企業の成長を支えるのは、現場をけん引する「管理職」の存在です。特に変革が求められる今の時代、従来のマネジメントスタイルだけでは通用せず、上司としての役割はより戦略的かつ多様なものへと進化しています。部長や課長といった幹部層が果たすべき役割も拡大し、職場全体での「教育」「コーチング」「メンタルヘルス」などへの意識が高まっているのが現状です。
その一方で、新入社員から管理職への昇格プロセスにおいて、「気軽に相談できる人がいない」「どのスキルを伸ばせばよいか分からない」といった声も多く、企業・人事側には最適な研修プログラムの策定が求められています。ビジネススキルの開発や人事評価との連動、さらにはキャリア支援を含めた包括的な組織開発の一環として、管理職研修はまさに“必須”の取り組みと言えるでしょう。
本記事では、若手や新人管理職にも分かりやすく、新任〜中堅〜幹部層までの階層別に必要な研修内容を整理しながら、会社としてどのように人材開発を進めていくべきか、リスクを防ぐための具体策を交えて紹介します。これから管理職育成に本格的に取り組む方にとって、実践的かつ参考になるノウハウをまとめました。
管理職研修の目的と必要性
企業が持続的に成長していくためには、現場を支える管理職の存在が欠かせません。特に組織が一定の規模に達したとき、経営方針を現場に落とし込む役割を担う管理職の質が、そのまま組織全体の成果に直結する場面が増えてきます。しかし、管理職に求められるスキルや視点は多岐にわたるため、現場任せにしていては期待通りの成果が得られないケースも少なくありません。
そこで注目されるのが、計画的な管理職研修の導入です。この章では、なぜ今あらためて管理職研修が必要とされているのか、そしてそれが企業にもたらす効果について、具体的に見ていきます。
なぜ今、管理職研修が必要とされているのか
近年、組織内における管理職の役割は、単なる「上司」という枠を超え、組織運営の中核を担う存在へと変化しています。以前は、プレイヤーとしての経験を活かして部下を指導するというスタイルが一般的でしたが、昨今はそれだけでは不十分になりつつあります。
その背景には、働き方の多様化や人材流動性の高まり、さらには世代間ギャップの拡大といった要因があります。従業員一人ひとりが異なる価値観や期待を持って働く中で、管理職には状況に応じた対応力や、部下の力を引き出すスキルが求められます。こうした変化に対応するには、場当たり的なマネジメントではなく、体系的な研修による準備と支援が必要です。
また、研修を通じて管理職が自身の役割を再認識することで、組織全体のパフォーマンスや社員のエンゲージメント向上につながるといった副次的な効果も期待できます。これは単なる知識習得の枠を超え、企業文化の醸成や人材戦略の実行においても大きな意味を持ちます。
管理職研修が企業にもたらす効果と変化
管理職向けの社員研修が企業にもたらす影響は、多岐にわたります。まず挙げられるのが、組織のパフォーマンス向上です。業務遂行に必要な知識やスキルを高めることで、判断の質が上がり、意思決定のスピードも速くなります。これは現場だけでなく、経営層にとっても大きなメリットです。
次に、リーダーシップの強化が組織に好循環をもたらします。管理職が信頼されるリーダーとして成長することで、部下の目標達成意欲が高まり、結果的にチーム全体の生産性が上がります。単に指示を出すだけでなく、自らの姿勢や行動で信頼を築ける管理職は、組織全体のムードを大きく左右する存在です。
さらに、こうした流れの中で重要となるのが、社員のエンゲージメント向上です。研修によって管理職が部下との対話力やフィードバックスキルを高めることで、社員が自身の仕事に目的を見出しやすくなります。その結果、従業員の離職率が下がり、企業としての安定性や競争力が高まることも珍しくありません。管理職研修は、決して一時的な施策ではなく、中長期的な組織成長の鍵を握る重要な投資と言えるでしょう。社内で行うのか、外部に研修を委託するのか、その違いも含めて、自社の課題に合わせた取り組みが求められます。
