若手社員の早期離職や定着率の低さは、多くの企業にとって解決すべき大きな課題です。特にZ世代と呼ばれる人たちは、これまでの世代とは異なる価値観や仕事観を持ち、従来の方法だけではうまく接しきれないことも増えています。インターネットやSNSの普及を背景に、多様な情報や選択肢に触れてきたZ世代は、働き方や企業に対してよりシビアで柔軟な判断を行う傾向があります。
この記事では、Z世代の特徴や価値観を整理したうえで、企業がどのように育成やマネジメントに取り組めばよいのかを具体的に解説します。若手社員の定着と活躍を実現するための視点を持つことは、これからの人材戦略に欠かせません。

Z世代とは?会社が理解すべき世代像

近年、企業の現場では「Z世代」と呼ばれる若手社員の存在感が増してきています。しかし、上司世代とは異なる価値観や行動スタイルを持つことから、指導や育成がうまくいかず、戸惑いを感じている人事担当者や管理職も少なくありません。Z世代を理解し、その背景や特徴を知ることは、若手の早期離職を防ぎ、長く活躍できる環境を整えるうえで不可欠です。

この章では、まずZ世代の定義や該当する年齢層を明確にし、彼らが育った時代背景、そして他の世代との仕事観の違いについて整理します。世代を知ることは、対話や育成の第一歩となります。

Z世代の定義と該当年齢層

Z世代とは、一般的に1997年から2012年頃に生まれた世代を指します。2025年現在では、おおよそ13歳から28歳前後の年齢層が該当します。2025年時点で企業に在籍している新卒入社の若手社員や、入社3〜5年目の中堅層に差しかかる若手社員が多く含まれます。高卒・専門卒・短大卒・大学卒など学歴に関わらず、企業で働く20代の多くがZ世代にあたります。

Z世代の直前に生まれたのが「ミレニアル世代(1981年〜1996年生まれ)」であり、彼らとは育った時代背景や価値観に違いがあります。例えば、ミレニアル世代は成長期にIT技術の発展を体験した「デジタル移行世代」である一方、Z世代は物心ついたときからスマートフォンやSNSが身近にあった**「生まれながらのデジタルネイティブ」**です。

このように、同じ若者といっても世代ごとに感じ方や考え方が異なります。企業としてZ世代の定義とその特徴を明確に理解することが、彼らとの効果的な関わり方や育成方針を考えるうえでの第一歩となります。

Z世代が育った社会・時代背景

Z世代が育ってきた背景には、急速な技術革新とともに、さまざまな社会的・文化的な変化があります。たとえば、幼少期からインターネットやスマートフォンが当たり前の存在であり、SNSを通じて情報収集やコミュニケーションを行うことが日常でした。

また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災、さらには新型コロナウイルスの流行といった大きな社会変化を経験しており、将来への不安や不確実性を感じながら育ってきた世代ともいえます。加えて、環境問題やジェンダー、ダイバーシティなど、社会課題に敏感な価値観を持つこともZ世代の特徴です。

このような時代背景により、Z世代は安定を求めながらも「自分らしく働きたい」「社会に意味のある貢献をしたい」といった新しい価値観を形成しています。こうした背景を理解することが、企業にとってZ世代と信頼関係を築く第一歩になります。

他世代との価値観の違いと仕事観ギャップ

企業の中には、ミレニアル世代や団塊ジュニア世代など、複数の世代が共存しています。その中で、Z世代は特に「働く意味」や「働き方」に対する考え方が、これまでの世代と大きく異なります。

たとえば、上の世代が「会社に貢献して評価されること」を重視する傾向があるのに対して、Z世代は「自分の人生を充実させる手段としての仕事」「自分の価値観に合った働き方」を重視する傾向があります。また、「飲み会」や「対面の雑談」といったコミュニケーションのスタイルにも価値を感じにくく、プライベートの時間を大切にする傾向が強いです。このような価値観の違いから、育成担当者や管理職との間で**「何を考えているのかわからない」**というすれ違いが起きることがあります。しかし、それはZ世代がわがままというわけではなく、彼らが育った時代背景と価値観の変化によるものです。まずは、世代ごとの違いを知り、ギャップを受け止める姿勢が求められます。

Z世代の価値観と仕事に対する考え方

Z世代は、これまでの世代と比較して、仕事に対する価値観や捉え方が大きく異なると言われています。ただ安定した職場に勤めることを望むのではなく、「自分らしさを活かせること」「社会とポジティブな関係を築けること」「働き方の自由度があること」など、多面的な要素を重視する傾向が見られます。

