職場でのハラスメント問題は、従業員の心身の健康やモチベーションに悪影響を及ぼすだけでなく、企業の信頼やブランドイメージにも大きなダメージを与える深刻な課題です。特に近年では、法改正によって企業に求められる責任も明確化され、未然防止と再発防止の両面から、実効性のある取り組みが求められています。
本記事では、ハラスメントの定義と種類、法規制の概要、実際に企業が講じるべき防止策、そして起きてしまった場合の適切な対応まで、段階ごとに体系的に解説します。また、リモートワーク時代に対応した新しい視点や、専門家・外部機関との連携による実践的な対策にも触れ、企業として継続的に改善していくためのヒントを提供します。これから紹介する防止策を参考に、より安全で風通しの良い職場環境づくりを一緒に考えていきましょう。
ハラスメント防止策の重要性
企業におけるハラスメント問題は、今や一部の大企業や特定業種に限った話ではなく、すべての職場に共通する重要な経営課題となっています。特に人手不足や働き方の多様化が進む現代においては、従業員一人ひとりが安心して働ける環境づくりが、組織の安定と持続的成長に直結します。
ここでは、ハラスメント防止策がなぜ企業にとって重要なのか、その背景と求められる対応について解説します。
ハラスメントがもたらす影響
職場におけるハラスメントは、個人の尊厳や信頼関係を損なうだけでなく、組織全体の健全性にも悪影響を及ぼします。被害を受けた従業員は精神的なストレスや不安を抱えやすくなり、メンタルヘルスの悪化、業務意欲の低下、最悪の場合は休職や退職に至ることもあります。
ハラスメントの影響は当事者間にとどまらず、周囲の従業員にも広がります。問題が放置されることで、職場全体に不信感や緊張感が生まれ、チームワークの崩壊、生産性の低下につながる可能性もあるのです。特に、評価や役割に関する曖昧な指示、精神的な攻撃と受け取られる言動、過大な要求などが継続すると、被害者の健康や働く意欲に大きなダメージを与えます。
こうした影響を軽視せず、ハラスメントの状況やリスクを可視化し、具体的な防止策を講じることが求められます。従業員の安全と企業の信頼性を守るために、職場の実情を把握し、早期対応を徹底することが欠かせません。
企業が求められる法的責任とは
ハラスメントに関する対応は、企業の任意対応ではなく、法的義務として明確に求められているものです。労働契約法などにおいて、企業(事業主)には「安全配慮義務」が課されており、従業員が安心して働ける職場環境を整える責任があります。
この義務は中小企業にも当然に適用されます。企業規模にかかわらず、ハラスメントが発生した場合には、被害者から損害賠償を請求されるリスクがあることを理解しておく必要があります。加えて、対応が不適切であった場合には、労働基準監督署や外部機関による是正指導の対象となることもあります。
リスクを回避するために必要な企業の対応
リスクを回避するためには、就業規則にハラスメント禁止の方針を明記し、対応窓口の設置や第三者による相談体制の整備、継続的な教育を含めた組織的な対策が不可欠です。企業が法的な責任を果たすことは、従業員の信頼を得るうえでも重要な取り組みといえるでしょう。
職場環境の向上に向けた取り組み
ハラスメントを防止するためには、日々の職場環境の見直しが必要不可欠です。従業員が安心して意見を伝えられるような職場風土の醸成が、トラブルの未然防止につながります。そのためにも、管理職が果たす役割は非常に重要です。部下の変化に気づき、必要なサポートを提供できる体制づくりが求められます。
多様な働き方への配慮と従業員の声の活用
また、育児や介護などのライフイベントに対する支援体制の整備も、職場環境の質を高めるうえで効果的です。厚生労働省のガイドラインでも、多様な働き方を尊重する企業姿勢が、従業員の満足度やエンゲージメントを高める要因であることが示されています。
さらに、従業員の声を取り入れる工夫も重要です。年度初めの4月などには、職場アンケートや意見交換の場を設け、実際の声を反映した職場改善を進めることが効果的です。小さな行動の積み重ねが、風通しの良い職場づくりにつながっていきます。
ハラスメントの定義と種類
ハラスメント防止に取り組むためには、まずその定義と具体的な種類を正しく理解することが出発点となります。一言にハラスメントといっても、その内容は多岐にわたり、誤った認識や曖昧な理解のままでは適切な対策を講じることができません。
本章では、職場で特に注意すべき代表的なハラスメントであるセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、そして妊娠・育児に関連するハラスメントについて、それぞれの特徴や背景、対応のポイントを詳しく解説します。
パワーハラスメントについて
パワーハラスメント(パワハラ)は、職場における優越的な関係性を背景にした不適切な言動を指し、被害者の尊厳を傷つけたり、職務遂行に支障をきたすような行為を含みます。典型的な例としては、過度な叱責、業務に必要のない私的雑用の強要、無視や排除などが挙げられます。
よくあるパワハラの具体例
パワハラにはさまざまな形態があり、次のような行為が代表的です。
- 必要のない私的な雑用を繰り返し命じる
- 他の従業員の前で執拗に怒鳴る、人格を否定するような発言をする
- 業務に必要な情報を意図的に共有せず、対象者を孤立させる
- 明らかに達成不可能な目標を設定し、プレッシャーをかけ続ける
- 過小な業務しか与えず、やる気を削ぐ
こうした行為は、本人が苦痛を感じるかどうかが判断基準となります。加害者に悪意がなかったとしても、受け手の感じ方によってはパワハラに該当する可能性があります。