管理職研修の種類と特徴
管理職と一口に言っても、役割や責任の範囲は階層ごとに大きく異なります。そのため、研修も一律ではなく、各階層の特性や課題に応じて内容を調整する必要があります。新任管理職には基礎を、中堅層には橋渡し役としてのスキルを、上級管理職には戦略視点と影響力を――。それぞれの段階で「何を習得すべきか」が明確になっているかどうかが、研修効果を左右します。
ここでは、新任・中堅・上級の3つの層に分けて、研修の目的や内容、求められるスキルの違いについて整理していきます。
新任管理職向け研修の目的と内容
新たに管理職へ登用された人材は、プレイヤーとしての実績が評価されたケースが多く見られます。しかし、「成果を出す」ことと「組織を動かす」ことは、まったく別のスキルが求められます。そのギャップを埋めるために必要なのが、新任管理職向けの研修です。
この段階の研修ではまず、管理職としての基礎知識や考え方をしっかりと身につけることが重要です。たとえば、自社のビジョンや組織の目的をどのように理解し、日々の業務に落とし込んでいくか。また、組織運営における自分の役割がどう位置づけられているのかを把握することがスタートになります。
加えて、チームビルディングやコミュニケーションの基礎スキルも欠かせません。指示命令だけでなく、部下の意見を引き出し、互いに信頼関係を築けるような対話力が求められます。そしてもう一つ大切なのが、自分なりのリーダーシップスタイルを見つけることです。型にはまった方法ではなく、自身の強みや価値観をベースにしたスタイルを確立することが、持続的なマネジメント力につながります。
中堅・中間管理職向け研修の課題と対応
中間管理職に求められる役割は、現場と経営層の“翻訳者”として機能することです。上層部が描く戦略を的確に理解し、それを現場の言葉に置き換えて部下へ伝え、実行へとつなげていく。そのためには、日々の業務管理だけでなく、より広い視野と戦略的な思考が必要とされます。
この層に対する研修では、まず組織と部下の間に立つ存在としての役割認識を明確にすることが重要です。そして、状況を多面的に捉えた上で優先順位をつけ、現実的な施策に落とし込む力が求められます。
また、パフォーマンス管理のスキルも重要な要素です。成果だけを追いかけるのではなく、そこに至るプロセスやチームの雰囲気にも目を向け、部下の成長を支援することが求められます。そのためには、効果的なフィードバックの技術や、対話による動機づけといったスキルも不可欠です。
中堅層の管理職研修は、単に「任せる」段階ではなく、「正しく任せる」「育てながら進捗を管理する」といった、人的資本の醸成に直結する学びの機会となります。
上級管理職・次世代リーダー向け研修の役割
上級管理職や役員クラスには、組織全体の方向性を決定し、それを体現するリーダーシップが求められます。マネージャー層とは異なり、現場視点だけでなく、財務・経営戦略・組織文化の形成といった「経営的視点」が不可欠です。
この層の研修ではまず、戦略立案に必要な分析力や構想力を深めることが中心となります。市場環境や業界動向を的確に読み取り、自社にとって最も有効な方向性を見極めていく力が問われます。
次に重視されるのが、リーダーシップの深化です。ここでは、いわゆる「カリスマ性」ではなく、周囲に影響を与え、巻き込む力に焦点が当てられます。価値観や文化を言語化し、組織に浸透させていくことが求められる場面も多く、日々の判断や言動が部門全体に大きな影響を与えることを意識する必要があります。さらに、組織文化の構築にも研修の視点が向けられます。単にルールや制度を整えるだけでなく、社員が働きやすく、安心して挑戦できる環境をどうつくるか。そのために面談や対話を通じた価値観の共有、継続的なフィードバック体制の構築などが重要なテーマとなります。
管理職研修の具体的なカリキュラム例
