人を育て、組織を動かす管理職へ─未来を創るマネージャー育成の5ステップ。このシリーズでは、管理職が“育てる存在”となるために必要な視点や行動を、5つのステップに分けてお伝えしていきます。
成果を出すだけではない、新しいマネージャー像が求められる時代。スキルや知識の習得だけでなく、マネージャーとしてのあり方や育成の責任に向き合うことが、組織の未来をつくる土台になります。
第4回のテーマは、伝える力を育てるマネジメント。関係性が築けても、育成はそこで終わりではありません。部下の気づきを促し、行動を変えるためには、「伝える」という関わりが欠かせないのです。しかし現場では、「どう言えばいいかわからない」「関係が悪くなりそう」と、伝えることに戸惑いや不安を抱えるマネージャーも少なくありません。
今回は、なぜ伝えることが必要なのか、どう伝えれば育成につながるのかを紐解いていきます。
伝えないことで、部下も組織も止まってしまう
信頼関係が築かれ、対話ができるようになっても、育成はそこで終わりではありません。部下に必要な気づきを促し、行動を変えるきっかけをつくるには、「伝える」という関わりが欠かせません。
しかし現場では今、「どう伝えればいいのか分からない」「伝えることで関係が悪くなりそうで怖い」といった声が、マネージャー自身から多く聞かれます。その背景には、伝えることに対する不安や、指導=厳しいことというイメージ、そして伝え方に配慮が求められる時代の空気があります。
とはいえ、「言わない」ことが続けば、部下は成長のヒントを得られず、チームの力も停滞してしまいます。この章では、なぜ「伝えること」がマネージャーにとって欠かせない責任なのか、そしてそれをどう捉え直せば良いのかについて考えていきます。
注意できない、評価を避ける──現場で起きている“言わない”問題

「厳しく言ったら関係が悪くなりそうで…」
「ハラスメントだと思われたらどうしよう…」
「何をどう伝えればいいのか分からない」
最近、現場のマネージャーからよく聞かれる悩みに、このような伝えることに関する戸惑いがあります。
なぜ、マネージャーは「伝えること」をためらうのか
背景には、近年のハラスメントへの意識の高まりや、上司・部下間の関係性の変化があります。パワハラへの関心が高まり、職場の人間関係における「伝え方」「受け取り方」への配慮が強く求められるようになりました。
マネージャーにとって、「言葉の選び方ひとつで問題になるかもしれない」という不安は、日々の関わりに少なからず影響しています。
また、今マネジメントの立場にいる人たちは、若手時代に「先輩や上司の背中を見て覚える・まずはやってみる」といった実践型の育成スタイルの中で経験を積んできた人も多く、「どう伝えればいいか分からない」「言葉で詳細に教える文化ではなかった」という戸惑いを抱えているケースもあります。
さらに、「指導=厳しく言うこと」「注意=相手を否定すること」といったイメージが根強くあるために、伝えること自体にプレッシャーを感じ、「言わない」選択をしてしまうことも。
「言わない」ことで起きている、部下側の変化
しかし、それが続くことで、本来なら気づけるはずだった改善点や、成長の機会が失われてしまいます。
たとえば部下の側からは、「言われた通りにやったのに、それで良かったのか分からない」「うまくいかなかったことについて、何も言われずに終わってしまった」といった不安やモヤモヤが蓄積されていきます。
つまり、言わないことは優しさではなく、育成のブレーキになってしまう場合があるのです。だからこそ今、マネージャーには、「伝えること」から逃げない姿勢と、そのための関わり方が求められているのです。
「育てる責任」から目をそらさない
マネージャーの仕事は、ただ自分が成果を出すことではありません。人を育て、チームとしての力を最大化すること──それがマネージャーの本質的な役割です。そして、育てるために「伝える」ことは不可欠です。
ただしそれは、一方的に評価や指示を下すということではありません。
- 今どんな壁に直面しているのか
- どのような期待があるのか
- どんな行動や視点の変化が求められているのか
- どうすれば成長のヒントをつかめるのか
マネージャーに求められるのは、部下と対話をしながら、こうした問いを一緒に考え、必要な気づきを促すことです。育成とは、正解を与えることではなく、前に進む力を育てる支援。その入口としての「伝える」という行為を、対話と信頼の中で行っていくことが求められるのです。
「厳しいことを言って、嫌われたくない」「言っても変わらないかもしれない」──そうした不安や葛藤を抱えるのは、決して特別なことではありません。それでも、「どう伝えるか」に悩むことを避けてしまえば、部下は大事な気づきの機会を失い、マネージャー自身も「育てる」という本来の役割から遠ざかってしまいます。
「言わない優しさ」が、育成の機会を奪ってしまうこともある
伝えることは、相手を否定するためではなく、「期待している」「可能性を信じている」からこそ必要な行為です。たとえ一度で響かなくても、「ちゃんと見てくれている」と感じられる関わりが、部下の背中を押し、信頼を築いていきます。
そして、「言わない優しさ」は、ときに相手の成長の芽を摘んでしまうこともあるのです。“伝える”ことは、簡単なことではないかもしれません。けれど、“育てる”ことを選んだマネージャーにとって、それは避けては通れない、大切な責任のひとつなのです。
伝えることは、関係性ではなく“目的”で考える
前章では、「伝えない」ことを選び続けることで、部下の成長機会が失われ、マネージャー自身も“育てる責任”から遠ざかってしまう可能性があることをお伝えしました。
では、伝えることに不安や戸惑いを感じるとき、どう向き合えばいいのでしょうか。たとえば、「うまく伝えられる自信がない」「関係が悪くなったらどうしよう」──そんな思いや悩みを抱えているマネージャーも少なくありません。だからこそ今、あらためて必要なのは、“伝えること”を、否定やジャッジではなく、成長を支援する行為として捉え直す視点です。
この章では、フィードバックを評価ではなく成長支援として機能させる関わり方について、具体的に紐解いていきます。
「伝える」は、関係を壊すリスクではなく、成長の“きっかけ”
マネージャーにとって「伝えること」は、ときに勇気がいる行為です。伝えた言葉が相手にどう受け取られるか、関係にどんな影響があるか──そうした不安や葛藤を抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、そうした不安を抱くときこそ、あらためて問い直したいのが「何のために伝えるのか?」という目的です。
伝えることは、決して相手を否定するためではありません。「もっと力を伸ばしてほしい」「この壁を一緒に乗り越えたい」そうした思いがあるからこそ、言葉にする必要があるのです。
「どう受け取られるか」ではなく、「何を実現したいか」で考える
たとえ伝えた言葉がすぐに響かなくても、「伝えない」という選択を続ければ、部下の成長は止まり、組織としての前進も止まってしまいます。マネージャーに求められているのは、関係を守ることではなく、組織を動かし、人を育てること。その責任に立ち返ったとき、伝えることを避ける理由はなくなるはずです。
重要なのは、「どう受け取られるか」ではなく、「どんなチームをつくりたいのか」「どう育てたいのか」という視点を持つこと。その目的が定まれば、言葉にも軸が生まれ、マネージャーとしての判断と行動にブレがなくなります。
伝えることは、“関係を壊すリスク”ではなく、“組織を前に進めるための意志表明”。そして、それが本気で部下に向き合おうとする姿勢となり、結果として信頼を築くきっかけにもなっていくのです。
フィードバックは評価ではなく“成長支援”
伝えることに対するハードルが高くなってしまう背景には、「フィードバック=欠点の指摘」「間違いを正す=相手をジャッジする」といったイメージが根強くあることも、一因かもしれません。しかし本来、フィードバックは相手を評価するためのものではなく、成長のヒントを共に見つけていく“対話の時間”です。