パワハラが発生する背景には、役職や年齢、雇用形態の違いによるパワーバランスの不均衡が関係しています。また、管理職自身が「厳しく指導することが正しい」という価値観を持っている場合や、業務のプレッシャーが高い現場では、パワハラのリスクが高まる傾向があります。
法改正による企業の対応義務とリスク
2020年6月には、「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が施行され、企業にはパワハラを防止する措置を講じる義務が課されました。具体的には、社内の相談体制の整備、被害者への配慮措置、加害者への適切な対応などが求められます。企業がこうした対策を怠ると、社会的信用の低下や法的責任を問われるリスクが生じるため、組織として明確な対応方針を持つことが必要です。
セクシュアルハラスメントについて
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場における性的な言動により、相手に不快感や侮辱的な感情を与える行為を指します。たとえば、性的な冗談や容姿に関するコメント、私的な交際を強要する言動などが該当します。これらは、被害を受けた側の感じ方や状況に応じて判断されるため、本人に悪意がない場合でも問題になる可能性があります。
よくあるセクハラの具体例
以下のような言動は、職場におけるセクシュアルハラスメントと判断される可能性があります。
- 体型や服装、容姿についての不用意な発言(例:「今日は色っぽいね」など)
- 飲み会の席などでの性的な冗談や下ネタ
- 恋人の有無やプライベートな性生活に関する質問
- 執拗な食事やデートの誘い、断った後も繰り返す行為
- 不必要な身体接触や距離の近さ
- 女性や男性といった性別による役割決め(例:「女性なんだから気が利いて当然」など)
こうした行為は、たとえ軽い気持ちで行われたものであっても、受け手にとっては深刻な心理的ストレスとなることがあります。
セクハラは、被害者の心理的安全を脅かすだけでなく、業務遂行にも大きな支障をきたします。発言や行動が原因で信頼関係が損なわれると、職場全体のコミュニケーションにも悪影響が及びます。また、こうした状態が続くと、被害者のモチベーション低下や離職を招く恐れもあるため、企業として軽視することはできません。
企業に求められる法的対応と予防措置
法的には、男女雇用機会均等法において、事業主は「セクシュアルハラスメントが職場で起きないようにする措置」を講じる義務があります。同法では、職場内での相談体制整備や、苦情があった際の迅速な対応などが求められています。曖昧な態度や放置はリスクを拡大させるため、適切な方針とルールづくりが不可欠です。
妊娠や育児に関するハラスメントについて
妊娠や育児を理由としたハラスメント、いわゆるマタニティハラスメント(マタハラ)は、働く女性を中心に深刻な問題となっています。たとえば、「妊娠中なのに責任ある仕事を任せられない」「育児休業を取るのは周囲に迷惑だ」といった発言や、復職後の配置転換による嫌がらせなどが該当します。また、近年では男性の育児参加が進む中で、男性への育児休業取得に対する妨害や無視も問題視されています。
よくあるマタニティ・育児ハラスメントの具体例
以下のような言動は、マタハラや育児ハラスメントとみなされる可能性があります。
- 妊娠を報告した従業員に対して「自己管理ができていない」と非難する
- 「どうせ休むから」と重要な業務から外し、キャリアに影響を与える
- 育児休業を希望した男性社員に「男が休むのか」と発言する
- 育休明けの社員に対して、以前よりも著しく低い評価や配置転換を行う
- 時短勤務中の社員に対して、会議や残業への参加を強要する
これらは本人の意図にかかわらず、受けた側が不利益やストレスを感じた時点で問題となります。小さな言動の積み重ねが、重大なトラブルにつながることもあるため、十分な配慮が必要です。
法律上は、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法により、妊娠・出産・育児を理由とした不利益な取扱いや嫌がらせは禁止されています。こうした法的枠組みは、企業に対し必要な措置義務を明示しており、違反した場合には行政指導や企業名の公表といったペナルティが課される可能性もあります。
両立支援に向けた企業の取り組み
職場での支援策としては、育児休業の取得推進に加え、時短勤務制度や柔軟な働き方の導入が有効です。従業員がライフイベントと仕事を両立できる環境を整えることは、組織全体のエンゲージメント向上にもつながります。制度面とともに、社内での意識啓発を進めることが不可欠です。

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法規制の強化と企業の責任
ハラスメント防止に関する法規制は近年、大きく変化しています。かつては企業の自主的な取り組みに委ねられていた対策も、今では法律により明確な義務が課されるようになりました。特に2020年以降の法改正により、すべての事業主に対して具体的な対応が求められており、中小企業においても例外ではありません。
本章では、ハラスメント防止に関する最新の法規制と、企業が果たすべき責任について詳しく解説します。
改正されたハラスメント防止法の概要
近年、職場におけるハラスメント問題への社会的関心が高まり、企業に対する法的な責任も強化されています。こうした背景を受けて、2020年6月には「労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)」が施行され、すべての事業主に対し、ハラスメント防止のための措置義務が課されるようになりました。中小企業については2022年4月から適用が開始され、今や企業規模にかかわらず、対策の整備が必須となっています。