企業がZ世代と向き合う際には、彼らの価値観や背景を理解しないまま従来の方法で指導しようとすると、すれ違いや早期離職を招くおそれがあります。一方で、Z世代ならではの考え方を尊重し、うまく取り入れていくことで、組織の活性化やイノベーションにつながる可能性も広がります。

この章では、Z世代の安定志向とキャリア形成への関心、社会課題に対する意識の高さ、そしてデジタルネイティブとしての特性について、より具体的に解説します。

安定志向とキャリアアップ意識

Z世代は、リーマンショックやパンデミックといった経済・社会の不安定さを幼少期から目の当たりにしてきた世代です。そのため、「安定した職に就きたい」という思いを強く持っています。たとえば、公務員や大手企業への志向が根強いのも、収入の安定や雇用の持続性を重視する姿勢の表れです。

しかし同時に、Z世代は「ただ安定していれば良い」とは考えていません。彼らにとっての安定とは、自分が納得できるペースでスキルを高め、将来への選択肢を広げられることも含まれます。企業内で評価されるだけでなく、自分の市場価値を高めたいという意識も強く、定期的に転職サイトをチェックしたり、副業や自己学習を通じてキャリアの選択肢を広げる行動も見られます。

転職も、かつてのような「不満の結果」ではなく、自分らしい働き方を模索する前向きな選択と捉えられる傾向があります。企業としては、スキルアップの機会や明確なキャリアパスの提示、柔軟な働き方への配慮などを通じて、「この会社にいた方が成長できる」と感じてもらう工夫が求められます。

多様性と社会問題への関心

Z世代は、多様性や公平性を重視する意識が非常に高い世代です。性別、国籍、宗教、障害、性的指向といった違いに対して、偏見なく接する姿勢が自然に身についており、そうした価値観を共有できる職場を求める傾向があります。これは、インターネットやSNSを通じて世界中の人々と日常的につながり、多様な考え方に触れてきたことが大きな背景にあります。

また、環境問題や人権問題など、社会課題への関心も強く、企業がどのような姿勢でこれらのテーマに取り組んでいるかは、就職・定着を左右する要素になりつつあります。たとえば、SDGsやESG投資といった言葉にも自然と親しんでおり、企業の透明性や社会貢献度を重視する姿勢が特徴的です。Z世代にとって、企業の社会的責任(CSR)は「取り組み姿勢が見えるかどうか」は「どこで働くか」「どこに所属するか」を決める基準のひとつです。そのため、企業側がDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を重視した組織文化をつくり、環境や社会に配慮した行動を積極的に発信していくことが、Z世代からの信頼獲得につながります。

デジタルネイティブとしての特性

Z世代は、生まれたときからデジタル技術が身近にある環境で育った、いわゆる「デジタルネイティブ」です。パソコンやスマートフォンはもちろん、タブレットやAIツールなども自在に使いこなし、調べものは検索エンジン、情報発信はSNSが基本という感覚を持っています。

こうした特性から、仕事においてもデジタルツールを積極的に活用する傾向があり、業務の効率化や省力化を当たり前のように求める傾向があります。たとえば、マニュアルが紙でしか存在しない、社内申請がすべて対面や手書き、といったアナログな環境は、Z世代にとって「非効率で古い」と感じられることがあります。

一方で、Z世代は新しいツールの導入や運用をスムーズに行える素地を持っているため、企業がうまくそのスキルを活かせば、全体の業務改善やイノベーション推進のきっかけにもなり得ます。たとえば、業務改善プロジェクトにZ世代の社員を参画させたり、新ツールのテスト運用を任せるなど、彼らの強みを活かす設計も有効です。

企業がZ世代の“当たり前”を理解し、彼らの視点を柔軟に取り入れることで、組織全体の変化や進化を加速させる可能性が広がるでしょう。

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Z世代が求める職場環境と働き方

Z世代の登場によって、働き方に対する価値観や職場環境の理想像が大きく変わりつつあります。かつては「安定して長く働けること」や「企業への忠誠心」が重視されていた時代もありましたが、Z世代にとってはそれだけでは十分ではありません。ワークライフバランスの実現、柔軟な働き方の選択肢、そしてフラットでオープンな人間関係といった要素が、より重要視されています。