「なぜその選択をしたのか?」
「ここは良かった、次はどう変える?」
「別の視点から見ると、どう見える?」
たとえば、このような問いかけを通じて、行動の背景や思考を振り返ることができます。
こうした対話があることで、部下自身も気づきを得て、次に向けた視野が広がっていきます。間違いやミスに対しても、「何が足りなかったのか」「次にどう活かすか」を一緒に考える時間は、責める場ではなく“学びの場”となるのです。
重要なのは、フィードバックを「その場の評価」ではなく、未来に向けた後押しとして届けること。そうすることで、部下は安心して振り返り、前に進むエネルギーを得られます。
「伝える勇気」が、組織の未来をつくる
「伝えることの必要性」は理解していても、実際に行動に移すには勇気がいります。伝えることは、常に不確実性やプレッシャーを伴うものだからです。
この章では、「どう伝えればいいか分からない」「伝えてもうまく伝わらなかったらどうしよう」といった迷いに対し、“伝え方は選べる”という視点から、マネージャーとして一歩踏み出すためのヒントをお伝えします。
また、実際のマネージャー研修での気づきや変化の声も交えながら、伝える力がどう組織を変えるのか──その可能性について掘り下げていきます。
「伝え方」は選べる。だから、伝えることをあきらめない
マネージャーにとって「伝える」という行為は、簡単ではありません。「どう伝えたらいいか分からない」「言い方を間違えて関係が悪くなったらどうしよう」──そんな戸惑いや不安を抱えるのは、ごく自然なことです。でも、“うまく伝える自信がないから”という理由で、伝えること自体をあきらめてしまうと、チームは動きません。
大切なのは、「伝え方は選べる」という前提に立つことです。指摘やフィードバックは、感情でぶつけるものではありません。「何が起きたのか(事実)」「どんな期待があるのか(意図)」「どうすれば良くなるか(支援)」の3つの軸を意識するだけでも、伝え方はぐっと前向きなものになります。