法改正の目的は、ハラスメントの未然防止と発生時の適切な対応を企業に求めることです。これにより、従業員の安心・安全な職場環境を守ることが社会的に期待されています。
主な法改正内容の概要一覧
内容 | 詳細 |
---|---|
パワハラ防止の措置義務 | すべての事業主に義務化(中小企業含む) |
就業規則等への明記 | ハラスメント禁止・処分規定の明確化 |
相談窓口の設置 | 苦情対応・相談体制の整備が必要 |
プライバシー保護 | 被害者・加害者双方の個人情報に配慮 |
再発防止策の実施 | 事実確認後の再発防止措置を義務化 |
労働局による指導 | 法違反に対して行政指導や助言が可能に |
これらの変更点により、企業がハラスメントを「見て見ぬふり」することはできなくなりました。パワハラだけでなく、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント(妊娠・育児・介護に関連するハラスメント)なども、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法により明確に対応が求められています。
新しい法制度の理解を深めるためには、厚生労働省のサイトやガイドラインをご覧いただくと、より詳細な情報を得ることができます。
※参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
事業主の義務と取り組むべき施策
ハラスメント防止のために事業主が果たすべき義務は、明確に法律で定められています。まず第一に、「安全配慮義務」の観点から、職場で安心して働ける環境を整備する責任があります。これには、ハラスメントが起きないよう未然に防ぐ対策を行うこと、万が一発生した際に適切に対処する体制を構築することが含まれます。具体的に企業が行うべき施策としては、以下のような取り組みが挙げられます。
- ハラスメント防止方針の社内周知
- 相談窓口の設置(社内・外部)と担当者の明確化
- 就業規則への対応規定の義務付け
- 定期的な教育・研修の実施
- 事案発生時の速やかな事実確認と処分対応
- 再発防止策の計画と記録管理
たとえば、社外の第三者機関に相談窓口業務を委託し、従業員が安心して相談できる体制を整えたことで、ハラスメントに対する早期対応と組織内の信頼性向上を同時に実現した事例があります。
重要なのは、施策が形式的なものにとどまらず、実際に職場で「機能しているか」を継続的に見直すことです。経営層や人事担当者が自らの責任として取り組む意識が、職場全体の風土に大きな影響を与えます。
ハラスメント防止策の基本方針
ハラスメントを防止するためには、具体的な対策だけでなく、企業としての明確な方針を定め、その意図や内容を組織全体に伝えていくことが欠かせません。防止策の浸透には、経営層の意思表示と従業員一人ひとりの理解を両立させることが重要です。
本章では、ハラスメント防止に向けた方針の明確化と社内への周知方法、さらに職場全体の意識改革を進めるための具体的な取り組みについて解説します。
方針の明確化と従業員への周知
ハラスメント防止に向けた取り組みを効果的に推進するためには、企業としての方針を明確にし、それを全従業員に周知徹底することが不可欠です。まずは、ハラスメントに対する企業の姿勢や防止の目的、具体的な行動基準を明文化し、明らかにする必要があります。これらの内容は、就業規則や社内マニュアルなどに記載するだけでなく、誰でも見られるような形でまとめることが望まれます。
周知徹底に向けた効果的な伝え方
企業の方針や具体的な行動基準は、各部署へのパンフレット配布やイントラネット上での公開など、複数の手段を用いて情報を共有することが重要です。特に新入社員や異動者には、入社時研修や定期的なフォローアップの場で、方針の内容を改めて伝える機会を設けるべきでしょう。
また、定期的な社内広報活動を通じて、「この方針がなぜ必要なのか」「誰のための施策なのか」といった目的を繰り返し発信することが、従業員一人ひとりの意識向上につながります。管理職をはじめ、全社員が同じ認識で対策を実行できるようにするには、このような継続的な周知と働きかけが必須です。
社内での意識改革を促進する
制度や文書だけでは、真のハラスメント防止にはつながりません。重要なのは、社内全体での意識改革をいかに進めるかという点です。そのためには、ハラスメントに関する理解を深めるための研修を、定期的に行うことが第一歩です。特に4月の新年度や人事異動のタイミングは、意識変化を促す絶好の機会となります。
意識浸透を支えるITの活用とフィードバック体制
さらに、社内の啓発活動にはITツールを活用するのも効果的です。社内ポータルでの周知やeラーニング、動画コンテンツを取り入れることで、多忙な社員にもアクセスしやすく、内容を繰り返し確認できるメリットがあります。
また、従業員の声を反映する体制を整備することも重要です。アンケートや意見箱、匿名フィードバックなどを通じて、周囲に反する行動や疑問点を可視化する仕組みを構築すれば、組織としての健全性を高めることができます。社員一人ひとりが精神的にも安心して働ける環境づくりは、企業全体の信頼性向上にもつながります。
ハラスメント防止のための具体的な対策
ハラスメントを未然に防ぐためには、方針や制度の整備だけでなく、日常の業務に根付いた具体的な対策が求められます。現場でのコミュニケーション、教育研修の実施、そして信頼できる相談体制の構築は、どの企業においても基本かつ重要な取り組みです。