これは、Z世代が生まれた時からインターネットやSNSと共に成長し、常に「多様な価値観」や「選択肢の広さ」に触れてきたことが背景にあります。そうした環境の中で育った彼らにとって、「組織が用意したルールに無条件で従う」という発想は通用しにくくなっており、納得感や対等性がなければモチベーションを維持することが難しいのです。

この章では、Z世代が企業に期待している職場環境や働き方について、3つの観点から詳しく解説していきます。若手社員の定着や活躍に課題を感じている企業こそ、ここで紹介するポイントを押さえておくことが、今後の人材戦略において大きな意味を持つはずです。

ワークライフバランスの重視

Z世代が職場を選ぶ際に重視する条件のひとつが、「ワークライフバランスのとりやすさ」です。これは単なる「楽をしたい」という希望ではなく、私生活を大切にしながら働くことで、長期的に健康的かつ高いパフォーマンスを維持したいという合理的な考え方に基づいています。

たとえば、「プライベートの時間が十分に確保できない」「オンとオフの切り替えが難しい」といった環境に置かれると、Z世代は早期に見切りをつけ、より自分に合った働き方ができる企業へと転職を検討し始めます。つまり、ワークライフバランスの充実は、企業にとって離職防止のための重要な戦略となり得るのです。

実際には、残業削減だけでなく、有給休暇の取得促進やフレキシブルな勤務スケジュールの導入、ストレスマネジメント支援などが効果的です。さらには、上司が「休むこと=悪いこと」という意識を改めるなど、職場全体の文化としてワークライフバランスを肯定する空気を醸成することも欠かせません。

Z世代にとって、仕事と生活は切り離されたものではなく、相互に影響し合う一体的なものとして捉えられています。そのため、「働き続けられる環境かどうか」は、採用時だけでなく定着の段階でも継続的に評価されている点を意識する必要があります。

フレキシブルな勤務形態のニーズ

Z世代は、時間や場所に縛られない働き方に強い関心を示しています。固定的な勤務時間や出社義務といった従来の働き方よりも、自分のペースで効率よく働ける環境に価値を見出しているのです。リモートワークやフレックスタイム制といった制度は、Z世代にとって「あると嬉しい」ではなく、「なければ選ばない」条件になりつつあります。

その背景には、「通勤に時間を取られるのは非効率」「集中しやすい時間帯に働きたい」といった合理性に基づいた考えがあります。特に、プライベートな活動や副業との両立を希望するZ世代にとっては、フレキシブルな勤務形態が、自分らしく働くための前提条件になっているのです。

このような働き方を制度として整えることはもちろん、重要なのは「制度が実際に使えるかどうか」という運用面の柔軟さです。たとえば、リモートワーク制度があっても、上司やチームの雰囲気で使いにくいと感じてしまえば、定着にはつながりません。制度を利用しやすい風土づくりや、管理職の理解促進も不可欠です。加えて、こうした自由な働き方に対しては、成果主義や目標管理といった評価制度の見直しも求められます。「時間ではなく成果で評価する」体制が整っていれば、Z世代は責任を持って自律的に仕事を進める意欲を高めていきます。

オープンで対等なコミュニケーション文化

Z世代は、職場での人間関係やコミュニケーションの質にも非常に敏感です。特に重視されているのが、上下関係に縛られないフラットで対等なコミュニケーション文化です。これは単に「話しやすい雰囲気」であることを指すのではなく、「自分の意見や考えをきちんと受け止めてもらえる」ことへの安心感を意味します。

たとえば、上司が一方的に指示を出すだけの環境では、Z世代は「自分は軽視されている」「会社にとって価値のある存在ではない」と感じてしまいがちです。逆に、定期的なフィードバックがあり、仕事への取り組みが正しく評価されていると実感できれば、高いエンゲージメントと自発的な行動が生まれます。

また、Z世代はSNSやオンラインチャットを日常的に使いこなしているため、気軽でスピーディーな情報共有に慣れています。その一方で、文章のトーンや言葉遣いには敏感な面があり、少しの言い回しの違いで誤解や不信感が生まれることもあります。だからこそ、共感や承認の言葉を意識的に届けるコミュニケーションスキルが上司には求められるのです。

さらに、評価や方針がブラックボックス化している組織では、Z世代の不安や不信感が高まりやすくなります。意思決定の背景や評価基準を共有するなど、情報の透明性を高めることも、心理的安全性の確保に直結します。

