管理職の育成は、企業の未来を担う“人材戦略”です。
企業経営や事業の成長において、管理職の存在は単なる中間役職ではなく、課題解決と現場推進の中心となるキーパーソンです。組織全体への影響力を持つからこそ、期待されるスキルや役割も年々高度化しています。
しかし実際には、「急に昇進して何をすればいいかわからない」「現場で育成や教育の仕組みが整っていない」といった声も多く聞かれます。管理職研修に関連するニーズや課題を明らかにし、それぞれの企業に合った育成手法を見つけることが、持続的な成長の鍵になります。
本記事では、2025年以降を見据えた管理職研修の選び方・設計方法から、具体的なプログラムやシステム導入の考え方までを、調査結果や専門的な視点も交えて解説しています。現場の実務課題や人材定着、防止策としての研修の役割にも触れながら、管理職研修の作成・実施・定着までをトータルにサポートする情報を網羅しています。
“自社にとって必要な教育とは何か?”
その答えを探しながら、最適な管理職育成のヒントを得ていただければ幸いです。
管理職研修の重要性
管理職は、単に部下を管理する役割にとどまらず、会社全体の方針を理解し、現場での実行を支える「橋渡し役」としての機能を担っています。企業の経営戦略を推進するうえでも、管理職の役割とマネジメントスキルは極めて重要です。
しかし、昇進に伴って突然求められるスキルや判断力に戸惑うケースも多く、組織の中で「管理職の質」が課題となっている企業も少なくありません。そうした状況において、適切な研修を通じて役割や必要なスキルを体系的に学ぶことは、管理職本人だけでなく、組織全体にとっても大きな価値をもたらします。
この章では、まず管理職の果たすべき役割と必要なスキルについて整理し、それらを支える研修の意義について考えていきます。
管理職の役割と必要なスキル
管理職としての役割を明確に理解することは、組織運営において欠かせません。マネジメントに関わる役職である課長や部長、マネージャーといった上級管理職は、単なる指示・監督を行う存在ではなく、経営戦略を現場に浸透させる役割を担っています。組織全体を俯瞰しながら、プロジェクトマネジメントやタイムマネジメント、人事的な対応も求められるため、その責任は多岐にわたります。
管理職に求められるスキルは多様ですが、主に以下のような能力が挙げられます。
- ビジネスマナーを含む対外的な対応力
- チームを導くリーダーシップとマネジメントスキル
- 総務や人事との連携を取る調整力
- 担当部門の業績に貢献するための戦略的思考
- 経営者・役員との意思疎通を図るためのコミュニケーション力
こうしたスキルを高めるには、実践に基づいた研修が有効です。適切な研修を受けることで、自身の役割を再確認するとともに、日々の仕事に必要なスキルを体系的に強化することが可能となります。特に、役職ごとの研修内容をカスタマイズすることで、より実践的かつ成果に結びつく研修となります。
研修の効果がもたらす組織への影響
管理職研修は、個人の能力向上にとどまらず、組織全体にポジティブな変化をもたらします。人材育成に注力することで、職場の雰囲気が良くなり、社員一人ひとりの意識が変わり、チームとしての生産性が向上します。これは、新入社員からベテラン社員に至るまで、すべてのメンバーに良い影響を与える「組織開発」の一環といえます。
特に、管理職が学んだマネジメントスキルやリーダーシップを実践することで、職場内の課題がスムーズに解消されやすくなり、結果としてチーム全体のパフォーマンスが底上げされます。また、研修を制度として定着させることで、人材開発が継続的に実施されるようになり、変革を目指す企業文化が根づいていきます。
研修成果を現場に浸透させるためには、以下のような工夫が重要です。
- 研修後のフォローアップ制度の導入
- 実施内容を職場に取り入れるための定例ミーティング
- 管理職同士の成果共有の機会づくり
- 制度としての継続的な研修プログラムの整備
研修は一過性で終わらせるのではなく、「変化を出す」ための持続的な取り組みとして捉えることが、これからの企業にとって不可欠です。
おすすめの管理職研修
管理職に求められる役割やスキルについては、前章で全体像を整理しました。本章では、それらの力を実際に育むための研修プログラムを紹介します。
マネジメントに必要なのは、単なる知識や経験だけではありません。チームを動かし、部下を育て、組織に戦略的に貢献するためには、段階的かつ実践的に力を身につけていくことが求められます。
そこで本章では、管理職の階層やミッションに応じて設計された代表的な研修プログラムを4つご紹介します。
それぞれの目的・必要性・内容・特長と利点を明確に整理し、「自社に合った研修選び」を考える際のヒントとしてお届けします。
管理職に必要な思考とスキルを育てる研修プログラム一覧
管理職には、単に指示を出すだけではなく、組織を描き、周囲を動かして成果を出すための多面的なスキルが求められます。部下の育成から戦略立案まで、役割に応じて必要な能力を段階的に身につけていく必要があります。
ここでは、管理職の階層・役割ごとに設計された代表的な研修プログラムを4つ紹介し、それぞれの目的・必要性・内容・研修の特長と利点を整理します。
マネジメント基礎研修(初級管理職向け)
■目的・必要性
現場リーダーとして成果を出すには、「業務を任せる・見る・支える」視点を持ち、マネジメントの基本を押さえることが不可欠です。プレイヤーからの切り替えがうまくいかないと、部下を育てられずチーム全体の力も伸び悩みます。管理職としての意識と行動を再設計することが、この研修の狙いです。
■内容の例
- 業務設計と進捗管理
- リーダーシップの基礎理解
- タイムマネジメントの実践法
■研修の特長・利点