本章では、実際に職場で取り入れることができる効果的な対策について、現場の運用を意識しながら解説します。
職場内のコミュニケーションの重要性
ハラスメントの予防には、職場内の良好なコミュニケーションが欠かせません。円滑な人間関係が構築されていない環境では、小さな誤解や不満が大きな問題に発展する可能性があります。そのため、定期的なチームミーティングを実施し、業務や日常の課題についてオープンに意見を交わす場をつくることが重要です。
上司・部下間の信頼構築とフィードバック文化の浸透
また、上司・部下間の信頼関係を築くことは、安心して意見や悩みを伝え合える土台となります。フィードバックの文化を根付かせ、「指摘=否定」ではなく、「改善のための対話」として捉えられる社内風土の育成が求められます。
特に、同じチーム内で働く上司や同僚とのつながりは、従業員の安心感やモチベーションを支える重要な要素です。職場内のコミュニケーション環境を整備することは、ハラスメントの未然防止だけでなく、業務効率や人材定着にもつながります。
コミュニケーション活性化に向けた具体な取り組み
職場内の対話を促すために、以下のような取り組みが効果的です。こうした小さな積み重ねが、風通しの良い組織づくりにつながります。
- 1on1ミーティングの定期実施
上司と部下が月に1回、業務以外も含めて話せる場を設ける - 「声かけタイム」の導入
毎朝や週の始まりに、簡単な近況共有や雑談タイムを数分取り入れる - フィードバック研修の実施
指摘の仕方・受け止め方を学ぶ機会を定期的に設ける - 感謝を伝える文化づくり
「ありがとうカード」や「称賛掲示板」など、ポジティブな声かけを可視化する - チーム内アンケートの導入
簡易なアンケートで、日々の人間関係や業務上の不安を拾い上げる
社員教育と研修の実施
社員教育と研修は、ハラスメント防止の土台となる施策です。すべての従業員を対象に、定期的に研修を実施することで、ハラスメントの定義や事例、対応策への理解を深めることができます。人事や管理職だけでなく、現場スタッフやアルバイトも含めた全体への周知が必要です。
研修プログラムは、ただ受けるだけではなく、日々の業務に活かせるように設計することが大切です。たとえば、ロールプレイ形式でのシミュレーションや、実際の業務に即したケーススタディを交えた内容にすることで、参加者の理解度や納得感が高まります。
さらに、外部講師によるセミナーや、専門機関が発行する資格講座の受講を促すことで、より高度な知識や対応スキルを身につけることも可能です。これにより、従業員一人ひとりが自らの行動を見直し、ハラスメントのリスクに対して敏感になる職場づくりが実現します。
相談窓口の設置とその方法
社内に相談窓口を設置することは、ハラスメント防止の実効性を高めるうえで極めて重要です。まず、相談者が安心して声を上げられるように、匿名での相談が可能な仕組みを整備しましょう。これにより、「報復が怖くて話せない」といった心理的な障壁を取り除くことができます。
相談窓口の情報は、全従業員に対して明確に周知されていることが重要です。例えば、社内ポータルサイトやパンフレット、休憩室の掲示など、複数のチャネルを活用してアクセス方法を案内します。また、相談方法がわかりやすく説明されている専用ページを社内ネット上に設けると、利用促進にもつながります。
対応手順については、あらかじめ標準化されたフローを定めておくことで、相談を受けた後の処理が迅速かつ公平に行えるようになります。必要に応じて外部機関への委託や、電話での相談受付にも対応できる体制を整備することで、より信頼性の高いサポートが可能になります。
リモートワーク時代におけるハラスメント防止策
テレワークや在宅勤務といった柔軟な働き方が定着する一方で、オンライン環境ならではの新たなハラスメントリスクも浮上しています。直接顔を合わせないことによる誤解や孤立感、無意識な言動によるストレスなど、対面とは異なる課題への対応が求められています。
本章では、リモートワーク環境におけるハラスメントの特徴と、それに対応するための具体的な防止策について解説します。
オンラインでのハラスメントとは?
テレワークや在宅勤務が浸透する中で、ハラスメントの形も多様化しています。対面でのやり取りが減少した一方で、オンライン上での会話や文章が、知らず知らずのうちに相手に不快感やストレスを与えているケースが増えています。
よくあるオンラインハラスメントの例
たとえば、Web会議中に特定の従業員を頻繁に遮る、背景や服装について冗談交じりに指摘する、カメラを常時オンにするよう強要するといった行為は、受け手によってはハラスメントと受け取られる可能性があります。また、出勤していないことを理由に過剰な業務を割り振る、報連相の遅れを一方的に責めるといったケースも注意が必要です。
オンライン環境では、相手の表情や声のトーンが把握しづらく、意図しない誤解が生じやすくなります。企業としては、こうした新しい職場環境に合わせたハラスメントの定義や対応方針を明確にすることが求められています。
テレワークにおけるコミュニケーションルールの整備
リモートワーク下では、コミュニケーションの量と質がハラスメント防止に大きく関わります。業務の進捗確認や指示・連絡がすべてテキストや短時間の会話で行われる環境では、意図の伝わり方にズレが生じやすいため、ルールの明文化が欠かせません。
具体的には、次のようなルール整備が効果的です。
- Web会議のルール:発言順や時間配分の工夫、参加者全員の発言機会の確保
- 勤務時間内の連絡対応ルール:緊急時以外は就業時間内に連絡するなど