管理職研修の成果を高めるには、実務との接続を意識したカリキュラム設計が欠かせません。現場での判断力や対人関係のスキル、組織を動かすための知識など、管理職に求められる力は多岐にわたります。それらを机上の理論だけで終わらせず、実際の業務に活かせる形で身につけられるかどうかが、研修の質を左右します。
この章では、特に重視される3つのテーマ――マネジメントスキル、リーダーシップとコミュニケーション、業績管理と評価について、具体的な学びの内容と進め方をご紹介します。
マネジメントスキルと組織運営力
マネジメントスキルの習得においては、理論を学ぶだけでは不十分です。重要なのは、実務でどう活かすかという視点を持ったトレーニングです。そのため、最近の研修では、実際の業務に近い状況を想定したケーススタディやロールプレイが多く取り入れられています。
たとえば、ある営業部門のマネージャーが部下のパフォーマンスに悩むケースや、他部署との連携に課題を感じている場面を題材に、参加者同士で意見を出し合うことで、状況を多面的に捉える力や、実行可能なアプローチを考える思考力が鍛えられます。
また、参加者同士がフィードバックをし合うスタイルの研修も効果的です。自分では気づきにくい癖や強みに気づく機会となり、学びが深まります。加えて、ディスカッションやグループワークを通じて、異なる職種・部署の視点とぶつかり合うこと自体が大きな刺激となり、組織全体の視座を高めるきっかけにもなります。
このようなアプローチを通じて、マネジメントを「知っている」から「できる」へと昇華させていくことが、研修のねらいです。
リーダーシップとコミュニケーション能力の向上
管理職にとって、リーダーシップとコミュニケーション能力は切り離せない要素です。特に近年は、一方的な指示や管理型のマネジメントでは通用しない時代になっており、相手の立場を尊重しながら、共に考え、動かしていく力が求められています。
この分野の研修では、まず自分自身のリーダーシップスタイルを認識することから始まります。たとえば、「共感型」「論理型」「指導型」など、自分がどのように人を動かしているのかを振り返ることで、強みと課題が見えてきます。
続いて行われるのが、ロールプレイやシナリオワークを通じた実践練習です。部下との面談や、難しいフィードバックの場面など、実際に起こりうる状況を再現しながら、伝え方や受け止め方を体感していきます。
また、近年注目されているのが、「対話力」の育成です。ただ話すのではなく、「相手の話を聴く」「問いを立てる」「感情を汲み取る」といったスキルが、信頼関係の構築において欠かせないものとなっています。こうした要素を含んだプログラムは、管理職自身が人間関係のつながりを再構築する手助けにもなります。
業績管理・評価・労務管理の基礎知識
組織の成果を上げるためには、感覚ではなく、データや実績に基づいた判断とマネジメントが求められます。そのため、業績管理や評価制度の基本を正しく理解することは、管理職にとって欠かせない学びです。
まず学ぶべきは、KPI(重要業績評価指標)の設計方法です。部署の特性や事業の目的に応じて、どんな指標を設定するか、どのように数値目標を設計すべきかを理解する必要があります。数字だけでなく、「なぜそれが重要なのか」という戦略的背景を把握する視点も重要です。
次に、定量評価と定性評価のバランスについても深掘りします。目標達成率のような数値評価に偏ると、短期的な成果ばかりが重視され、チームの協働や成長機会が軽視されがちです。そのため、評価者が「どこを見るべきか」を正しく理解することが、制度運用の質を左右します。
そして最後に重視したいのが、評価を“伝える”力です。評価は終わりではなく、改善と成長のスタート地点です。面談でどう伝えるか、どのように部下の納得感を得るか、そして次にどうつなげるか。こうした視点を持てるかどうかが、マネジメントの成熟度を大きく左右する要素となります。
効果的な研修設計とプログラム企画