- 現場で直面するシーンを想定したワークショップ形式で、机上の理論ではなく「やってみたらわかった」が得られます。
- フィードバックを受けながら自分のマネジメントスタイルを客観視でき、改善点を具体的に把握可能です。
- 「急に課長になって不安だったけど、何を大事にすればいいかがわかった」という声も多く、昇進直後の不安を払拭できます。
- 基本に立ち返りたいベテランにも好評で、初級者〜中堅への広がりもあるプログラムです。
1on1実践研修(中堅管理職向け)
■目的・必要性
中堅管理職に求められるのは「人を動かす力」。その核となるのが日常のコミュニケーションです。部下の本音を引き出し、成長を支援できる対話力は、関係性の質やチームの雰囲気を左右します。1on1を“場”として使いこなせるようになることで、部下育成が一段階レベルアップします。
■内容の例
- 傾聴・質問・フィードバックの実践
- キャリア面談の構造化
- 面談記録の取り方と活用法
■研修の特長・利点
- 受け身な1on1から「育成の場」に変えるための構造を学べるため、1回1回の対話の質が劇的に上がります。
- ワークで実際の部下とのやり取りを再現し、講師や参加者からフィードバックをもらえる構成なので「自分だけで悩まず気づける」体験ができます。
- 研修後も1on1を継続できる仕掛け(例:質問テンプレート、記録シート)が用意されているため、定着率も高いです。
- 実際に参加した管理職からは「指導が楽しくなった」「部下からも変わったと言われた」との声もあり、心理的効果も大きいのが特長です。
チームマネジメント研修(プロジェクト型業務リーダー向け)
■目的・必要性
組織横断型の業務やプロジェクトを成功に導くには、単に役割を与えるだけでなく、関係者を巻き込み、対話し、目標に向けて進めるリーダーシップが不可欠です。この研修では「チームを機能させる技術」を体系的に学び、再現性のあるチームづくりを目指します。
■内容の例
- チームビルディングの設計と運用
- KPI/OKRの設計とマネジメント
- ファシリテーションと合意形成の手法
研修の特長・利点
- 実際のチーム課題を持ち込んで演習できる「実務直結型」なので、研修後すぐに現場で試せる再現性があります。
- ファシリテーションのスキルだけでなく「チーム状態の見極め方」「KPIの立て方」など、抽象と具体の両面から学べる構成です。
- チームがうまく機能しない原因を「人」だけでなく「仕組み」から捉える視点が育つため、リーダー自身のストレスも軽減します。
- 複数部門にまたがるプロジェクトを率いる人材育成にも効果的で、「次世代リーダー育成枠」として導入する企業も増えています。
戦略思考研修(部長・経営層候補向け)
■目的・必要性
経営との対話を求められるポジションでは、「組織をどうするか」「事業をどう伸ばすか」といった視座が不可欠です。属人的なリーダーシップを超え、構造的に課題を捉え、戦略的に提案できる力を身につけることが、次世代の部長・役員候補には求められています。
■内容の例
- 戦略フレーム(SWOT、3Cなど)の活用
- 組織課題の言語化と施策提案演習
- 経営会議で通用する資料構成と伝え方
■研修の特長・利点
- 経営層が使う「戦略思考の言語」をフレームで身につけられるため、会議や提案の場での説得力が圧倒的に高まります。
- 自部門の強み・課題を構造的に捉えられるようになるため、「直感や経験に頼らない判断」ができるようになります。
- 社内でのプレゼンスが上がり、役員からの信頼獲得にもつながったという受講者の声も多数あります。
- 複数回にわたる継続受講型プランでは、現場施策のPDCAに研修内容を落とし込み、事業部の変革につなげるケースもあります。
実際の導入事例に学ぶマネジメント研修の効果
実際に管理職研修を導入した企業では、「マネジメントの全体像が見えるようになった」「感覚でやっていたことを理論として整理できた」といった声が多く寄せられています。以下は、ある企業で実施された研修プログラムの事例です。
導入背景・目的
社員数の増加とともに組織体制が整いつつあり、これまで属人的に任されていた育成を体系化する必要が生じました。特に管理職が自らの役割を正しく理解し、組織全体でマネジメントの土台を整えることが急務となったため、研修を導入することに。
研修内容(一部)
- 管理職の役割と責任の整理
- 組織エンゲージメントサーベイを活用した現状把握
- 性格特性レポートを用いた部下理解のグループワーク
- 企業理念に関するディスカッション
- コミュニケーションスキル(傾聴・伝達)の実践
受講者の声
- 「感覚でやっていたことを、改めて言語化して見直すよい機会になった」
- 「“こうしてもらえたら嬉しい”が詰まった内容で、他のスタッフへの展開にも取り組みたい」
- 「心理的安全性の概念に初めて触れ、自身の接し方を見直すきっかけになった」
- 「管理職同士で直に意見を交換できたことが貴重だった」
- 「これからはチームのマネジメントだけでなく、自分たちで事業を動かすといった、もう一段高い視座を持って行動していきたい」
このように、実践的なワークや対話を中心とした研修は、受講者のマインドセットを変えると同時に、学んだ内容を日常業務に活かそうとする意欲を育てる効果があります。
特に心理的安全性の確保や部下理解の深化といったテーマは、近年のマネジメントにおいて重要性が高まっており、体系的な教育の必要性を強く裏づけるものとなっています。

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研修内容の選定基準
どれだけ優れた研修でも、企業ごとの課題や現場の実情に合っていなければ、その効果は限定的なものになってしまいます。管理職研修においては、「誰に」「何を」「なぜ学ばせるのか」を明確にした上で、目的に沿ったプログラムを設計することが重要です。
