」でもなく「我慢する」でもなく、自分の意見や感情を、相手を尊重しながら率直に伝えることを指します。新人育成の現場では、この“伝え方”が人間関係に大きな影響を与えます。
- 言い方がきついと、新人は委縮し、自分の意見が言えなくなる
- 遠慮しすぎると、言いたいことが伝わらず、誤解や不満が残る
- 「正しく伝えること」よりも、「関係を壊さずに伝え続けられること」が大切
アサーティブな伝え方を意識するだけで、“伝える”が“育てる”に変わっていくのです。
基本の3ステップ(例:先輩が新人のミスに気づいたとき)
事実を伝える(評価や推測ではなく、起きたことをそのまま)
例:「さっき送ってくれた取引先へのメール、日付の表記が1日ずれてたみたいだったよ」
→ ミスの指摘は客観的な事実として、冷静かつ端的に伝えるのがポイントです。
気持ちを伝える(主語は“私”で)
例:「私も確認が甘かったなと思ってるし、次に同じことが起きないように一緒に見直しておきたいと思ってる」
→ 相手を責めるのではなく、チームとしての視点で伝えることで安心感が生まれます。
要望・提案を伝える(具体的に次の行動を促す)
例:「まずは先方に訂正の連絡を入れよう。それから今日の午後、15分くらい時間取れる?今回の流れを一緒に振り返っておこう」
この3ステップを意識するだけで、言いづらかったことも“伝えてよかったこと”に変わる可能性が高まります。伝えたあとに「嫌われたかな」と後悔するのではなく、「ちゃんと伝えられた」と思える関係性は、育成の安心感を確実に底上げしてくれます。
報連相が自然に回る“安心感のある職場”をつくる
報連相が「ルール」や「義務」ではなく、当たり前の行動として自然に回っている職場には、共通した土壌があります。それは「安心感」と「信頼」が根付いた風土です。
報告・連絡・相談という行動は、いずれも“誰かに話しかける”行為です。そしてその行動は、相手との関係性によって左右されます。つまり、どれだけ報連相の重要性を言葉で伝えても、話しかけても大丈夫だと思える関係性や空気がなければ、行動にはつながらないのです。
報連相は「指示」ではなく「関係性」から生まれる
こうした自然な流れを育てるためには、「何かあったらすぐ報告して」と指示するだけでは不十分です。
むしろ重要なのは、日々のふるまいや接し方を通して、伝えやすい雰囲気・話しかけやすい文化をつくっていくことです。
その起点となるのが、「相手の立場に立つ」という姿勢です。
たとえば、忙しそうにしている上司に話しかけづらいと感じた経験は、多くの人にあるはずです。逆に、自分が上司の立場になったとき、「報告されない」「連絡が遅い」と感じたこともあるかもしれません。こうした場面で、「なぜ伝えてこないのか」ではなく「どうすれば伝えやすくなるのか」と考えられるか。この視点の違いが、報連相が自発的に回るかどうかを大きく左右します。
報連相が生まれやすくなる、日常のふるまい
- 自分からあいさつや雑談を投げかける
- 意見を聞いたあとに「ありがとう」と返す
- 少しのミスでもまず受け止めて話を聞く
このような何気ないふるまいの積み重ねが、「この人には話しかけても大丈夫」という感覚を相手に与えていきます。報連相を「仕組み」で促す前に、「関係性」で育てる。それが、自然に報連相が回る職場づくりの本質です。
そして、その文化は一人ではつくれません。だからこそ、組織として「報連相がしやすい状態とは何か」を共通認識として持ち、全員が相手の立場を想像しながら日々のコミュニケーションに向き合うことが求められます。
報連相をする・させるのではなく、報連相が生まれる土壌を整えること。それこそが、今の組織に必要な視点なのです。