管理職研修を導入する際、よくある課題のひとつが「実施したが、現場で活かされていない」というものです。その多くは、研修内容そのものよりも、設計段階の不十分さに原因があります。つまり、どんなスキルを身につけさせたいのか、誰に対して、どのタイミングで、どんな方法で行うか――この設計が曖昧なままでは、せっかくの研修も形骸化してしまいます。
この章では、研修を効果的に機能させるための設計ポイントを3つの観点から解説します。目的の明確化、受講者ニーズへの対応、そして学びの定着をどう図るか。それぞれの視点で、具体的なアプローチを見ていきましょう。
研修設計のステップと成功要因
効果的な研修を企画するためには、まず明確な目標設定が出発点となります。「マネジメントスキルを向上させたい」ではなく、「1on1面談の質を高め、部下のエンゲージメントを改善する」といった具合に、具体的で測定可能な目標を立てることが重要です。
目標が明確になったら、それに基づいたカリキュラムの設計に移ります。単元ごとに学ぶテーマを整理し、学びの順序や繋がりを論理的に構成します。たとえば、「部下のタイプを知る」→「関係性構築の手法を学ぶ」→「面談の実践」といった流れです。
さらに、成果の可視化に向けて、事前・事後のアンケートやテストの活用、または現場での行動変容を確認できるようなOJTとの連動なども検討するとよいでしょう。ここまで丁寧に設計することで、単なる“研修の実施”から、“組織課題の解決”へとつながる設計になります。
参加者のレベルやニーズに応じた柔軟な設計
研修が効果を発揮するかどうかは、内容が受講者の実情に合っているかによって大きく左右されます。そのため、設計段階での事前調査やヒアリングは欠かせません。たとえば、人事部門が上司への簡易アンケートを実施するだけでも、必要とされるスキルや課題感が明らかになります。
さらに重要なのが、受講者のレベルに応じた柔軟なプログラム設計です。同じ階層でも、経験年数や職種により理解度や課題は異なります。そのため、「全体で同じ内容を一斉に学ぶ」スタイルではなく、クラス分けや選択制プログラムの導入など、多様性を考慮した設計が効果を高めます。
また、研修後に得られたフィードバックを次回以降に反映することで、内容の精度はさらに高まります。こうした改善を前提としたサイクルを組み込む設計こそ、長期的に成果を上げるプログラムに必要な視点です。
学びを定着させる工夫(ワーク・事例・反転学習など)
どれだけ質の高い内容であっても、受講者の記憶に残り、実践に活かされなければ意味がありません。そこでポイントになるのが、「学びの習慣化」を意識した工夫です。
まず基本となるのが、ワークショップや事例研究です。たとえば、実際に社内で起こったトラブルやマネジメントの成功例を題材にして、自社の状況に照らしながら考えることで、理解が格段に深まります。
次に、近年注目されているのが反転学習の導入です。これは、事前にeラーニングなどで基礎知識を習得したうえで、集合研修では対話や実践に集中するという手法です。限られた時間を最大限に活用でき、思考力や応用力を育てる場として有効です。
また、振り返りシートの活用や、1〜2週間後に再び簡単な小テストを実施するなど、「忘れさせない仕掛け」をプログラムに織り込むことで、学んだ内容を日常の中に根づかせることができます。
このように、学びを“その場限り”にしないための仕掛けが、研修の価値を高める決め手となるのです。
研修の手法と実施方法
管理職研修の効果は、内容そのものだけでなく、「どのような方法で実施するか」によっても大きく左右されます。参加者の状況や組織の目的に応じて、適切な手法を選び、設計・運営していくことが重要です。
この章では、集合研修とオンライン研修の違いや特徴、両者を組み合わせたハイブリッド型の研修設計、さらに社内・社外のリソースを活用した効果的な進め方について解説します。
集合研修とオンライン研修の比較
まず基本となるのが、集合研修です。対面で実施するこのスタイルは、参加者同士のコミュニケーションが活性化しやすく、研修中に得られる気づきやつながりが大きな価値となります。講師からの直接指導により、理解度が深まるだけでなく、研修の臨場感や緊張感が参加意欲を高める要因にもなります。