また、管理職と一口に言っても、役割やスキルレベルは企業ごと、部門ごとに大きく異なります。だからこそ、汎用的な研修を選ぶのではなく、自社のニーズに合わせてカスタマイズされた内容にすることが成果につながる近道です。
この章では、研修のカスタマイズの重要性と、階層ごとにおすすめされる研修テーマについて整理していきます。研修選定に悩む人事担当者にとって、判断軸となるヒントが詰まったパートです。
企業のニーズに合わせたカスタマイズの重要性
研修を成功させるうえで最も重要なのは、「自社にとって本当に必要な内容になっているかどうか」です。どんなに実績のあるプログラムでも、それが自社の業種・文化・組織フェーズに合っていなければ、効果は半減してしまいます。
まずは、自社の特性やビジョン、現在の組織課題を明確に把握することが出発点です。例えば、マーケティングや営業の現場が日々変化している企業であれば、即時対応力や顧客対応スキルを強化する研修が求められます。一方、成熟した製造業であれば、改善思考や現場統率力が重要になるかもしれません。
こうした違いを踏まえた上で、株式会社や企業の人事部門が“パートナー”と協働して、オーダーメイドで設計していくことが、最大の成果を引き出す近道です。コンサルティング会社との連携を通じて、全体設計から講師の選定、ツール導入に至るまでカスタマイズの幅は広がります。
特に中堅層以上の管理職向けでは、グローバルな視点や事業部ごとのニーズに合わせた“調整力”のある設計が求められます。研修はパッケージを“選ぶ”ものではなく、サービスとして“仕立てる”もの。自社の未来に本当に適した形を選択する姿勢が、これからの育成戦略ではより重要になっていきます。
対象階層ごとのおすすめ研修内容
研修設計においてもうひとつ欠かせない視点が、「階層ごとのテーマと目標の明確化」です。初級管理職、部下を持つ中堅社員、経営幹部など、従業員の階層によって求められる役割や成果は大きく異なります。
例えば、初級者向けの研修では、報連相やタイムマネジメントなど業務遂行の基本スキルを定着させることが中心になります。一方で、幹部層向けには、事業戦略や組織変革、CS(顧客満足)指標のマネジメントなど、より高度な判断・推進力が求められます。
研修テーマの選定は、以下のように整理すると効果的です。
階層 | 主な目標・テーマ | おすすめコンテンツ例 |
初級層 | 現場リーダーとしての基本動作 | タイムマネジメント、業務設計、指示の出し方など |
中堅層 | チームを持ち、成果を出すマネジメント力の強化 | 1on1研修、キャリア面談、KPI管理、チーム運営演習など |
幹部・管理職 | 経営視点での判断と変革推進 | 戦略思考、財務理解、経営提案スキル、CS向上施策設計など |
階層ごとにテーマを明確化し、適切なツールやソースをピックアップすることで、研修の納得感が格段に高まります。さらに、「なぜこのテーマを学ぶのか?」という背景を丁寧に伝えることで、受講者の学習モチベーションも上がります。
選択肢が多くなる時代だからこそ、“なんとなく選ぶ”研修ではなく、階層の役割や目標に直結する内容をしっかり選び取ることが、組織全体の成長スピードを左右します。
効果的な研修方法とは
管理職研修は、「どんな形式で学ぶか」によって成果の出方が大きく変わります。特に近年は、対面型・オンライン型・ハイブリッド型といった多様な実施方法が普及し、企業や受講者のニーズに応じた柔軟な選択が求められるようになっています。
また、ただ座って話を聞くだけの研修では、実務への落とし込みが難しい場面も少なくありません。実践を意識した設計や、参加者同士のやり取りを通じた学習体験が、研修効果を飛躍的に高めるポイントになります。
この章では、対面とオンラインの特性の違いや、それぞれを組み合わせた効果的な研修スタイル、そして学びを行動に結びつけるための“実践型”の研修形式について、具体的に紹介します。
対面研修とオンライン研修の比較
管理職研修において「どう学ぶか」は、「何を学ぶか」と同じくらい重要です。特に近年は、対面型とオンライン型の2つの形式が主流となっており、それぞれの利点を正しく理解し、受講者や研修テーマに合わせて選択することが求められています。
対面研修の特徴は、やはり「空気感の共有」と「その場の反応」です。リアルな場での面談やディスカッションは、信頼関係の構築やチームビルディングに効果を発揮します。また、講師や他の参加者との非言語的なやりとりが学びの深さにつながるケースも多く、特に初対面のメンバーで行うワークや、現場課題を扱う研修に適しています。
一方、オンライン研修の利点は、時間と場所の制約を超えて学べることです。遠方拠点のメンバーや、育児・介護と仕事を両立している管理職でも、自分の環境にあわせて参加が可能です。また、録画やWebサイトによる資料共有、オンライン面談ツールとの組み合わせで、反復学習もしやすい設計が可能です。
そして近年注目されているのが、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式です。例えば、知識のインプットはオンラインで事前学習を行い、対面ではケーススタディやロールプレイで理解を深めるというように、研修の目的に応じて形式を組み合わせることで、効果が最大化されます。
それぞれの形式には一長一短がありますが、社内の環境や参加者の状況、研修の目的をふまえた柔軟な設計が、効果的な研修につながります。形式の選定は「どちらが優れているか」という比較ではなく、「何を重視するか」によって決まるのです。
実践的な学びを促す研修形式
管理職研修の成果を現場で“活かせる”かどうかは、その形式次第とも言えます。特に、実務に即した構成とインタラクティブな体験要素がある研修は、理解の定着度も実行力も大きく変わってきます。
