人を育て、組織を動かす管理職へ─未来を創るマネージャー育成の5ステップ。このシリーズでは、管理職が“育てる存在”となるために必要な視点や行動を、5つのステップに分けてお伝えしていきます。

成果を出すだけではない、新しいマネージャー像が求められる時代。スキルや知識の習得だけでなく、マネージャーとしての“あり方”や“育成の責任”に向き合うことが、組織の未来をつくる土台になります。

第3回のテーマは、信頼を築くコミュニケーション。「伝わらない」「話してくれない」といったすれ違いの背景には、価値観の違いや、対話の不足があります。部下が安心して話せる関係性をどうつくるか。その関係の質こそが、育成のスタートラインになります。

今回は、信頼関係の築き方と、日々の関わりの中で対話を機能させていくための視点について紐解いていきます。

チームの方向性が定まり、メンバーと目線を合わせて動いていく──マネージャーがプレイヤーから脱却し、チームで成果を出す視点を持つと、次にぶつかるのが「人が動かない」「伝わらない」という壁です。

言ったのに伝わらない。気にかけているつもりでも、部下は相談してこない。そんなすれ違いが起きる背景には、「価値観の違い」や「信頼関係の薄さ」があるかもしれません。

本記事では、Z世代をはじめとした若手と上司世代の前提のズレに向き合いながら、信頼を土台にした「聴く」マネジメントへと視点を広げていきます。

「伝える」よりも「引き出す」。「変える」よりも「関係を築く」。育成がうまくいくチームには、話せる関係性という見えない力が息づいています。

わかり合えないのは、“前提”が違うだけ

部下に思いが伝わらない。話しかけても反応が薄い。期待する動きをしてくれない──。こうした現場でのすれ違いの多くは、相手の価値観や背景が見えていないことから始まっています。

マネージャーが「当然伝わるだろう」と思って話していることも、受け取る側からすれば、意味や意図が見えずに戸惑っているというケースは珍しくありません。

育成において、どれだけ的確な指導を行っても、それが響かなければ意味がありません。指導の前提となる「関係の質」を高めることが、これからのマネージャーには不可欠です。その土台となるのが、価値観の違いを理解し、対話を通じて信頼関係を築く力です。

世代間ギャップは「理解できない」ではなく「知らないだけ」

上司が部下に「どうしてそんな風に考えるの?」と感じる。部下が上司に「何を言っているのか、よくわからない」と思う。──こうした“感覚のズレ”は、今や多くの職場で日常的に起きている現象です。

特に近年、価値観の多様化が進む中で、Z世代を中心とした若手社員と上司世代との間には、働くうえでの前提や重視するポイントに、明確な違いがあることも増えてきました。

たとえばZ世代には──

  • 「共感」や「納得感」を重視する
  • 「自分らしさ」「キャリアの多様性」を大切にする
  • 上意下達よりも「対話的な関係性」を好む

といった特徴が見られます。一方で、上司世代は──

  • 「やるべきことを黙ってやるのが仕事」
  • 「成果や効率を最優先するべき」
  • 「まずは下積み・我慢が大切」

といった考え方が一般的とされる中で仕事をしてきました。

どちらが正しい・間違っているという話ではなく、これまでの常識や育ってきた環境が異なるだけのこと。だからこそ、なぜ分かり合えないのかと悩む前に、まずは「何を大事にしているのか」「どんな価値観を持っているのか」という視点を持つことが大切です。

すれ違いの根本には、理解の欠如ではなく、前提を知らないまま対話していることがあります。そして、「知らない」を放っておくと、小さなズレがやがて関係性の亀裂へとつながってしまうこともあるのです。

「わかってくれない」は、対話の不足がつくる

「言われた通りにやっているのに、なぜか評価されない」
「ちゃんと理由を聞いてほしいのに、すぐ決めつけられる」

若手からよく挙がる悩みには、このようなものがあります。上司の側は良かれと思って指導していたとしても、「話を聞いてもらえない」「否定された」と受け取られることもあり、結果的に、伝わらない・すれ違うコミュニケーションになってしまうのです。

こうしたギャップは、「価値観の違い」に加えて、対話の量と質の不足が要因になっているケースも多く見られます。

  • 一方的な指示になっていないか?
  • 決めつけではなく、問いかけができているか?
  • 相手の言葉を最後まで聴く余裕があるか?