- フィードバックの方法とトーンのガイドライン:指摘は事実ベースで、相手を尊重した表現に
また、マネージャー層には、定期的な1on1やチームの雑談時間を設けるなど、孤立を防ぐ工夫も必要です。ルールは一度作って終わりではなく、現場の声を反映しながら柔軟に更新していく姿勢が重要です。
チャット・メールの利用マナーと相談体制の強化
チャットやメールといったテキストコミュニケーションの活用が増える一方で、その文面によるトラブルも顕在化しています。短文での指示や感情のこもらない返信は、相手に冷たい印象を与えたり、過度なプレッシャーを感じさせたりする可能性があります。
そのため、企業としては以下のようなマナーや対応策を整備しておくと安心です。
- 絵文字や敬語の使い方に関する社内ルール
- 時間帯・頻度を配慮したメッセージ送信の習慣づけ
- チャット対応のトーンに関する教育機会の提供
さらに、テレワーク特有のストレスやハラスメントの兆候を早期に発見するためには、匿名でのオンライン相談窓口の設置や、定期的なアンケートによる実態把握が有効です。外部機関との連携によるモニタリング体制の導入も、透明性と信頼性を高める手段として注目されています。
ハラスメント発生時の適切な対応
ハラスメントは、たとえ予防策を講じていたとしても、完全に防ぎきれない場合があります。そのため、問題が発生した際にいかに適切かつ迅速に対応できるかが、組織の信頼性を左右する大きなポイントとなります。
本章では、事実確認の進め方から、被害者や加害者への具体的な対応方法まで、ハラスメント発生時に企業が取るべき基本的な対応手順を解説します。
迅速かつ適切な事実確認の手順
ハラスメントが疑われる事案が発生した際には、迅速かつ正確な事実確認が最優先事項です。初動が遅れることで、当事者の不安や不信感が強まり、状況の悪化を招く恐れがあります。そのため、あらかじめ事実確認の手順やルールを明文化しておくことが不可欠です。
まずは、関係者からの聞き取り調査を丁寧に行い、発言や行為の内容、日時、状況などを明らかにします。主観的な感情だけでなく、客観的な証拠や記録を集めることが、正しい判断を行ううえで重要です。必要に応じて第三者を交えた中立的な調査体制を整えることも有効です。
判断基準についても明確にしておくことで、類似事案への対応に一貫性を持たせることができます。確認すべき項目が具体的に整理されていると、社内対応のスピードと正確性が向上し、被害者・加害者双方に対して公平な対応が可能になります。
被害者へのフォローアップ
事実確認の結果、ハラスメントが発生していたことが明らかになった場合には、被害者への対応を丁寧に行うことが求められます。単に事案を処理して終わりにせず、その後の継続的なサポートを通じて信頼回復を図る姿勢が大切です。
具体的には、状況に応じて産業医との連携やカウンセリングの提供、勤務場所や担当業務の一時的な調整などを行い、安心して働ける環境を整備します。精神的なダメージが大きい場合には、医療機関との連携によるフォローも視野に入れるべきです。
また、被害者の個人情報の取扱いには細心の注意を払い、第三者に内容が漏洩することのないよう管理体制を強化しましょう。再発防止の観点からは、本人の意向も踏まえた対応策の策定が有効です。再び同様の行為が起きないよう、職場全体への周知や対策の強化が必要です。
加害者への処分とその影響
ハラスメントの事実が確認された場合には、加害者に対して適切な処分を行う必要があります。処分の内容は行為の重大性や影響の範囲に応じて判断されるべきであり、そのプロセスには公平性と透明性が求められます。
主な処分の種類と運用上の留意点
具体的な措置としては、口頭での注意や厳重注意、減給、降格、懲戒解雇などがあり、社内規程に従って正しく選定することが重要です。加害者に対して明確な理由と処分内容を伝えることで、事案の重大性を自覚させるとともに、再発の抑止力にもつながります。
一方で、処分が加害者のキャリアや評価に与える影響は少なくありません。過度に厳しい対応は逆に法的リスクを生む可能性もあるため、当事者の事情や職務状況などを十分に考慮した上で、適切なバランスを取ることが大切です。処分の後も状況を継続的に観察し、職場内での摩擦や混乱が起きないよう配慮する必要があります。公正な対応を貫くことで、組織としての信頼性を守ることができます。
ハラスメント防止のためにできること
ハラスメントの防止は、企業としてのルール整備や処分対応だけでは実現できません。日々の職場の空気や、人と人との関係性、そして従業員一人ひとりの意識と行動が密接に関わっており、「何があってもハラスメントが起きにくい環境」をつくることこそが、真の予防策と言えるでしょう。
本章では、組織としてできる取り組みに加え、社員一人ひとりが日常の中で意識すべきポイントについても詳しく解説します。開かれた対話の文化、個々の行動の見直し、職場全体のコミュニケーションの質の向上、心理的安全性の確保、そしてストレスやメンタルヘルスへの配慮――。これらを通じて、ハラスメントが生じにくい健全な組織文化を構築するための実践的なアプローチを紹介していきます。
開かれた対話と声を上げやすい環境づくり
ハラスメントを未然に防止するには、職場全体に「対話が尊重される文化」を根づかせることが不可欠です。単に発言の機会があるだけでは不十分であり、多様な価値観や意見を受け入れ、建設的なやり取りができる環境づくりが求められます。
対話を活性化する工夫と取り組み例
そのための第一歩として、社員が気兼ねなく意見を共有できる場を定期的に設けることが効果的です。具体的には、テーマ別のワークショップや少人数の意見交換ミーティングなどが挙げられます。業務に直結しない「雑談の時間」や「感謝を伝える時間」などを設ける企業もあり、こうした柔らかいコミュニケーションの場が信頼構築につながります。