代表的な形式として効果が高いのは、以下のような実践型の研修設計です。
- ワークショップ形式
参加者が自ら課題を考え、グループで意見交換しながら進めるスタイル。管理職に求められる“思考と言語化”の力を養うことができます。 - OJT連動型
研修内で得た知識をすぐ現場で試し、1〜2週間後に再集合して成果と課題を振り返る。これにより「学ぶ→行う→振り返る→改善する」の育成サイクルを回せます。 - フィードバック重視型
受講者同士、または講師との1on1面談を通して、行動の癖や強みに気づける設計。特に若手管理職にとっては、自分のスタイルを客観的に知る貴重な機会になります。
実践的な研修形式の特長は、「学んで終わりにならないこと」です。実務に基づく演習や、行動に落とし込むカリキュラム構成を取り入れることで、研修後も自走できる管理職を育てることが可能です。また、参加者同士が同じ課題に取り組み、共に考えることで、社内横断のつながりや育成ネットワークの構築にもつながります。これは、個人の学習だけでなく、組織力そのものを高める副次効果とも言えるでしょう。

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受講後のフォローアップ
研修の本当の価値は、受講直後の理解度ではなく、「その後の行動」と「継続的な成長」に表れます。どれだけ良いプログラムを受けたとしても、それが職場で実践されなければ、学びは一過性の知識で終わってしまいます。
だからこそ、受講後のフォローアップは、研修成果の定着と、個々の管理職が自律的に学び続ける姿勢を育てるうえで極めて重要なステップです。
特に、これからの時代に求められる管理職は、「学ばされる人」ではなく、「自ら学ぶことを選ぶ人」です。研修をきっかけに、自分に足りないものに気づき、社内外のリソースを活用して学び続ける。その姿勢が、後輩や部下にも良い影響を与え、学習が連鎖する組織文化へとつながっていきます。
この章では、効果的なフォローアップのポイントや、受講者の成長を持続的に支援するための仕組みについてご紹介します。「学びを終わらせないための工夫」こそが、育成成功のカギとなります。
効果的なフォローアップの重要性
研修の本当の成果は、「受講した後、どれだけ行動が変わったか」で決まります。学んだだけで終わらせず、現場での行動や判断にしっかりと反映されてこそ、組織にとって意味のある研修となります。そのためには、効果的なフォローアップの仕組みと関わりが欠かせません。
まず重要なのは、研修内容を「行動」に落とし込むための仕掛けを設けることです。たとえば、受講者に対して「1か月以内に何を実践するか」を宣言させたり、上司が定期的に面談を通じて進捗確認を行ったりすることで、学びを業務に定着させる流れが生まれます。
また、受講後にはリーダーシップを発揮する“場”や“役割”を与えることも効果的です。たとえば、社内プロジェクトのサブリーダーに任命したり、新人育成を一部任せたりすることで、受講者自身が「試す→学ぶ→強くなる」サイクルに入ることができます。
フォローアップの効果は、できれば数字で“見える化”することが望ましいです。業務KPIとの連動、部下からのフィードバック、研修後アンケートなどを活用すれば、行動の変化がどのように組織に影響しているかを把握できます。これらを踏まえたうえで、DXやコンプライアンスなど新しいテーマにも対応できる柔軟性ある支援設計が今後はより重要になるでしょう。受講者を“活躍させるための後押し”として、フォローアップは戦略的に設計されるべきフェーズです。
受講者の成長を促す支援方法
フォローアップの鍵を握るのが、「受講者との関わりの質」です。ただ情報を伝えるだけでは、行動は変わりません。本人が“成長したい”と感じる環境や仕掛けをつくることが支援の出発点です。
まず有効なのは、コーチング型の関わりです。上司やトレーナーが一方的に答えを与えるのではなく、「何を伸ばしたいか」「どう進めていきたいか」を受講者自身に言語化させることで、成長への主体性が引き出されます。コーチングセッションを月1回行うだけでも、継続的な学習姿勢は大きく変わります。
次に、モチベーションを維持・向上させる“仕組み”の導入も効果的です。たとえば、受講者限定のSlackやTeamsのチャンネルで成果共有を促したり、マネジメントtipsを定期配信したりするなど、学習を“続けたくなる”工夫が有効です。
また、メンターやトレーナーとの継続的な関係性の構築も重要です。「成長を見守ってくれる存在」がいることで、受講者は希望を持って行動し続けやすくなります。特に若手プレイヤーから管理職に転換する時期は、試行錯誤が多く孤独も感じやすいため、伴走者としてのメンターの存在が成長促進に直結します。受講後の支援は、「準備して終わり」ではなく、「育成を続ける文化づくり」にまでつながっていきます。研修を単発イベントにしないためにも、成長の“流れ”をつくる支援設計が求められます。
研修効果を見える化する評価とフォロー体制
研修の効果を高めたいと考える企業にとって、「やって終わり」ではなく「どう変化を起こせたか」を捉える視点が欠かせません。特に管理職向けの研修では、学習内容が業務やチームにどう活かされたかを明確にすることが、育成投資の正当性を示すうえでも重要になります。また、学びの成果が「どのような意思決定に結びついたか」を評価する視点も、マネジメント層の研修においては見逃せません。
さらに、研修を“きっかけ”として、受講者自身が自ら成長を続けられるような仕組みや文化を組織内に持たせることが、長期的な人材開発には不可欠です。「学び続ける管理職」を育てるためには、評価とフォローアップの両輪をどう設計するかがカギとなります。