Z世代の早期離職の背景と本音

若手社員の離職が早期化する中で、その多くを占めるZ世代の動向に注目が集まっています。入社からわずか数ヶ月、あるいは1年以内での退職は珍しくなく、企業にとっては採用や育成にかけたコストが回収できないまま人材が流出してしまう深刻な課題となっています。

しかし、Z世代が早期に退職を選ぶ背景には、「我慢が足りない」「すぐに辞めたがる」といった表面的な批判では済まされない、価値観や時代背景に根ざした納得感のある理由が存在しています。彼らは、自分自身のキャリアや成長に対して極めて敏感であり、仕事に対する目的意識を持って日々の業務と向き合っています。

この章では、Z世代がなぜ早期に離職を決断するのか、その心理的背景と行動の傾向を探ります。企業として彼らの思考や価値観を正しく理解することが、定着率向上の第一歩になるのです。

転職に前向きな理由と心理

Z世代にとって、転職はネガティブな選択肢ではなく、自分自身の成長や可能性を広げるための前向きな行動です。一つの会社に長く勤めることが美徳とされた従来の価値観とは異なり、「どこで働くか」よりも「どのように成長できるか」を重視する傾向が強まっています。

また、現代は転職市場そのものが活発で、求人サイトやSNSなどを通じて多様な選択肢に日常的にアクセスできる環境があります。そのため、「今の職場に違和感がある」「もっと学べそうな環境がある」と感じた時に、すぐに次の一手を考えることが自然な流れとなっているのです。

特に、企業のビジョンや価値観、自分に任される仕事の内容が、期待していたものと異なっていた場合、早期に見切りをつけて転職を検討する傾向があります。これは「逃げ」ではなく、「自分に合った場所を探す」前向きな行動ととらえるべきです。

企業としては、採用時の情報提供を丁寧に行うと同時に、入社後も一人ひとりの成長欲求に寄り添う環境や制度の整備が重要になります。納得感のあるキャリア形成を支援できるかどうかが、離職の抑制につながるカギとなるのです。

成長実感の有無が離職に直結する理由

Z世代は、自身の成長に対する感度が非常に高い世代です。「今、自分はこの会社でどれだけ成長できているか」「このままここにいて、どんなスキルが身につくのか」を常に問い続けています。この“成長実感”が得られない職場では、早期離職が加速する傾向があります。

たとえば、単純作業や明確な目的の見えにくい業務を長く続けていると、「何のためにこれをやっているのか」「この経験が将来にどうつながるのか」が見えず、不安や不満が蓄積します。また、上司や先輩からのフィードバックが少なかったり、自分の仕事が評価されている実感がなかったりすると、「自分の存在価値が感じられない」と判断し、離職を選ぶケースも少なくありません。

逆に、短期間でも自分の成長が実感できる環境であれば、Z世代は積極的に学び、会社へのロイヤルティも高まりやすくなります。ここで重要なのは、キャリアパスの見える化や、定期的な1on1を通じた成長の確認です。小さな達成をしっかり認め、次のステップを一緒に考える上司の存在は、Z世代にとって非常に心強いものとなります。

企業が若手育成を考える際は、ただ研修を提供するのではなく、それを「本人が成長実感として捉えられる」ような工夫が求められます。

上司や会社への不信感が加速要因に

Z世代の離職理由として、上司や会社への「信頼の欠如」も大きな要因となります。彼らは、自分の価値観や想いを真剣に受け止めてもらえることを求めています。そのため、上司が一方的な指示を出すだけだったり、納得感のない評価が続いたりすると、組織そのものへの信頼を失いやすくなるのです。

また、企業が掲げるミッションや理念と、実際の現場の言動が一致していないと、Z世代は「言っていることとやっていることが違う」と強く違和感を抱きます。とくに、ダイバーシティ推進や働き方改革など、社会的意義をうたっているテーマに対しては、実態とのギャップを厳しくチェックしている傾向があります。

たとえば、評価の根拠が不明瞭だったり、頑張っても正当に認められないと感じた瞬間に、「ここで頑張る意味がない」と判断されてしまうことも。さらに、相談しても聞き流されたり、忙しさを理由に後回しにされるような対応が続くと、「この会社は自分の声を聞く気がない」と不信感が深まります。

こうした不信感が芽生えると、離職の決断は一気に早まります。だからこそ、上司と部下との信頼関係構築は、育成以上に離職防止の鍵となるのです。信頼は一朝一夕に築けるものではないからこそ、日常的な対話の質と頻度を高める取り組みが必要不可欠です。