一方で、時間や場所に制約があることや、業務調整の難しさから参加のハードルが上がるケースもあります。
これに対して、オンライン研修は時間や場所にとらわれず、参加者が自分のペースで学べる点が大きなメリットです。eラーニングなどの活用により、繰り返し学習や苦手分野の補強がしやすく、効率的な知識習得が可能です。
ただし、インタラクションが少なくなりやすく、参加者同士の交流や講師とのやり取りが希薄になりがちです。受講者の自己管理能力やモチベーション維持が求められる点には注意が必要です。
複数手法を組み合わせたハイブリッド型研修の活用
上記のような集合研修とオンライン研修の長所を活かすために有効なのが、ハイブリッド型研修(いわゆるブレンディッドラーニング)の導入です。
例えば、研修の前半ではeラーニングを通じて基礎知識を習得し、後半は集合研修でディスカッションやケーススタディを行うといった構成にすることで、知識の定着と実践力の強化が同時に図れます。
また、オンラインセミナーや録画配信を併用することで、遠方の拠点や多忙な管理職でも参加しやすい環境が整います。さらに、事前課題や事後ワークを活用することで、自律的な学びの促進や実務への応用を促すことも可能です。
こうした柔軟な手法の組み合わせは、企業の規模や研修予算、参加者の属性に応じてカスタマイズしやすく、今後の主流になる形といえるでしょう。
外部研修・社内講師・eラーニングの使い分け
研修の設計においては、「誰が教えるか」「どこで学ぶか」も非常に重要な要素です。
まず、外部研修の活用は、最新の知識や業界トレンドを取り入れやすい点で有効です。専門機関や経験豊富な講師による講義は、視野を広げ、現場では得にくい刺激を提供してくれます。ただし、研修内容が自社の課題とマッチしているかを事前にしっかり確認することが重要です。
一方、社内講師による研修は、自社の実情に即した内容で実施できるため、現場への適用がしやすく、組織内のナレッジ共有にもつながります。育成担当者が実務経験者であるほど、参加者の理解度や納得感も高まります。
また、eラーニングの導入により、反復学習や自己学習の場を提供することも可能です。これは新任管理職や、忙しい中間管理職層にとって有効な学習手段となります。カリキュラム設計時には、これらの手法を目的や対象に応じて適切に使い分ける視点が求められます。
研修後のフォローアップと成果測定
管理職研修は、実施そのものがゴールではありません。むしろ重要なのは、受講後に現場でどのように知識やスキルが活用されていくか、そしてその結果として組織にどのような変化が生まれるかを見届けるプロセスにあります。単発の学びで終わらせないためには、研修後のフォローアップと効果測定が不可欠です。
この章では、研修成果の可視化に向けたKPI設計や評価方法、行動定着を支える面談・フィードバック、さらにOJTや継続学習との連動について解説します。人材育成を組織の成長戦略と位置づけるための、実践的な視点をお届けします。
効果測定の方法とKPI設計
管理職研修の成果を正しく評価するには、事前に「何をもって効果とするのか」という基準を明確にしておく必要があります。よく使われる手法のひとつが、KPI(重要業績評価指標)を活用した定量評価です。
たとえば、研修の目的が「部下への指導力向上」であれば、受講後の1on1面談の実施率や、フィードバックの質に関する360度評価などを指標とすることが考えられます。また、「業務改善力の向上」であれば、業務フローの改善提案数や実施件数、上司による観察評価などが有効です。
さらに、定量評価だけでなく、受講者の行動変化やマインドの変化を確認するための定性的評価も重要です。インタビューや日報、自己評価レポートなどを活用し、学びがどう活かされているかを多面的に捉える仕組みを整えましょう。
評価の結果は、次回以降の研修設計にも活用できる貴重な情報源です。測定可能な目標設定と、実行可能な振り返りのフローを組み込むことで、研修が単発で終わらない体制づくりにつながります。