新人・先輩のためのコミュニケーション研修
〜一方通行ではない“育ち合い”の関係づくりを支援します〜
新人育成において、報連相が自然に回る職場をつくるためには、新人だけでなく、受け入れる側である先輩社員の関わり方も非常に重要です。
よく見られるのが、「迷惑をかけたくない」「余計なことを聞いてはいけない」と遠慮する新人と、「どこまでサポートすればよいか迷う」「話しかけていいタイミングがわからない」と戸惑う先輩の間で、お互いに気を遣いすぎて関係構築が進まないというケースです。
このようなすれ違いは、スキル不足ではなく、「どう関わればいいか分からない」ことが原因であることも少なくありません。
当社の「新人・先輩のためのコミュニケーション研修」は、新人・先輩双方が安心して関わり合い、共に成長できる関係性を築くことを目的とした研修です。
こんな企業におすすめの研修です
- 新人が報連相を躊躇し、立ち上がりが遅れてしまっている
- OJT担当や先輩社員が、育成への関わり方に悩んでいる
- 上司・先輩の声かけが足りず、新人が孤立してしまっている
- 職場全体で育成・定着を支える文化をつくりたい
研修の特徴
この研修は、新人・先輩のどちらか一方が頑張るのではなく、お互いが歩み寄ることで関係を築くという視点に立っています。報連相がスムーズに回る職場は、自然と成長も、定着も促進されるのです。
- 新人には「報連相の基礎」と「伝える自信」を
- 先輩社員には「話を聞く姿勢」と「信頼される接し方」を
- ロールプレイや実務課題を活用し、双方の理解と共感を促進
- 組織全体で“育てる空気”を醸成する内容に設計
「伝える力」と同じくらい、「受け止める力」も大切。そんな気づきを、新人も先輩も、同じタイミングで得られる機会として、ぜひご活用ください。
安心して声を出せる環境が、成長の第一歩になる
新人や若手社員が早期に活躍するためには、スキルや知識だけでなく、「安心してコミュニケーションができる環境」が欠かせません。
報連相は、単なる業務の手続きではなく、信頼関係の上に自然と生まれるものです。その前提となるのが、相手の立場に立って接する姿勢であり、一人ひとりが「話しかけやすい存在」になることが、職場全体の風通しを良くしていきます。
「なぜ伝えてこないのか」ではなく、「どうすれば伝えやすくなるか」と考える視点。こうした意識が積み重なっていくことで、報連相はルールではなく“文化”として根づいていきます。そしてその文化は、新人の自信と挑戦を支え、やがて早期活躍につながっていきます。
伝える力を育てるだけでなく、伝えたくなる関係性を育てること。それが、これからの育成において何より大切な視点ではないでしょうか。
若手も管理職も、成長を実感できる研修を


「何年も同じ研修を繰り返しているけど効果が出ているのかな?」
「研修後の振り返りがないから、学びが定着しない気がして…」
「OJTをやって終わりだけど、それだけで成長を促すのは難しい」
若手や管理職の育成は、どの企業にとっても大きなテーマです。「新人がなかなか定着しない」「OJTだけでは限界を感じる」など、同じようなお悩みを抱える企業も少なくありません。
アクシアエージェンシーの研修サービスは、そうした声に寄り添いながら、現場で本当に役立つ力を育てることを大切にしています。
アクシアエージェンシーの人材育成・研修サービスの特徴
- 一度きりで終わらない研修設計で、学びを定着させる仕組みを提供
- 動画やフォローアップで、現場での行動変化まで伴走
- 採用支援から育成・定着まで一気通貫で見える人材課題を解決
- 法人営業や人事経験を持つ講師が担当し、現場に即した実践的な学びを提供
研修の形は企業ごとにさまざまです。まずは貴社の状況や課題をお聞かせください。最適な研修プランを一緒に考えていきます。お気軽にご相談ください。
監修者情報

ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ
中井 美沙
株式会社アクシアエージェンシー新卒入社。求人広告営業として大手中小企業の採用活動に携わる。2020年人事コンサルティング会社へ出向し研修企画実施や人事評価制度運営などに従事。2022年に研修開発部立ち上げに参加。人事部と兼務しながら社内の人材育成、人事評価制度運用、人事面談、社内外の研修企画実施などに従事。国家資格キャリアコンサルタント取得。株式会社アナザーヒストリー プロコーチ養成コーチングスクール修了。