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Z世代との信頼関係を築くコミュニケーション術

Z世代は、これまでの世代と比べて「働く環境における人間関係」や「コミュニケーションの質」に敏感な世代です。特に、上司や同僚とのやり取りが安心できるかどうかは、日々のモチベーションや離職意向に直結します。いくら待遇や制度が整っていても、職場で信頼関係を築けなければ長く活躍することは難しいのです。

では、Z世代と良好な信頼関係を築くために企業は何を意識すべきなのでしょうか。この章では、具体的なコミュニケーションの手法や注意点を紹介し、日常の中で実践できるヒントをまとめていきます。

定期的なフィードバックと承認の重要性

Z世代は、自分の成長や取り組みがどのように評価されているのかを知ることを重視します。そのため、定期的で具体的なフィードバックが欠かせません。「よかった」「頑張っている」といった曖昧な言葉ではなく、「ここが特に成果につながった」「次はこうするとさらに良い」といった具体的な内容が求められます。

また、Z世代は承認されることで「自分の努力が正しく見てもらえている」と感じ、エンゲージメントが高まります。小さな成功や改善点を積極的に認めることは、自己肯定感を支えるうえで大きな意味を持ちます。承認がないと「見られていない」と感じて意欲を失い、離職意向へと直結するケースも少なくありません。

さらに重要なのは、タイミングの早さです。年に一度の評価面談だけでは不十分であり、1on1や日常のちょっとした声かけを通じて、継続的にフィードバックを行うことが信頼関係につながります。承認はコストがかからず、今すぐ実践できる最も効果的なコミュニケーション手法のひとつなのです。

プライバシーや個の尊重がカギ

Z世代は「個を大切にしてほしい」という意識が強く、プライバシーの扱いにも敏感です。たとえば、本人の同意なくプライベートな話題に踏み込むことや、SNSの利用状況を詮索することは、強い不信感を招く可能性があります。逆に、「個人として尊重されている」と感じられる環境は安心感につながり、信頼関係を深めます。

また、データや個人情報の取り扱いについても注意が必要です。情報の管理がずさんだと「この会社に自分を任せられない」という印象を与えかねません。透明性を持った情報共有や、本人が安心して自己開示できる環境づくりが求められます。

さらに、個人の価値観や働き方に耳を傾ける姿勢も重要です。「なぜその働き方を望むのか」「どんな環境なら力を発揮できるのか」といった背景を理解することで、相手に寄り添った関係を築くことができます。個を尊重する文化を社内に根付かせることこそ、Z世代が安心して長く働ける土台となるのです。

NG対応(押し付け・否定・曖昧な指示)は信頼を損なう

Z世代との信頼関係を築くうえで、避けるべき対応も存在します。代表的なのは、一方的な押し付け、価値観の否定、そして曖昧な指示です。

まず、上司や先輩が自分のやり方を押し付けると、Z世代は「意見を尊重してもらえていない」と感じてしまいます。特に、自分なりの工夫や提案を否定されると、挑戦意欲が一気に下がり、早期離職のきっかけになりやすいのです。彼らは「まず聞いてもらいたい」という思いが強いため、受け止める姿勢を持つことが不可欠です。

また、曖昧な指示も信頼を損なう大きな要因です。「いい感じにやって」「あとで報告して」などの曖昧な表現は、Z世代にとって非常にストレスフルです。なぜなら、彼らは目的やゴールを理解したうえで、自分なりに工夫して成果を出すことを重視しているからです。指示は具体的に、背景や期待も含めて説明することが信頼につながります。

最後に、過度な批判や感情的な叱責もNGです。Z世代は建設的なアドバイスには前向きですが、人格を否定するような言葉や一方的な叱責は「ここでは成長できない」と判断する大きな引き金になります。批判ではなく改善のためのフィードバックを意識することが重要です。

Z世代の定着と育成のために企業ができること

Z世代の定着と育成は、今後の企業成長を左右する大きな課題です。採用コストが高騰し人材獲得競争が激化する中で、せっかく採用した若手が早期に離職してしまうことは企業にとって大きな損失となります。その一方で、Z世代は吸収力が高く、新しい価値観やスキルを職場に持ち込む存在でもあります。彼らをいかに「定着させ」「成長させ」「戦力化していくか」が、企業の競争力の差につながります。