こうした対話の基本が抜けてしまうと、たとえ正しい内容を伝えていても、相手の心には届きません。「わかってもらえない」という壁の多くは、「聞いていない」「聞かれていない」というコミュニケーションの不足から生まれます。

そしてその結果、伝える側も、受け取る側も、どこかで「どうせ伝わらない」と感じてしまい、対話が減り、ますますズレるという悪循環に陥ってしまうのです。

育成がうまくいくチームには、信頼の“土台”がある

前の章では、Z世代と上司世代の間にある「価値観や認識のズレ」が、すれ違いや誤解を生む一因であることを見てきました。では、そのズレを埋め、対話を機能させるにはどうすればいいのでしょうか?

その鍵となるのが、「信頼関係」です。育成がうまくいくチームには、共通して“話せる関係性”があります。上司と部下が、立場や世代の違いを越えて、「この人には安心して話せる」と感じられる関係。それがあるかどうかで、部下の成長スピードも、関わりの深さも、大きく変わってくるのです。

「話せる上司」かどうかで、成長のスピードは変わる

部下が自ら動けるようになるためには、日々の業務の中での気づきや戸惑い、課題感を声に出せる環境が欠かせません。そして、その前提にあるのが「この上司には話しても大丈夫だ」と思える関係性です。

部下が困っているとき、迷っているとき、上司に「相談しよう」「聞いてもらおう」と思えるかどうか──
それが、成長のスピードに大きな差を生み出します。

どれだけ育成の意図を持って関わっていても、そもそも部下が話してくれない状態では、成長支援は成立しません。逆に、「この人には本音が言える」「考えを整理するために話したい」と思える相手がいるだけで、部下の視野は開かれ、行動が変わっていきます。

「話せる関係性」が、成長の循環を生み出す

信頼関係とは、目に見えないものですが、

  • 日頃の会話のしやすさ
  • 相談のタイミング
  • 話しやすい空気感

といった小さな積み重ねの中に、そのある・なしが表れます。つまり、信頼して話せる上司がいるチームでは、部下が立ち止まってもすぐに軌道修正できる、失敗を前向きに学びに変えられる、という成長の循環が生まれやすいのです。

そして、そこにあるのが「この人には話しても大丈夫」と思える、話せる関係性。この話せる関係性こそが、育成のスタートラインなのです。

信頼を育てるのは、“日々の関わり”の質

信頼関係は、1回の対話や1つの制度で築けるものではありません。部下が「話しても大丈夫」「相談してみよう」と思えるようになるには、日々の何気ないやりとりの積み重ねが必要です

たとえば、朝の挨拶やちょっとした声かけ、困っていそうなときにかける一言。こうした小さな関わりの中で示される表情・反応・言葉のトーンが、「この人はちゃんと見てくれている」「自分に関心を持ってくれている」という感覚を生み出します。

日常のふるまいが、信頼を育ても壊しもする

一方で、上司が忙しそうにしていたり、リアクションが薄かったりすると、部下は「今は話しかけない方がいいかも」と距離を取ってしまいがちです。これが積み重なると、ちょっとした相談のタイミングを逃し、すれ違いが放置されてしまうのです。

だからこそ、「何を話すか」よりも「どう関わるか」が信頼関係の鍵。上司の聴く姿勢、問いかけ方、反応の丁寧さといった“会話の質”が、部下との関係性を左右します。1on1のような制度が有効なのも、こうした関係づくりの一部として機能するからです。

しかし、本当に信頼を育てるのは、日々のコミュニケーションそのもの。どんなときも安心して話せる人であることが、部下にとっての成長の土台となり、やがて信頼→対話→育成という、ポジティブな循環を生み出していくのです。

忙しい現場でも導入しやすい研修を

「聴くこと」から始まる、育てるマネジメント

育成を前に進めるうえで欠かせないのが、信頼関係です。その信頼は、特別なスキルや制度ではなく、日々の「聴く姿勢」から少しずつ育っていきます。

信頼関係は、マネージャーの“姿勢”から生まれる

1on1や日々のちょっとした相談、ミーティング。マネージャーが部下と向き合う場面は、日常業務の中に数多くあります。その1つひとつの関わりが、信頼関係の土台をつくっていきます。

たとえば部下が「少しお話ししてもいいですか」と声をかけてきたとき──その瞬間のマネージャーの表情やリアクションが、「話しても大丈夫か」「ちゃんと聞いてくれそうか」といった判断材料になります。

  • 忙しそうにしながら聞いていないか?
  • 結論を急いでアドバイスしていないか?
  • 相手の話を、途中でさえぎっていないか?