また、職場内にハラスメントに関する情報をまとめたパンフレットの配布や、社内ポータルへのコラム掲載も有効です。具体的な行動指針や相談窓口の情報を明記することで、社員の理解促進と早期相談への導線を整えることができます。こうした継続的な啓発の流れを講じることは、社員の健康と安心を守るうえで非常に重要な取り組みです。
従業員ができるハラスメント防止策
ハラスメントの防止は、組織の施策だけでなく、従業員一人ひとりの意識と行動に深く関わっています。自らの言動が周囲にどのような影響を与えているか、日常の中で振り返る習慣を持つことが、リスク回避の第一歩です。
注意すべき言動と日常の心がけ
たとえば、軽い冗談や内輪のノリが、相手にとっては不快であったり、人格を傷つける結果になることもあります。そうした行動を防ぐためには、職場のルールやポリシーをしっかりと理解し、遵守する姿勢が求められます。特に、プライバシーへの配慮は重要なポイントです。相手の家庭環境や個人的な事情に無遠慮に踏み込むような行為は、たとえ悪意がなくてもトラブルの原因となり得ます。
また、周囲で問題を感じたときには見て見ぬふりをせず、信頼できる窓口に相談する・注意を促すといった行動をとることも、組織全体の安全性を高める一助となります。こうした一人ひとりの取り組みが、健全な労務環境と人間関係をつくり、結果としてハラスメントの抑止につながるのです。
ハラスメント防止に向けた行動チェックリスト
以下のようなポイントを、日常的に意識してみましょう。このような行動の積み重ねが、信頼される職場づくりにつながります。
- 発言や態度が「誰かを不快にさせていないか」振り返っているか
- 相手の価値観や立場を尊重して接しているか
- プライベートな話題に踏み込みすぎていないか
- 職場のルールやマナーについて理解しているか
- 周囲で困っている人を見かけたときに、声をかける姿勢があるか
- 問題を感じたときに、相談や報告ができるよう意識しているか
心理的安全性を高めるコミュニケーションの仕組み
小さな違和感を拾う日常の会話づくり
ハラスメントの多くは、「小さな違和感の見逃し」から始まります。その違和感を早期に拾い上げ、対話に変えることができる職場は、トラブルの発生そのものを未然に防ぐ力を持っています。だからこそ、コミュニケーションの活性化は、最も有効な予防策の一つといえます。
具体的には、発言しやすい雰囲気を意識的に整えることが重要です。上司やリーダーが率先してオープンな姿勢を見せ、「どんな意見もまずは受け止める」という態度を示すことで、部下や同僚も自然と発言しやすくなります。加えて、定期的なチームミーティングや1on1ミーティングを通じて、業務に直接関係しないことも含めて話せる関係性を築くと、心理的な壁が大きく下がります。
また、こうした取り組みと連動して、メンタルヘルスへの配慮も欠かせません。たとえば、月1回の「心の健康チェック」や「感情の共有タイム」を設けることで、従業員の状態を把握しやすくなり、職場の信頼や安心感の醸成にもつながります。
発言の安心感を育てる「心理的安全性」の土壌づくり
どれだけコミュニケーションの場を設けても、心理的に「発言しても大丈夫」と感じられなければ、実質的な対話は生まれません。心理的安全性とは、自分の意見や感情を発信しても非難されたり不利益を被ったりしないと信じられる状態のことです。この安全性の有無が、職場の信頼関係を大きく左右します。
心理的安全性を高めるには、まず管理職が「傾聴・共感・承認」の姿勢を明確に持つことが不可欠です。たとえば、上司が「否定しない」「最後まで話を聞く」「ありがとうと伝える」といった基本的な行動を積み重ねることで、職場全体に発言しやすい空気が生まれます。
信頼関係を深めるルールと習慣
職場内での信頼感を育てるために、具体的なルールづくりも効果的です。たとえば、会議やチームミーティングにおいて「一人1回は発言する」「否定的な表現は禁止」といった明確なルールを設けることで、従業員の安心感が高まります。
このような文化の土壌が育つことで、従業員は自ら課題に向き合い、積極的に行動するようになります。結果として、ハラスメントの芽を早期に摘み取ることができ、再発防止にもつながります。
メンタルヘルス支援とストレスケアを通じた予防施策
ストレスの蓄積は、ハラスメントの被害者にも加害者にも共通するリスク要因です。とくに、ストレスをうまく認識・発散できない職場では、感情的な衝突や攻撃的な言動が起こりやすくなります。そのため、組織的なメンタルヘルス支援とストレスケアの仕組みを導入することが予防施策として重要です。
メンタルヘルス支援における企業の取り組み
企業として取り組むべき施策には、産業医やカウンセラーとの連携による相談体制の整備、ストレスチェックの定期実施、さらにはストレスマネジメント研修の提供などが挙げられます。こうした支援が整っていれば、従業員は早い段階で自らの不調に気づき、深刻な状態になる前に対処できるようになります。
加えて、職場全体で「お互いの変化に気づき合える文化」を育てることも重要です。チーム内で「最近元気がないように見える」などと声をかけ合える関係性があれば、孤立やすれ違いによるハラスメントの芽を摘むことができます。こうしたメンタルヘルス支援の仕組みは、単なるリスク対策ではなく、長期的には生産性向上や人材定着にも寄与する、組織にとって非常に価値のある投資といえます。