ここでは、早期離職を防ぐオンボーディングの工夫、Z世代向けの育成プログラム設計、そして上司や育成担当者への支援について具体的に解説します。単なる研修の導入にとどまらず、組織全体で若手を支える仕組みづくりが求められます。

早期離職を防ぐオンボーディング施策

Z世代は、入社直後の数ヶ月で「この会社で働き続けられるか」を敏感に判断しています。そのため、オンボーディングの質が定着率を大きく左右します。業務内容やルールを伝えるだけでなく、会社の文化や価値観を理解し、安心して働き始められる体験設計が不可欠です。

具体的には、メンター制度やバディ制度を導入し、日常的に相談できる存在を配置することが効果的です。また、入社後すぐに「自分の役割」や「期待されていること」が明確に伝えられないと、不安や迷いが生じやすくなります。役割の明確化と小さな成功体験の積み重ねが、安心感と成長意欲を高めます。

さらに、オンボーディングは一度きりの研修ではなく、入社後半年〜1年をかけた継続的なプロセスとして設計することが望ましいです。定期的な面談や振り返りを通じて、課題や不安を早期に把握し、支援できる体制を整えることで、Z世代の離職リスクを大幅に軽減できます。

Z世代向け育成プログラム・研修の設計ポイント

Z世代の育成プログラムを設計する際には、従来の集合研修や一律の教育だけでは不十分です。彼らはデジタルに親しんでおり、自分のペースで学べるeラーニングやハイブリッド型研修を高く評価します。動画コンテンツやオンライン教材を活用し、時間や場所に縛られず学べる環境を提供することが効果的です。

また、Z世代は「なぜこの学びが必要なのか」という目的意識を強く求めます。研修の冒頭で、学習内容がキャリアや業務にどうつながるかを明確に示すことで、モチベーションを高めることができます。さらに、知識をインプットするだけでなく、ワークショップ形式やグループディスカッションを取り入れ、実践的にスキルを活用する機会を与えることが重要です。

加えて、成長の実感をサポートするために、研修後のフィードバックや進捗の見える化を仕組み化することも有効です。ゲーム感覚で学習の達成度を確認できる仕組みや、上司からのこまめな承認は、Z世代の学習意欲を大きく引き上げます。

上司・育成担当者への研修も効果的

Z世代を育成するには、若手本人への教育だけでなく、彼らを直接指導する上司や育成担当者への支援も欠かせません。Z世代はフィードバックの頻度や質に敏感であり、上司が旧来型のマネジメントスタイルを続けていると、すぐに不信感が芽生えてしまいます。だからこそ、上司側が世代特性を理解し、適切な指導法を学ぶことが定着と活躍の前提となります。

たとえば、承認の言葉を積極的にかけるトレーニングや、1on1ミーティングの進め方を学ぶ研修は効果的です。また、Z世代の価値観や働き方の特性を理解するワークショップを取り入れることで、上司自身の認識や対応力が高まります。

さらに、育成担当者が孤軍奮闘しないために、社内全体で若手を支える仕組みを設けることも有効です。評価制度や育成方針と連動させることで、Z世代の成長支援が「一部の上司の努力」にとどまらず、企業文化として根付いていきます。

Z世代育成に成功する企業が取り入れている工夫とは

Z世代の新入社員を迎え入れる企業の多くが、早期離職や育成の難しさに悩みを抱えています。しかし、中には人材育成に成功し、若い世代の定着率を高めている企業も存在します。こうした企業では、従業員それぞれの価値観やキャリア不安を丁寧に把握し、仕組みとして解決に取り組んでいるのが特徴です。

特に中小企業では「人材が育たない」「せっかく採用してもすぐに離れる」といった問題が多いですが、成功している企業の事例を分析すると、共通するアプローチが見えてきます。ここでは、経営層やリーダーが取り入れている具体的な工夫を紹介し、これからの人材育成に役立ち、現場で実施しやすいヒントを整理します。

キャリア不安を可視化する取り組み

Z世代は「この会社で成長できるのか」「自分のキャリアは正しく進んでいるのか」という不安を抱えやすい傾向があります。これを放置すると、周囲と距離を取り、早期に会社を離れる原因となりかねません。
成功している企業では、こうした不安を可視化し、解決に向けた仕組みを導入しています。

たとえば、定期的なアンケートやインタビューを実施し、新入社員がどのような悩みを持っているのかをデータとして分析。キャリアに対する漠然とした不安を言語化させることで、上司や経営層が的確な対策を打てるようにしています。
このプロセス自体が「自分の声が届いている」という実感を生み、従業員に安心感を与えるメリットがあります。