「ここは改善の余地があると思ったから、共有するね」
「今回のやり方で、うまくいった点と、もう少し工夫できそうな点はどこだった?」
「同じ状況が次にあったら、どう対応してみたい?」
こうした言葉の工夫や、対話の姿勢を持つことができれば、伝えることが“怖いもの”ではなく、“育成の一部”として自然に取り組めるようになります。
そして、伝えることで一人が変われば、チームの行動基準やフィードバック文化が変わっていきます。その小さな変化の積み重ねが、やがて組織の未来をつくる力になるのです。
伝える力は、“経験と実践”で誰でも伸ばせる
伝える力は、選ばれた一部の人だけのものではありません。伝える力は、生まれ持ったセンスではなく、“経験と実践”で確実に伸ばせるスキルです。
研修を通じて身につける、実践的なコミュニケーションの視点
私たちのマネージャー研修では、以下のようなテーマを扱いながら、実践に活かせるコミュニケーションのあり方を深めていきます。
- 良い組織とは何か? 〜マネージャーの役割を再定義する
- 心理的安全性のある関わり方 〜安心して話せる空気をつくる
- 信頼を得る“聴く力” 〜言葉の奥にある、本音や意図を聴き取る
- 相手を動かす“フィードバック” 〜評価ではなく、成長支援として伝える
実践を通じて生まれた、マネージャー自身の気づき
マネージャー研修の参加者の方々からは、こんな気づきの声が上がっています。

「フィードバックというと“できていないこと”を指摘しがちだったけど、“できていること”を言葉にするのも、すごく大事な育成だと気づいた」
「“言わなきゃ”と思うより、相手と一緒に考える対話の場なんだと捉えると、自然と話せるようになった」
このように、“伝える”とは技術であり、練習で磨けるもの。そして、「伝える力」を持つマネージャーが増えれば、チームの雰囲気も、成長のスピードも、大きく変わっていきます。なぜなら、伝えることによって期待や役割が明確になり、迷いが減るからです。
また、適切なフィードバックを受け取ることで、部下は自分の強みや課題に気づき、自信と行動力が育っていきます。こうした「安心して挑戦できる環境」が、チーム全体に前向きな空気と成長の循環を生み出していくのです。
まとめ
マネージャーとして人を育て、組織を動かしていくためには、信頼関係を築くだけでなく、“伝える”という行動を避けずに向き合うことが不可欠です。
「関係が悪くなるかもしれない」「どう伝えればいいか分からない」。そんな迷いや不安は、決して弱さではなく、真剣に向き合っている証拠。だからこそ、「伝えること=否定やジャッジ」ではなく、成長を支援する対話の一部として捉え直す視点が求められます。
伝え方は、選べます。そして、練習と実践を通じて、誰でも伸ばせる力です“伝える勇気”を持つマネージャーが増えれば、チームに安心と挑戦の空気が生まれ、個々の成長スピードも加速していきます。
もし今、「伝え方」に悩んでいるなら。それは、育てる力を伸ばすチャンスかもしれません。
若手も管理職も、成長を実感できる研修を


「何年も同じ研修を繰り返しているけど効果が出ているのかな?」
「研修後の振り返りがないから、学びが定着しない気がして…」
「OJTをやって終わりだけど、それだけで成長を促すのは難しい」
若手や管理職の育成は、どの企業にとっても大きなテーマです。「新人がなかなか定着しない」「OJTだけでは限界を感じる」など、同じようなお悩みを抱える企業も少なくありません。
アクシアエージェンシーの研修サービスは、そうした声に寄り添いながら、現場で本当に役立つ力を育てることを大切にしています。
アクシアエージェンシーの人材育成・研修サービスの特徴
- 一度きりで終わらない研修設計で、学びを定着させる仕組みを提供
- 動画やフォローアップで、現場での行動変化まで伴走
- 採用支援から育成・定着まで一気通貫で見える人材課題を解決
- 法人営業や人事経験を持つ講師が担当し、現場に即した実践的な学びを提供
研修の形は企業ごとにさまざまです。まずは貴社の状況や課題をお聞かせください。最適な研修プランを一緒に考えていきます。お気軽にご相談ください。
監修者情報

ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ
中井 美沙
株式会社アクシアエージェンシー新卒入社。求人広告営業として大手中小企業の採用活動に携わる。2020年人事コンサルティング会社へ出向し研修企画実施や人事評価制度運営などに従事。2022年に研修開発部立ち上げに参加。人事部と兼務しながら社内の人材育成、人事評価制度運用、人事面談、社内外の研修企画実施などに従事。国家資格キャリアコンサルタント取得。株式会社アナザーヒストリー プロコーチ養成コーチングスクール修了。