制度だけではハラスメントは防げません。現場の対話力や信頼関係の構築こそが、予防のカギとなります。従業員の意識を高め、風通しの良い職場をつくるための研修をご提案しています。まずはお気軽にご相談ください。
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ハラスメント防止策の効果検証
ハラスメント防止策は、制度を導入すること自体がゴールではありません。むしろ重要なのは、それらの施策が実際に職場でどれだけ機能しているかを定期的に検証し、必要に応じて改善していくプロセスです。現場の声を拾い上げ、制度の運用状況を客観的に評価することによって、対策の実効性は高まり、より安心して働ける環境づくりへとつながります。
本章では、調査やアンケートによるフィードバックの収集方法と、実施後の評価・改善に向けた具体的な取り組みについて解説します。
心理的安全性を高めるコミュニケーションの仕組み
ハラスメント防止策は導入して終わりではなく、その「効果をどのように検証するか」が次の重要なステップです。対策の有効性を客観的に評価し、実際の職場に根づいているかどうかを把握するには、定期的な調査やアンケートによるフィードバックの収集が不可欠です。
アンケートの設計と活用のポイント
まず、年に1〜2回を目安に従業員向けのハラスメントに関する意識調査を実施しましょう。この際には、匿名性を確保した設問設計がポイントになります。誰が回答したかが特定されない仕組みを整えることで、より正直な声を集めることができ、「言いにくいけれど重要な情報」が浮かび上がってくる可能性が高まります。
アンケートで収集した情報は、個別対応に活用するだけでなく、社内全体への周知・資料化にもつなげることで、組織全体の意識向上につながります。たとえば、「○%の従業員が相談窓口の場所を知らなかった」といった結果を公開することで、改善の必要性を社内全体で共有しやすくなります。
さらに、調査結果をもとに採用活動や教育計画の見直し、社内メディアを活用した発信など、組織全体の運用改善にも波及効果が期待できます。こうした継続的なフィードバックの仕組みがあることで、形だけの制度にとどまらない、実効性のある対策が構築されていきます。
実施後の改善点の洗い出し
防止策の運用開始後は、その効果を評価し、どこがうまく機能していて、どこに課題があるのかを明確化する作業が必要です。この段階で重要なのが、フィードバックだけでなく「評価の基準」をあらかじめ設けておくことです。
評価の基準と見るべきポイント
たとえば、「相談件数の増減」「従業員満足度の変化」「対応までのスピード」といった定量的なデータに加え、「実際に行動が変化しているかどうか」といった定性的な視点も含めて検討しましょう。改善の対象が明確になれば、次に取るべき施策も具体的になります。
加えて、事後の見直しは一度で完結するものではありません。定期的に改善点を洗い出し、必要に応じて制度の改正・整備を進めていくことが、効果の維持・向上に直結します。社内の実態や時代の変化に応じてフレキシブルに対応できる仕組みを持っておくことが、対策の強化につながります。
外部リソースの活用
ハラスメント対策を効果的に進めるためには、社内の取り組みに加えて外部の専門的なリソースを活用する視点が欠かせません。法律や制度の変化に対応しながら、従業員が安心して働ける環境を整えるには、専門家の知見や外部相談窓口のような第三者的な仕組みが大きな力となります。
本章では、コンサルティングの導入や相談体制の外部委託といった具体的な方法を通じて、社内対策の質をさらに高めるためのポイントを解説します。
専門家によるコンサルティングの利点
ハラスメント防止対策をより実効性のあるものにするためには、社内だけで完結させず、外部の専門家によるコンサルティングを活用することが非常に有効です。法律や労務管理の知識を持つ弁護士や社労士などの専門家は、実務的なアドバイスに加え、企業が見落としがちなリスクに気づかせてくれる存在です。
法的リスクの軽減と体制の整備
例えば、厚生労働省の指針や裁判例を踏まえたハラスメントの定義や最新の規制について、的確な解説を受けることで、企業としての対策が法的に優位な立場に立てるよう整備できます。自社の対応状況が現行の法制度に即しているかを確認する意味でも、定期的な見直しや監査の一環として外部協力を取り入れる価値は高いでしょう。
社員への働きかけと企業の信頼性向上
また、専門家による社内セミナーやコラムの配信、実務に役立つチェックリストの提供などを通じて、社員の意識改革を後押しすることも可能です。中立的な第三者による指導が入ることで、従業員の信頼感が高まり、社内の理解と協力が得やすくなるというメリットもあります。
さらに、ハラスメント対策に特化した資格を持つ専門家を選ぶことで、より実践的なノウハウを取得しやすくなります。取引先や業界関係者への説明においても、専門家の関与は「本気で対策に取り組んでいる企業」としての評価につながることがあります。
ハラスメント相談窓口の外部委託
社内の相談窓口だけでは対応が難しい、あるいは「社内では相談しにくい」という心理的ハードルがある場合には、外部の相談窓口を委託する方法が有効です。この仕組みを導入することで、従業員がより安心して相談できる環境を整えることができます。
外部窓口のメリットと信頼性
外部窓口の利点としては、まずプライバシーが確実に保護される点が挙げられます。相談者の所属部署や個人情報が社内に知られる心配がなくなるため、不当な扱いや人間関係の悪化を恐れて声を上げられなかった従業員にも配慮が行き届く体制を構築できます。
さらに、委託先は多くの場合、厚生労働省のガイドラインに則った対応フローを構築しているため、相談を受けたあとの初動対応や記録の取り扱いも信頼性が高く、企業側の業務上の負担も大きく軽減されます。