この章では、スキルアップを見える化する評価指標の考え方と、学びを継続させるための実践的なフォローアップ体制の整え方についてご紹介します。
スキルアップを可視化する評価指標とは
研修を実施しただけで終わらせず、「何がどれだけ身についたのか?」を可視化することは、人材育成において極めて重要です。特に管理職層では、「知識を得たか」ではなく、「行動がどう変わったか」「周囲にどんな影響が出たか」といった実践レベルでの変化が問われます。
評価を見える化するためには、目的に応じた多層的な指標を設定することがポイントです。以下のような視点で整理すると、成果が明確になります。
評価視点 | 指標の例(定量・定性) |
研修直後の理解度 | ミニテストの得点、アンケートでの自己評価など |
行動の変化 | 上司・同僚による360度フィードバック、業務の実践レポート |
組織への影響 | チームのKPI改善、エンゲージメントスコアの上昇など |
特に有効なのが、事前・事後のギャップを測る「スキル診断」や「行動チェックリスト」です。例えば、タイムマネジメント研修であれば「会議時間の短縮」「進捗報告の頻度」など具体的な行動指標を設定し、本人および上司がそれを定期的に確認する仕組みを整えます。
こうした可視化の仕組みがあることで、受講者自身の振り返りが深まり、「学んだことでどう変わったか」を実感できるようになります。そしてこの実感こそが、さらなる成長へのモチベーションになるのです。
持続的な成長を支援するフォローアップ体制
研修が終わってからこそが、人材育成の本番です。一時的に知識や意識が高まっても、日々の業務の中で優先順位が下がってしまえば、せっかくの学びは風化してしまいます。だからこそ、持続的に成長を支援するフォローアップ体制の整備が不可欠です。
効果的なフォローアップ体制には、以下のような仕組みがあります。
- 月次または四半期ごとのリフレクションミーティング
→ 管理職自身が、部下の前で“自分のマネジメントを言語化する”時間を設ける - 研修後のグループ再集合・ピアフィードバック
→ 同期の管理職同士で悩みや実践を共有し、気づきを得る「社内コミュニティ」の場づくり - 上司によるコーチングセッションの定着
→ 上長も研修の目的を理解し、現場での行動変化を後押しする関与が鍵 - 人事・育成部門からの支援継続
→ メールマガジンやTips配信、フォローアップ資料の提供で「学びの火を消さない」
このような仕掛けによって、受講者が“学びを続ける文化”に自然と触れ、管理職としての成長が組織全体に広がっていきます。
フォローアップ体制は「施策」でありながらも、その本質は「関わりの連続性」です。人材育成を“継続的に成功させる企業”は、例外なくこの部分を大切にしています。

新人の不安や成果プレッシャーにどう対応すべきか、悩んでいませんか?営業現場で実績を出すための研修設計やフォロー体制づくりをサポートしています。貴社の営業育成課題に合わせたご提案が可能です。まずはお気軽にご相談ください。
アクシアエージェンシーの人材育成・研修サービスの特徴
- 採用から管理職育成まで一気通貫でサポート
- 一度きり、で終わらない伴走型支援
- 実務経験が豊富な講師陣が研修を担当
業界別の管理職研修の傾向
管理職に求められる役割やスキルは、業界や職種によって大きく異なります。だからこそ、画一的な研修プログラムではなく、それぞれの業界特性に合わせた設計が重要になります。
たとえば、現場の対応力が問われる小売業と、正確な判断が求められる金融業とでは、管理職に求められるマネジメントの質も、研修の設計方針もまったく違ってきます。同じ「マネジメント研修」であっても、業界によってその目的・手法・定着支援の方法は変わるべきなのです。この章では、各業界でよく見られる研修テーマや工夫を紹介しながら、自社にとって本当に必要なアプローチとは何かを考えるヒントをお届けします。
業種ごとの特性に合わせた研修内容
業界ごとに求められる管理職の役割やスキルには、大きな違いがあります。にもかかわらず、汎用的な研修プログラムを全業種にあてはめてしまうと、効果が薄くなるのは当然のことです。管理職育成を成功させるためには、「業務に即した設計」が不可欠です。
例えば、営業やサービス業では「現場でのリーダーシップ」や「顧客対応力の強化」が求められます。研修では、ロールプレイやケーススタディを通じた“即応力”の育成が効果的です。一方、製造業やインフラ業では、安全管理や業務効率改善に関するスキル、チームの工程管理能力が重視されるため、PDCAを回すマネジメントスキルや現場起点の問題発見能力に焦点を当てる必要があります。
また、IT・Web業界では、変化の早さに対応するための 短いサイクルで試行錯誤を繰り返しながら進める柔軟なチーム運営 や、若手メンバーとのギャップを埋めるコミュニケーション研修が効果的です。特にこの業界では、階層がフラットなことが多く、管理職という立場の意味づけ自体を明確にするところから設計が始まります。
いずれの業界でも共通して大切なのは、基礎的なビジネススキル(論理的思考、時間管理、フィードバック技術など)を丁寧に身につけさせることです。そして、実際の業務やプロジェクトに直結したワークショップを取り入れることで、社員研修としての納得感と即効性が高まります。職種や部門の特性を踏まえ、研修の内容を企画・開発する段階から丁寧に設計すること。それが、キャリアデザインと組織戦略の両立を支える研修づくりにつながります。
業界特有のアプローチ
業界ごとに異なる課題や組織構造に応じて、管理職研修には多様なアプローチが求められます。ここでは、多くの企業が実際に取り入れている代表的な工夫や傾向を業界別に紹介し、研修設計のヒントをご提供します。
小売・サービス業:現場主導のOJT強化が研修定着に効果的