フィードバック・面談による定着支援
研修で得た知識やスキルを、現場で自分のスタイルに落とし込み、実際に活用するためには、周囲のサポートと振り返りの機会が不可欠です。特に、研修直後のタイミングで行うフォロー面談や、定期的なフィードバックの場は、学びを実践へつなげるうえで非常に有効です。
フォロー面談では、研修で印象に残った内容や、実践してみたいこと、逆に不安に感じていることなどを整理し、具体的な行動計画に落とし込むことがポイントです。人事担当者や直属の上司が伴走することで、受講者は安心して業務に活かす準備を進めることができます。
また、業務の中での成果やチャレンジに対して適切なタイミングでフィードバックを行うことで、モチベーションを維持しやすくなります。さらに、組織として対話や相談を歓迎する文化があるかどうかも、学びの定着度に影響を与える要素です。
研修の「その後」をどう支えるかは、組織全体の育成文化の成熟度にも関わる重要なテーマです。形式的なチェックで終わらせず、共に成長を見守る姿勢が求められます。
継続学習とOJTとの連動
管理職としての成長は、一度の研修で完結するものではありません。環境の変化や組織の方針に応じて、常にアップデートされるべき領域です。だからこそ、継続的な学びを支える仕組みの整備が欠かせません。
たとえば、月1回のテーマ別勉強会や、課題共有型のワークショップを通じて、現場で感じているリアルな問題に対して、仲間と一緒に考える機会を持つことは非常に有効です。こうした場は、知識のインプットだけでなく、経験の共有や価値観の擦り合わせという面でも重要な意味を持ちます。
また、オンライン教材や動画コンテンツなどの活用により、忙しい管理職でも自分のペースで学習を継続できる環境を整えることが可能です。eラーニングやマイクロラーニングの導入も、柔軟な学び方を実現する一つの手段です。
さらに、OJT(On-the-Job Training)との連動も忘れてはなりません。研修で学んだ理論や考え方を、実務の中でどう応用するかを、実際の業務を通じて体感できる機会があることで、学びがより深く根付きます。この際、OJTの指導者側にも支援体制を整えておくと、現場の育成効果はさらに高まります。
成功する管理職研修のポイント
管理職研修の成果は、内容の質だけでなく、「実際の現場でどう活かされるか」にかかっています。学びが行動に結びつき、組織の中で成果を生み出すためには、受講者自身の主体性と、現場の支援体制の両方が必要です。ここでは、研修を“受けて終わり”にしないために押さえておきたい、設計・運営・実行の観点からの成功ポイントを紹介します。
実践につながる内容の設計
管理職研修の設計において最も大切なのは、「実務で即使える内容かどうか」という視点です。いくら理論的に正しくても、現場の状況と乖離していては意味がありません。
そのためには、まず実際の現場で起こり得る課題やシーンを題材としたケーススタディを取り入れることが有効です。たとえば、「部下がミスを繰り返す場合の対応」「評価面談での伝え方」「上層部の意向を現場に落とし込むときの工夫」など、受講者が自分ごととして捉えられるテーマを用意しましょう。
さらに、成果につながる具体的なスキルを明確にすることも重要です。「評価制度の伝え方」「チームの巻き込み方」「問題解決のプロセス」など、行動レベルに落とし込んだ学びを設計することで、受講後の実行率が格段に上がります。
研修が終わったその日から、「明日からこれをやってみよう」と思える内容にすること。それが実践的な研修設計のカギとなります。
受講者の主体性を引き出す仕掛け
管理職研修は“受け身”で進めてしまうと、ただの情報提供で終わってしまいます。受講者のモチベーションを高め、自ら学び、考え、行動する状態をつくることが、成功の鍵です。