こうした仕組みは、大手企業だけでなく中小企業でも十分に取り入れ可能です。重要なのは「不安を見える化し、経営と現場が一緒に解決へ向かう」姿勢を示すことです。

フィードバックを習慣化する仕組み

フィードバックは人材育成において大事な要素ですが、形骸化すると若手に届きません。Z世代の多い職場で定着率を高めている企業は、フィードバックを習慣化する仕組みを整えています。

具体的には、週次または月次の1on1面談を行い、成果や課題だけでなく「どんなことを感じるか」「どんなサポートが必要か」といった質問を投げかけることが多いです。こうしたやり取りを通じて、従業員は「自分の成長が正しく見られている」と感じ、前向きに行動できます。

また、成功企業ではフィードバックを一方的な指導として行うのではなく、シェアや対話の時間として活用しています。リーダーが自ら経験を挙げながら伝えると、Z世代は「自分もできる」と感じやすく、ビジネスマナーや基礎スキルの習得にも自然と結びつきます。

習慣化の工夫として、専用のシステムやアプリを活用する企業も増えています。こうした取り組みは失敗や問題を早期に把握できるため、経営的にも大きなメリットがあります。

成長実感を持たせるプロセスの設計

Z世代が長く活躍するには、「自分は成長している」と実感できることが欠かせません。成功している企業は、成長プロセスを細かく設計し、それを共有・確認する仕組みを導入しています。

たとえば、研修やOJTのゴールを明確に設定し、それを達成したら上司や先輩が承認する仕組みを整えています。短いスパンで小さな成功体験を積み重ねることで、自信とモチベーションが高まります。これにより、「自分はこの会社で力を伸ばせる」という納得感が得られ、離職防止につながります。

また、経営層が前に立って人材育成を「事業の中心課題」と位置づけることで、若手は「自分たちは大事にされている」と感じやすくなります。これが定着の大きな推進力となります。

さらに、成果をチーム内でシェアする仕組みを取り入れると、従業員は互いに刺激を受け、自ら挑戦する雰囲気が生まれます。単に研修を実施するのではなく、成長を実感できる仕掛けを継続的に取り入れることが、Z世代育成成功の共通点といえるでしょう。

人材育成に成功している企業は、「キャリア不安の可視化」「フィードバックの習慣化」「成長実感のプロセス設計」という共通した工夫を取り入れています。これは規模の大きな会社だけでなく、中小企業でも導入可能な取り組みです。経営層やリーダーが前に立ち、従業員一人ひとりと向き合う姿勢を示すことが、Z世代の定着と育成に直結します。

まとめ

Z世代は、安定志向とキャリアアップ意識を併せ持ち、デジタルネイティブとして新しい働き方を自然に取り入れる世代です。彼らの特徴や背景を理解しないまま従来と同じ育成を行うと、早期離職や不信感につながるリスクが高まります。一方で、オンボーディングや研修設計、フィードバックの習慣化などを通じて信頼関係を築けば、大きな成長力を発揮してくれる存在でもあります。

本記事で紹介した工夫や考え方は、業種や規模を問わずどの企業でも取り入れることが可能です。Z世代との向き合い方に正解はひとつではなく、それぞれの会社に合った別のアプローチがあります。経営層や人事担当者が率先して人材育成に取り組み、世代の違いを超えて接していくことで、若手が安心して力を発揮できる職場環境が整っていくでしょう。

若手も管理職も、成長を実感できる研修を

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若手や管理職の育成は、どの企業にとっても大きなテーマです。「新人がなかなか定着しない」「OJTだけでは限界を感じる」など、同じようなお悩みを抱える企業も少なくありません。
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監修者情報

株式会社アクシアエージェンシー
ビジネスソリューションユニット 研修開発グループ

中井 美沙

株式会社アクシアエージェンシー新卒入社。求人広告営業として大手中小企業の採用活動に携わる。2020年人事コンサルティング会社へ出向し研修企画実施や人事評価制度運営などに従事。2022年に研修開発部立ち上げに参加。人事部と兼務しながら社内の人材育成、人事評価制度運用、人事面談、社内外の研修企画実施などに従事。国家資格キャリアコンサルタント取得。株式会社アナザーヒストリー プロコーチ養成コーチングスクール修了。

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