この業界では、現場責任者のマネジメント力を高めるために、OJT計画や実践レポートを組み込んだ研修設計がよく見られます。現場での育成や対応力が安定しやすく、日常業務との接続性も高まります。
- ポイント:業務と結びつけた「仕組み」があることで、研修の学びが定着しやすい
製造業:業務改善と人材育成を同時に強化
製造業では、工程改善・安全管理・技術伝承などの現場課題と並行して、マネジメントや人材育成スキルを鍛える研修設計が定着しつつあります。現場リーダーの多能化が進んでいる中で、実務直結の研修が求められています。
- ポイント:実務に直結した演習で、現場での再現性が高まる
IT業界:自律的リーダーを育てる学びのネットワークづくり
変化の激しいIT・Web業界では、横のつながりを重視した学習スタイルが注目されています。部署横断での勉強会や、若手マネージャー同士の意見交換の場を設けるなど、継続的に学び合う仕組みが育成効果を高めています。
- ポイント:「育つ文化」が組織に根づくと、研修効果が持続しやすい
金融業界:コンプライアンスと判断力の両立が鍵
高い正確性と法令順守が求められる金融業界では、実際の業務判断を想定した演習や対話型のケーススタディが多く取り入れられています。責任ある立場としての自覚とリスク感覚を同時に養うことが狙いです。
- ポイント:知識だけでなく、実践に即した判断スキルの強化が重要
建築・設計業界:プロジェクト推進と創造性のバランスがカギ
建築・設計業界では、高い専門性と創造性を持ったチームを束ねるマネジメントが求められます。工程管理・コスト管理といった実務スキルと並行して、設計者一人ひとりの意見や強みを活かす“巻き込み力”が重視される傾向にあります。
プロジェクト単位で進行する仕事が多いため、期日管理やクライアント対応を想定したケース研修も取り入れられやすいです。
- ポイント:自由な発想と厳格な納期の両立を支える「調整力と対話力」の育成が重要
このように、業界ごとのニーズや業務の特性を踏まえたアプローチを取り入れることで、管理職研修の納得感と成果は格段に向上します。研修設計では、「どのような課題に直面しているか?」から逆算して、最適な構成を組み立てることが成功のカギとなります。
最新の研修トレンド
社会や働き方が急速に変化する中で、管理職研修も従来のスタイルにとどまらない柔軟さと革新性が求められています。特に、テクノロジーの進化や多様性への理解が、育成設計に新たな基準をもたらしている今、研修そのものの在り方を見直す企業が増えています。
動画やeラーニングといったデジタルラーニングはもちろん、AIの活用による個別最適化、そして多様な価値観が共存する環境を前提とした心理的安全性の醸成まで、今後の管理職研修に必要な視点はますます広がりを見せています。
この章では、そんな変化の真っ只中にある研修トレンドを2つの観点からご紹介します。2025年、そしてその先を見据えた育成を考えるヒントとして、ぜひ参考にしてください。
テクノロジーを活用した新しい研修形態
近年、研修のデジタル化が進み、学びの方法も多様化しています。動画を使ったマイクロラーニングや、定額制のeラーニングは、忙しい管理職でもスキマ時間に効率よく学べる手段として定着しつつあります。特に新任や新人向けには、ビジネスマナーやマネジメントの基本を短時間で学べる構成が好まれています。
さらに近年では、AI(人工知能)を活用した研修支援ツールの導入も進んでいます。たとえば:
- AIコーチングアプリ
管理職が面談スキルやフィードバックの練習を、AIとの対話で模擬体験できる - 学習進捗の個別分析と最適化
AIが受講者の理解度や反応を分析し、弱点に応じた追加学習を自動で提案 - 自動要約・復習機能
研修動画や会議の内容をAIが要約し、短時間での復習やポイント確認が可能
これにより、管理職一人ひとりのスキルや課題に合わせてパーソナライズされた学びが実現しつつあります。企業としても、学習効果の可視化や育成計画の精緻化にAIを活かす動きが広がっています。2025年以降の育成設計では、こうしたテクノロジーとAIの活用をどう組み込むかが鍵になります。単なる知識提供にとどまらず、「現場で試す→振り返る→再学習する」流れを支える次世代型研修の立案と実装が、組織の進化に直結する時代になってきています。
心理的安全性と多様性の尊重が重要な理由
近年、育成や組織運営においてキーワードとなっているのが「心理的安全性」と「多様性の尊重」です。これらは単なる“人への配慮”にとどまらず、組織の戦略や成果に直結する本質的なテーマとして注目されています。
心理的安全性とは、「この職場では自分の意見を言っても否定されない」「失敗しても責められない」という安心感を意味します。管理職がこの空気をつくることで、部下は自信を持って挑戦し、ミスを恐れずに意見を発信できるようになります。結果として、チームの創造性や業務スピードが向上することが、多くの企業でも確認されています。
また、社員のバックグラウンドや働き方が多様化する中で、異なる視点や価値観を受け入れる柔軟なマネジメントも欠かせません。年齢、性別、国籍、キャリア観が異なるメンバーを活かすためには、「違いを尊重するマインドセット」や「公平な評価・接し方」についての理解を深める研修が必要です。
特に、ハラスメントに対する正しい理解と防止策の浸透は、管理職の責任として重視されつつあります。これを怠ると、組織内に不信感や萎縮が生まれ、エンゲージメントの低下につながるリスクもあります。こうした背景をふまえ、最近では「心理的安全性のつくり方」「多様性対応の基本姿勢」を学ぶマネジメント研修を導入する企業が増えています。これらは単なる“知識”ではなく、組織文化の中心を担う管理職の“意識と行動”を変えることを目的とした育成です。

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キャリア形成とネットワーキングの支援
