「新人が“辞めない・育つ”組織づくり5ステップ」シリーズでは、内定から入社後までのフェーズごとに“定着につながる育成・フォローの工夫”を、現場で実践しやすい形でお届けしていきます。
第1回のテーマは、「内定者フォローの設計」。
最近の現場では、「内定を出しても辞退されてしまう」「早期離職につながってしまう」といった声が少なくありません。その背景には、“入社前の不安”や“職場との関係性の薄さ”など、フォロー不足が大きく影響していることが見えてきています。
内定を出してから入社するまでの“空白期間”をどう過ごすか――それは、採用成功の“その先”を左右する重要なカギでもあります。
今回は、信頼関係を育てるための内定者フォローの考え方と設計ポイントを、具体例とともにお伝えします。
なぜ“内定者フォロー”が重要なのか?
最近、研修現場で耳にするのは「せっかく内定を出しても辞退されてしまう」「入社後すぐに辞めてしまった」という声です。特に新卒採用では、入社前のフォローがその後の定着や活躍に大きな影響を与えることをご存じでしょうか?
内定通知をもらった瞬間は「やった!」と嬉しい気持ちでいっぱいでも、少し時間が経つと、不安が顔を出し始めます。

「どんな仕事を任されるんだろう…」
「職場って忙しいのかな?新人でも質問していい雰囲気なのかな」
「先輩や上司ってどんな人たちなんだろう…」
「入社までに何を準備しておけばいいかな?パソコンの勉強しておくべき?」
こんなふうに、不安と期待が入り混じる時期。特に新卒の場合は、初めて社会に出るタイミングでもあり、「そもそも社会人ってどんな感じ?」という、根本的な戸惑いを抱えていることもあります。最近では、他社の内定者研修やフォローの様子がSNSなどで見えてしまう分、「うちの会社、何も連絡がないけど大丈夫かな…」と、ちょっとした不信感につながることもあるようです。
企業側としては「内定を出したから、あとは入社を待つだけ」と考えがちですが、その空白期間の過ごし方が、内定者の気持ちに大きな影響を与えています。何も働きかけがないと、「この会社で本当に良かったのかな…」と、心の中で距離が生まれてしまうことも。
だからこそ、入社までの時間を「関係を深める期間」と捉え、安心感を育てていくことが、内定辞退や早期離職の防止につながっていきます。


フォローのポイント①|“関係性づくり”が離職リスクを減らす
内定辞退や早期離職の背景には、いくつか共通した傾向があります。たとえば──
- 内定期間に感じた不安が最後まで解消されなかった
- 会社や仕事への理解が浅いまま入社を迎えた
- 職場の人間関係が見えず、うまくやっていけるか不安だった
- 「何となく合わないかも」と感じながらも、そのまま入社した
こうした状態で入社すると、「思っていたのと違った」「やっぱり自分には合わないかも」とギャップが大きくなり、早い段階での離脱につながってしまいます。
だからこそ、内定期間中に職場の雰囲気や働いている人の様子が少しでも伝わる関係性をつくっておくことが大切です。「どんな人たちが働いているのか」「どんな雰囲気の職場なのか」が少しでも見えてくると、自然と安心感が生まれます。
安心感を育てる“関係づくり”の工夫
また、ちょっとした不安や疑問を気軽に聞ける相手がいることも、内定者にとっては大きな安心材料になります。
たとえば、人事担当者はもちろん、入社までの間に現場の社員が“担当”としてつくようなメンター制度を導入するのも効果的です。仕事内容や働き方について「実際どうなんですか?」と率直に聞ける相手がいることで、不安の解消やギャップの軽減につながります。
- 定期的なメールで最新情報や先輩メッセージを送る
- 動画で職場の様子を紹介する
- チャットグループで内定者同士をつなぐ
- 先輩社員とのカジュアルな座談会を開く
関係性をつくる手段はさまざまですが、こうした取り組みを組み合わせることで、内定者の不安を少しずつ和らげ、「ここに居場所がある」と感じてもらいやすくなります。
フォローのポイント②|本音を聞き、現場とつなぐ 信頼を育む内定者フォロー
内定者フォローで重要なのは、単に連絡を取るだけで終わらず、内定者の本音に耳を傾けるような関わり方をすることです。