導入方法と社内への周知
オンライン相談への対応も進んでおり、メール・チャット・専用フォームを活用した窓口の設置も容易です。これにより、社員は時間や場所を問わずアクセスでき、ハラスメントへの早期対応が可能となります。社内ポータルサイトに相談ページへのリンクを掲載する、パンフレットにQRコードを付けるなどの工夫で利用促進を図ることも効果的です。
また、外部委託の取り組みを社内外に公開することで、企業としての透明性や誠実な対応姿勢を示すことができるため、組織の信頼性向上にもつながります。

制度づくりや研修の設計、相談体制の整備など、ハラスメント対策には多角的な視点が必要です。貴社の課題や状況にあわせて、伴走型での支援をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
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企業が知っておくべき法律相談の重要性
ハラスメントに関するトラブルは、企業の reputational risk(評判リスク)だけでなく、法的なリスクにも直結します。万が一の際に適切に対応できる体制を整えておくためには、法律の専門家との連携や相談体制の構築が不可欠です。日常的な対策だけでなく、緊急時の初動や文書対応まで、専門的な視点を取り入れることで、対応の正確性と公平性が格段に向上します。
本章では、トラブル発生時に求められる法的対応と、信頼できる専門家への相談の進め方について解説します。
トラブル発生時の法的アドバイスの必要性
ハラスメントが発生した場合、企業として求められるのは迅速かつ適切な対応です。その対応の成否が、当事者の信頼や職場の風土、さらには企業の社会的評価に大きな影響を及ぼすことになります。こうした事態に直面した際、弁護士などの法律の専門家に相談することは不可欠です。
特に、事案が業務上のトラブルや雇用に関わる問題に該当する場合には、労働法や民法などの規定に沿った判断が求められます。例えば、懲戒処分を行う際の法的な要件や、被害者・加害者双方への対応方法、記録として残すべき文書の内容など、企業独自での判断ではリスクが伴う場面が多くあります。
予防策としての法的チェックの活用
また、事後対応に限らず、未然防止の観点でも法的助言は有効です。ハラスメント防止規程の整備や、相談窓口の運用ルールを社内で共有する際にも、文書作成時の注意点や記載内容についての法的チェックを受けておくことで、トラブルに強い制度設計が可能になります。
近年では、自治体や商工会議所、業界団体などが提供する無料の法律相談窓口や、オンラインでの相談支援サービスも活用しやすくなっています。自社だけで判断せず、第三者の意見を適切に取り入れる体制を構築することが、危機管理の第一歩です。
専門家への相談先とその活用方法
法律相談を効果的に活用するためには、信頼できる専門家や情報源を見極め、継続的に関係を築くことが大切です。相談相手としては、企業法務に強い弁護士や社会保険労務士のほか、厚生労働省や地方自治体が運営する支援センター、業界団体による相談サービスなどがあります。
これらの相談先は、それぞれに特化したノウハウや支援制度を持っており、自社の状況に応じて適切な知識や資料を得ることが可能です。特に、最新の法改正や判例情報を持つ専門家の指導を受けることで、社内制度の整備や従業員への教育にも説得力を持たせることができます。
効果的な相談の進め方と連携の工夫
また、相談の効果を高めるためには、事前に質問内容や相談の背景を整理しておくことがポイントです。「どのような場面で」「誰が」「どのような対応に困っているのか」を明確にしておくことで、専門家の助言もより具体的かつ実践的なものとなります。
さらに、社内だけでなく、取引先や関係会社と協力して研修や相談の機会を設ける方法も有効です。合同での研修会や勉強会を通じて、外部リソースを共有し、対策レベルを業界全体で底上げする取り組みは、信頼性の高い職場づくりにもつながります。
まとめ
ハラスメント対策は、制度の整備や一時的な研修だけで実現できるものではありません。重要なのは、企業が「ハラスメントを許さない」という明確な方針を掲げ、それを職場全体に根づかせていく取り組みを継続的に行うことです。
本記事で紹介したように、防止策の柱となるのは、法令への対応、日常のコミュニケーション、教育体制、相談体制の構築、そして何よりも「安心して声を上げられる企業文化」の醸成です。さらに、リモートワークや多様な働き方が広がる現代においては、オンライン特有の課題にも対応できる柔軟な姿勢が欠かせません。
中小企業にとっても、取り組みの規模や方法は様々あれど、できることから一歩ずつ始めることが大切です。一人ひとりの意識と行動、そして企業としての責任ある対応が、安心して働ける職場づくりの土台となります。
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監修者情報

ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ
中井 美沙
株式会社アクシアエージェンシー新卒入社。求人広告営業として大手中小企業の採用活動に携わる。2020年人事コンサルティング会社へ出向し研修企画実施や人事評価制度運営などに従事。2022年に研修開発部立ち上げに参加。人事部と兼務しながら社内の人材育成、人事評価制度運用、人事面談、社内外の研修企画実施などに従事。国家資格キャリアコンサルタント取得。株式会社アナザーヒストリー プロコーチ養成コーチングスクール修了。