管理職に求められる役割が多様化し、かつ変化のスピードが加速する中で、「一人で成長を続ける」ことは難しくなっています。だからこそ、研修を起点にした人的ネットワークの構築と、中長期的なキャリア形成を支える仕組みの両立が、今後の育成施策の要になります。
「管理職としてどんなリーダーになりたいか」を自ら考え、その道のりを支えてくれる人や場があること。それは単なるスキル習得以上に、本人の意欲や可能性を引き出す力を持っています。
この章では、受講後も続くコミュニティのあり方と、個人のキャリアビジョンに沿った育成支援の工夫についてご紹介します。
継続的な交流を促すコミュニティづくり
管理職は、責任が重くなる一方で、社内で同じ悩みを共有できる相手が少なくなりがちです。だからこそ、同じ立場同士がつながり、学び合える「コミュニティの存在」が非常に重要です。
研修をきっかけに築かれるネットワークが、終了後も継続して機能すれば、それは「学びの場」から「相談できる場」へと進化していきます。たとえば:
- 他部署の管理職との定期的なラウンドテーブル形式の情報交換
- グループチャットを活用した日常的な相談やナレッジ共有
- 研修同期同士でのテーマ別勉強会の自主開催
こうしたコミュニティは、組織内に”横のつながり”や“支え合いの文化”を生み出し、研修で得た知識の実践や、現場での悩みの早期解決を後押しします。
さらに、会社側がこれを単なる「場の提供」にとどめず、ファシリテーターや人事が適度に関与することで、参加が義務感ではなく“意味ある活動”として根づきやすくなるのもポイントです。
キャリアゴールに沿った長期支援プログラム
管理職としての成長は、1回の研修や短期的な支援だけでは完結しません。特に、将来の部門長・経営層候補を育てていくには、個々のキャリアゴールを踏まえた中長期的な支援が不可欠です。
まず重要なのは、「キャリアは与えられるもの」ではなく、“自ら描く”ことを支援する仕掛けを用意することです。たとえば:
- 自己分析ツールを活用したキャリアビジョン設計ワーク
- 定期的なキャリア面談と、長期的な成長マップの共有
- 外部セミナー参加や社内プロジェクトへのアサイン支援
これらを組み合わせることで、管理職自身が「どんなリーダーになりたいのか」「どの力を伸ばしたいのか」を明確にし、その実現に向けて学びや経験を積む道筋を歩むことができます。
また、自分だけでなく、次の世代にどうつなぐかという視点を持たせることで、組織全体のキャリア形成意識も高まっていきます。長期的なキャリア支援は、単なる育成施策ではなく、企業と管理職が“パートナーとして育つ”ための土台とも言えるのです。
効果的な研修を実現するためのヒント
管理職研修の成果を高めるには、「良いプログラムを選ぶ」だけでは不十分です。受講者のニーズに合っているか、実務に活かせる構成になっているか、そして学びが継続する環境があるか──こうした“設計と仕掛け”の工夫が、研修の効果を大きく左右します。
本章では、研修前後のプロセスや学びを深めるための工夫に焦点をあて、より実践的な研修にするためのヒントをお届けします。ニーズ把握・人とのつながり・理論と実践のバランスという3つの視点から、研修の質を一段引き上げるポイントを見ていきましょう。
アンケート活用による研修ニーズの把握
研修の成果を最大化するには、「何を学ぶか」以前に、「何に悩んでいるのか」「何を解決したいのか」を正確に捉えることが重要です。そのために有効なのが、アンケートを活用したニーズの可視化です。
まずは、参加者の課題感や関心を引き出す具体的な質問設計がカギとなります。たとえば「最近部下育成で困っていることは?」「もっと学びたいテーマは?」など、自由回答形式と選択肢の両方を組み合わせると、網羅的に情報を集めやすくなります。
集まった声を丁寧に分析・分類し、研修内容や形式の選定に反映させることで、参加者の現実に即したプログラム設計が可能になります。特に環境が変化しやすい現代では、定期的にアンケートを実施するサイクルを組み込むことが、常に“今のニーズ”に合った研修を届けるためのポイントです。情報収集のツールとしてアンケートを「一回きり」で終わらせず、育成戦略を支える仕組みのひとつとして活用する意識が求められます。
同期とのネットワーキングで学びを深める
研修で得られる学びは、内容だけでなく**「誰と学ぶか」によっても大きく変わります**。同期や他部署の参加者との関わりを通じて、多様な視点に触れることで、理解が深まり、気づきが広がります。
研修中のグループワークやディスカッションだけでなく、終了後の交流を促す場づくりも効果的です。たとえば、以下のようなネットワーキング施策が実践されています:
- 研修参加者限定のSNSグループや社内チャットの設置
- 月1回のミニ勉強会(テーマ別)開催
- 「ラーニングパートナー制度」でお互いの実践を継続共有
また、社外のセミナーやイベントに参加することで、社内では得られない視点や人脈に出会う機会が生まれます。学びが社内に閉じないことで、より柔軟で実践的な発想が生まれやすくなります。同期同士のつながりを単なる「研修仲間」にとどめず、ビジネスの現場で支え合える“学びのコミュニティ”へと発展させることが、持続的な成長への鍵となります。
実地研修と理論の組み合わせの重要性
どれだけ優れた理論も、実際に使える形で体得されなければ意味がありません。だからこそ、研修では「理論→実践」の流れを意識した設計が重要です。
まず、マネジメントやコミュニケーションに関する体系的な知識をしっかり整理・共有し、「なぜそれが必要なのか」という背景理解を深めることが出発点になります。
次に、実務に即した演習やワークを通じて、その知識を“自分の言葉”に落とし込むステップが必要です。たとえば:
- チームマネジメント理論を学んだ後に、自分の職場に置き換えた課題設定ワークを実施
- フィードバック手法を学んだ後、実際の部下とのやりとりを想定したロールプレイを体験
このように、理論と実地の往復によって“使える知識”が形成される構成が、研修効果を浸透させるカギとなります。
また、実地研修後の振り返りやグループ共有の時間を設けることで、他者の気づきから学ぶ“間接体験”も可能になります。対面でもオンラインでも、「行って終わり」にしない仕組みづくりが、組織全体の学習力を高めていきます。

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まとめと今後の研修の進め方
研修内容の見直しと改善点
研修を一度実施して終わりにせず、「どこがうまくいったのか」「どこに改善の余地があるのか」を定期的に振り返ることが、育成施策の質を上げる第一歩です。
まずは、研修の成果を明確に評価するための指標や基準をあらかじめ設定しておくことがポイントです。たとえば、行動変化の有無、受講後のチームパフォーマンス、360度評価などを使えば、定量・定性的に振り返ることができます。
また、参加者からのフィードバックは非常に貴重です。「もっと実務に近い演習が欲しい」「学びはあったが職場で活かせなかった」といった声を収集・分析することで、コンテンツの“役立ち度”を高めるための改善点が見えてきます。
さらに、他社の取り組みも参考になります。同業界・他業界を問わず、どんなテーマが注目されているのか、どのような形式が採用されているのかを調べることで、自社だけでは見えづらい視点や新しいアイデアを取り入れるヒントになります。
研修は時代や組織の状況とともに変わるもの。定期的な見直しを通じて、「今の現場に本当に必要な学び」に変革していくことが、効果的な育成づくりにつながります。
次回研修の計画とスケジュール設定
次回の研修を計画する際に大切なのは、単なる「日程の調整」や「内容の焼き直し」ではなく、現場や受講者にとって本当に必要な学びとは何かを改めて見つめ直すことです。
押さえておきたい4つの視点
経営・組織課題とのつながりを明確にする
研修を計画する際には、単なる知識提供にとどまらず、研修の目的が自社の経営戦略や組織課題としっかり連動しているかを確認することが重要です。たとえば、「管理職のリーダーシップが弱い」といった課題に対しては、なぜそうした状態になっているのか、背景にある構造や現場の要因を掘り下げ、解決につながるテーマや形式を選定する必要があります。
対象者の立場と成長ステージを踏まえた設計
研修は「誰のために行うのか」によって、設計の方向性が大きく変わります。初級管理職、中堅層、部長クラスなど、階層によって求められる知識や行動のレベルは異なります。対象者の成熟度や業務環境を踏まえ、それぞれの段階に適した内容・進め方を設計することで、研修の納得感と効果を高めることができます。あわせて、対象者自身が研修の成果として目標達成の実感につながるような設計を意識することも大切です。
業務との両立を考慮したスケジュール設計
研修の時間配分や開催時期は、学習効果を左右する大きな要素です。忙しい時期を避けるのはもちろん、業務と学びを無理なく両立できるように配慮することが求められます。演習や実務とつながるタスクを週単位で分散させる、適切なインターバルを設けるなど、現場に“学びを持ち帰る余白”を意識した設計が効果的です。
手段の導入目的を明確にする
AIやeラーニングなどの新しい手法を取り入れる際には、それを「どう使うか」だけでなく、「なぜその手法を選ぶのか」という観点を忘れないことが重要です。学びの手段はあくまで目的を実現するためのものであり、手法が先行すると本質を見失いがちです。効果的な設計には、目的から逆算したツール選定の視点が欠かせません。
今後の研修設計は、過去の延長ではなく“未来に必要な力”を逆算して計画することが重要です。そのために、振り返りと対話、そして現場のリアルな声を丁寧に拾う姿勢が、次の育成施策を成功へ導くカギとなります。
まとめ
管理職研修は、企業が未来へ向けて行う“教育投資”です。
本記事では、管理職に必要なスキルや役割の整理から、具体的な研修プログラムの作成方法、業界別の対応、テクノロジーを活用した手法まで、幅広くご紹介してきました。
特にこれからの時代においては、「受講したら終わり」ではなく、研修後のフォローアップや評価体制の整備によって、学びを組織に定着させる仕組みづくりが求められます。
そのためには、研修が「何のために必要なのか」という期待と目的を明確にし、経営課題と関連づけて設計する視点が不可欠です。研修テーマの選び方や内容の改善、防止したい現場の課題やリスクの洗い出し、導入効果を可視化するシステム選定など、研修成功の鍵は準備と設計にあります。
このような視点を持ちながら進めることで、管理職は組織の柱として自律的に成長し、問題解決力やマネジメント力を発揮していくでしょう。本記事が、貴社の人材育成と研修設計のヒントとなり、2025年以降の新たな育成戦略の第一歩を踏み出す一助となれば幸いです。
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監修者情報

ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ責任者
中島 昌宏
1999年株式会社アクシアエージェンシー入社。株式会社リクルートの専属パートナー営業として、HRメディア(新卒・中途採用)を中心に営業および管理職として営業・採用・部下育成などに23年間従事。2022年に研修開発部を立ち上げ、現在は社内及びお客様の研修講師と企画立案に従事。高校時代は野球部に所属し甲子園出場、大学時代には教員免許取得、その後プロゴルファーを目指し研修生を経験。