たとえば、定期的なオンライン面談やフォローの場で、「今、何か気になっていることはありますか?」「入社までに不安なことは?」といった問いかけを丁寧に行うことで、内定者が抱えている思いや疑問が自然と表に出てきます。そうした対話を通じて、「この会社はちゃんと向き合ってくれる」と感じ、信頼感が深まります。
“現場とつながる”ことで生まれる安心感
また、人事だけで全てを担うのではなく、現場の力を借りながら“会社全体で迎え入れる姿勢”をつくることも大切です。たとえば、現場の社員を交えた面談や先輩社員との交流会で、
- 直近の新人がどのように活躍しているのか
- この会社でどのようなキャリアパスを描けるのか
といったリアルな声が共有されると、内定者が入社後の自分を具体的に想像しやすくなります。
役職や部門を超えて内定者と関わる機会があると、「会社全体で歓迎してくれている」という空気が自然と伝わります。こうした取り組みが、安心感と信頼感を生み出し、定着の土台になります。
フォローのポイント③|“職場の橋渡し”を3ヶ月前から計画的に
ここまでご紹介してきたように、内定者の不安を和らげ、信頼関係を築いていくためには、定期的な面談や先輩社員との交流、現場とのつながりづくりが欠かせません。
これらのフォローをより効果的に進めていくには、入社までの時間を意識的に区切り、「いつ・何を・どの順で行うか」を計画的に設計することが大切です。特に、入社が近づく3ヶ月前頃からは“職場との橋渡し”を意識した取り組みを強化していくタイミングとして活用できます。
3ヶ月前からの“段階的フォロー”でギャップを減らす
たとえば、以下のように段階的にフォローを組み立てることで、内定者が自然と職場に慣れ、入社後のギャップを減らすことができます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 3か月前 | 配属予定チームの紹介、動画での歓迎メッセージ |
| 2か月前 | 現場社員やOBOGとの座談会・交流会 |
| 1か月前 | OJT担当者との交流や仕事紹介の面談機械 |
このように、関係性づくりのための活動を計画的に前倒しで組み込むことで、内定者は入社後の自分をよりリアルにイメージできるようになります。不安がやわらぎ、「この会社でやっていけそう」という安心感につながります。
また、事前に情報が共有されることで、現場も受け入れ準備がしやすくなり、人事と現場が連携してスムーズに迎え入れる体制が整っていきます。
内定期間は、ただ待つだけの時間ではなく、信頼を育てるプロセス。その中でも入社直前の時期は、これまでのフォローの成果を形にする大事なフェーズです。ぜひ「3ヶ月前からの計画的な橋渡し」を目安に、全体の流れを見直してみてください。


フォローは“仕組み化”で回り始める
内定者フォローを成功させる鍵は、関係性を育てるプロセスを“仕組み”として設計しておくことにあります。良かれと思って始めた取り組みも、属人的に行われていると担当者の異動や忙しさで継続が難しくなってしまいます。
だからこそ、「誰が・いつ・どんな形で関わるのか」を明確にした設計をあらかじめ用意し、計画的に実行していく体制づくりが重要です。この仕組みがあることで、人が変わっても質の高いフォローが維持され、安定した採用と定着の基盤になります。
また、こうした仕組みは新卒採用だけでなく、中途入社や部署異動、職場復帰といった「新たに環境に入る」あらゆる人材に応用が可能です。「誰かを迎え入れる」という場面すべてにおいて、安心してスタートを切れる環境を整えることは、企業にとって大切な育成文化の第一歩とも言えるでしょう。
若手も管理職も、成長を実感できる研修を


「何年も同じ研修を繰り返しているけど効果が出ているのかな?」
「研修後の振り返りがないから、学びが定着しない気がして…」
「OJTをやって終わりだけど、それだけで成長を促すのは難しい」
若手や管理職の育成は、どの企業にとっても大きなテーマです。「新人がなかなか定着しない」「OJTだけでは限界を感じる」など、同じようなお悩みを抱える企業も少なくありません。
アクシアエージェンシーの研修サービスは、そうした声に寄り添いながら、現場で本当に役立つ力を育てることを大切にしています。
アクシアエージェンシーの人材育成・研修サービスの特徴
- 一度きりで終わらない研修設計で、学びを定着させる仕組みを提供
- 動画やフォローアップで、現場での行動変化まで伴走
- 採用支援から育成・定着まで一気通貫で見える人材課題を解決
- 法人営業や人事経験を持つ講師が担当し、現場に即した実践的な学びを提供
研修の形は企業ごとにさまざまです。まずは貴社の状況や課題をお聞かせください。最適な研修プランを一緒に考えていきます。お気軽にご相談ください。
監修者情報

ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ
中井 美沙
株式会社アクシアエージェンシー新卒入社。求人広告営業として大手中小企業の採用活動に携わる。2020年人事コンサルティング会社へ出向し研修企画実施や人事評価制度運営などに従事。2022年に研修開発部立ち上げに参加。人事部と兼務しながら社内の人材育成、人事評価制度運用、人事面談、社内外の研修企画実施などに従事。国家資格キャリアコンサルタント取得。株式会社アナザーヒストリー プロコーチ養成コーチングスクール修了。