そのためには、まずインタラクティブな要素の導入が有効です。たとえば、グループディスカッションやロールプレイ、ケースに基づいたチームワーク課題などを通じて、他者との対話を通じた気づきを促します。また、管理職同士の交流は、同じ立場だからこそわかる悩みや考え方を共有できる貴重な機会にもなります。
さらに、**達成感を感じられる“小さな成功体験”**を組み込むことで、学ぶことへの前向きな気持ちを後押しできます。たとえば「初日の最後にチームで成果発表を行う」「自分の行動宣言をまとめて提出する」といったステップを設定することで、目的意識を持った受講が可能になります。
研修とはいえ、参加者一人ひとりの“内発的動機づけ”が高まる仕組みを持たせることが、学びを深め、行動変容を促すポイントになります。
現場の上司・経営層を巻き込む仕組みづくり
どれだけ良質な研修を設計しても、研修の前後に現場での支援がなければ定着は難しいのが実情です。だからこそ、受講者だけでなく、その上司や経営層を巻き込んだ育成の体制づくりが欠かせません。
まず重要なのは、「なぜこの研修を行うのか」という目的を、関係者全員で共有することです。現場の管理職が“研修で何を求められているのか”を理解していなければ、学んだことを実践に移す際に壁が生じてしまいます。
また、研修後には、上司との面談やチーム内での学びの共有などを通じて、実務とのつながりを強めていくことが有効です。さらに、経営層が研修の価値を認識し、積極的にサポートする姿勢を示すことで、受講者の学びに対する姿勢にも良い影響を与えます。
社内全体で「育成は個人任せではなく、組織の取り組みである」という共通認識を持つことが、管理職研修を成功に導く最大のポイントです。
まとめ
管理職研修は、単なるスキル習得にとどまらず、会社全体の課題解決や人材戦略を推進する重要な土台です。研修を通じて、課長・部長クラスが組織内のリスク管理やビジネス推進に対する感度を高め、変化に対応できる人材へと成長していくことは、経営者にとっても非常に価値の高い投資と言えます。
また、気軽に相談しやすいメンター制度や、メンバー同士の意見交換を通じたファシリテーションのスキル育成、リスクを発生前に察知するための手順の習得など、現場で役立つアウトプットが得られる研修内容が求められています。新人から幹部まで、幅広い層に対応できる柔軟なプログラムこそ、これからの時代における「育成の最適解」と言えるでしょう。
本記事を通じて得られたノウハウや事例が、皆さまの組織開発や研修設計にとって“以上”の価値を生み出し、持続的な人材力の創出に役立つことを願っています。
若手も管理職も、成長を実感できる研修を


「何年も同じ研修を繰り返しているけど効果が出ているのかな?」
「研修後の振り返りがないから、学びが定着しない気がして…」
「OJTをやって終わりだけど、それだけで成長を促すのは難しい」
若手や管理職の育成は、どの企業にとっても大きなテーマです。「新人がなかなか定着しない」「OJTだけでは限界を感じる」など、同じようなお悩みを抱える企業も少なくありません。
アクシアエージェンシーの研修サービスは、そうした声に寄り添いながら、現場で本当に役立つ力を育てることを大切にしています。
アクシアエージェンシーの人材育成・研修サービスの特徴
- 一度きりで終わらない研修設計で、学びを定着させる仕組みを提供
- 動画やフォローアップで、現場での行動変化まで伴走
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監修者情報

ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ責任者
中島 昌宏
1999年株式会社アクシアエージェンシー入社。株式会社リクルートの専属パートナー営業として、HRメディア(新卒・中途採用)を中心に営業および管理職として営業・採用・部下育成などに23年間従事。2022年に研修開発部を立ち上げ、現在は社内及びお客様の研修講師と企画立案に従事。高校時代は野球部に所属し甲子園出場、大学時代には教員免許取得、その後プロゴルファーを目指し研修生を経験。