部下が「この人になら話してもいいかも」と感じられるかどうかは、スキルや言葉ではなく、姿勢に表れるものです。「わかろうとする姿勢」があるだけで、相手の心の扉は少しずつ開いていきます。

「聴く姿勢」が、考える力を引き出す

マネージャーにとって大切なのは、正解を返すことではありません。部下の考えや感情を引き出し、整理する支援者であることです。たとえば、

  • 「どうしてそう思ったの?」
  • 「今、何が一番気がかり?」
  • 「うまくいくとしたら、どんな状態?」

そんな問いかけを通じて、部下は自分の考えを言葉にしながら整理していきます。ときには、自分自身の中にある「本当の思い」や「考えてもいなかった視点」に気づくこともあるでしょう。

このように、対話の中で気づきが生まれ、視点が広がり、考える力が育っていくことこそが、育成の本質です。マネージャーが教える人ではなく、“引き出し、支える人”として関わることで、部下は徐々に自分で判断し、選択し、動ける力を育んでいきます。

そのためには、聴くことを通じて「ここでは安心して話せる」という空気をつくることが、育成の第一歩になるのです。

「部下を変える」のではなく、「関係を変える」視点へ

うまくいかない業務や、期待と違う行動が見られるとき──つい「どう伝えれば変わってくれるか」と、部下の変化ばかりに目を向けてしまいがちです。

しかし、そもそもその伝える場が、信頼関係のないままでは、言葉が響かないこともあります。大切なのは、関係性の「質」こそが、指導や育成の「効果」を左右するという視点です。

言葉の伝わり方は、関係性で決まる

  • 信頼がない状態では、「何を言っても否定されそう」と、受け入れる余地がなくなる
  • 信頼がある状態では、「きっと自分のために言ってくれている」と、前向きに受け取れる

つまり、部下の行動を変える前に、話し合える関係を築くことが先なのです。その関係性の変化が、対話の深さを変え、部下の意欲や行動を少しずつ変えていきます。

業務の進捗確認、フィードバック、すれ違いの解消──どんな場面でも、「相手を理解する」「信頼を深める」という前提があるだけで、マネージャーの言葉の伝わり方は大きく変わります。

だからこそ、日々のコミュニケーションは、育成のためのインフラ。「ちゃんと聴く」「安心して話せる関係をつくる」ことは、単なるスキルではなく、組織に信頼と成長をもたらす、マネージャーの最も重要な仕事の1つなのです。

まとめ

マネジメントとは、指示を出すことでも、正解を教えることでもありません。部下が「話したくなる関係性」を築き、「自分で考えられる環境」を整えていくことこそが、マネージャーの本質的な役割です。

そしてそれは、一朝一夕で築けるものではありません。日々のちょっとした声かけ、問いかけ、聴く姿勢。そうした“小さな関わり”の積み重ねが、信頼を育て、対話を深め、育成の質を変えていきます。

「聴くこと」は、部下を支えるための手段であると同時に、マネジメントの原点です。関係性が変われば、育成の進み方が変わり、チーム全体の成長にもつながっていきます。

次回|第4回「“言えない上司”が組織を弱くする」

信頼関係を築いたその先に求められるのが、“伝える”というマネージャーの責任です。しかし現場では、指導やフィードバックを避けてしまうケースも少なくありません。それはやがて、部下の成長を止め、組織の停滞を招いてしまいます。

次回は、育成の質を高める「伝える力」について紐解いていきます。

伝える勇気と育成の責任|“言えない上司”が組織を弱くする

若手も管理職も、成長を実感できる研修を

「何年も同じ研修を繰り返しているけど効果が出ているのかな?」
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若手や管理職の育成は、どの企業にとっても大きなテーマです。「新人がなかなか定着しない」「OJTだけでは限界を感じる」など、同じようなお悩みを抱える企業も少なくありません。
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監修者情報

株式会社アクシアエージェンシー
ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ

中井 美沙

株式会社アクシアエージェンシー新卒入社。求人広告営業として大手中小企業の採用活動に携わる。2020年人事コンサルティング会社へ出向し研修企画実施や人事評価制度運営などに従事。2022年に研修開発部立ち上げに参加。人事部と兼務しながら社内の人材育成、人事評価制度運用、人事面談、社内外の研修企画実施などに従事。国家資格キャリアコンサルタント取得。株式会社アナザーヒストリー プロコーチ養成コーチングスクール修了。